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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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素朴な疑問 211 粘土が焼き締まるとは1?。

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1) 陶芸で焼くとは、単に1200~1250℃の高温にすると言う事ではありません。

  短時間に高温で焼成すれば、土が焼き締まる訳でもありません。

  焼き締りは素地に与えられた熱量によって決まります。熱量=温度X時間で表せます。

  即ち、与えられた温度と時間の積ですので、時間が長ければ比較的低温でも焼き締まる事に

  なります。又、高温に成る程縮む量は増え、焼締りが強くなります。即ち作品が小さくなります。

 ① 土の縮みは、各工程で見られます。

  ) 制作直後から、素地は縮み始めます。

    制作時では素地が水分を多く含んでいます。轆轤作業では手捻りよりも多くの水を使います

    のでかなりの量の水を吸い込んでいます。(20%程度とも言われています。)制作終了と

    共に乾燥が始まり、徐々に水分が抜けていきます。それと共に作品全体が縮み始め、土の

    色も白っぽくなっていきます。ここまでの縮む量は、本焼き終了後の縮み量の約半分程です。

    即ち、全体で12%程縮む土で有れば、約6%程度縮む事になります。

  ) 十分乾燥させた素地は、素焼きではほとんど縮みません。(但し、十分乾燥させても若干

    水分を含みます。)素焼きは、一般に700~800℃程度で焼成する事が多いですが、1000℃

    近くの温度で行う事があります。この程度の温度差では、素地の縮み具合も大差ありません。

    約1000℃(厳密には980℃程度)までの焼成を、焙炊き(あぶりたき)と言います。

    主に素地に含まれる有機物を焼失させたり、有害な硫化鉄を酸化させて、無害にする目的も

    あります。

  ) 約1000℃程度から化学反応を起こし、急速に収縮し始めます。

    焼き締まるとは、素地(粘土や磁土)に含まれる珪酸成分や長石類が、熔剤であるカルシウム

    ナトリウム、カリウム、マグネシウム等によって、カオリン等の粘土質成分を密に結合させる

    事により、焼き締まる(縮む)現象が起きます。

    尚、約1000℃から目的の最高温度(焚上=たきあげ、揚火=あげびと言います)までを

    攻焚き(せめたき)、又は追焚き(おいたき)と言います。

    最高温度では、釉が熔けきって流れ、釉が平滑になった状態に成っている事です。

  ) 窯の温度を上げる事は同時に、窯の壁も暖める事になります。即ち窯全体を暖める事です。

    暖められた窯の壁からは、輻射(放射)熱が放出され、作品に熱量を与える事になります。

    それ故、単に作品だけを暖めるだけでは、温度が上昇してくれません。当然ですが、窯を

    暖めたり、棚板などの窯道具を暖める熱量は、作品を暖める熱量よりも多くなります。

 ② 焼き締り易い土と、焼き締り難い土があります。

  肌理の細かい素地は収縮率が大きくなります。粗めの素地は小さいです。鉄分を含む赤土などは

  鉄分が高温で素地を熔かす働きをしますので、白い土より融点が低く、且つ縮み量も若干多く

  なります。

 ③ 窯の冷却は、ほとんど作品の縮みには関係しません。

  高温の窯の中では作品は、熱膨張を起こしているはずで、冷却と共に熱膨張が少なくなり、

  作品が収縮する感がありますが、実際には、ほとんど影響がありません。

2) 無釉の焼き物で、水を透さない物に器(せっき)があります。器は別名「焼き締め陶」と

  言います。代表的な焼き物に備前焼(岡山県)があります。

以下次回に続きます。
  

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