Quantcast
Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 836

焼き物の着物(色彩)23 無彩色22(須恵器4)

$
0
0

4) 須恵器を作る環境。

  ? 轆轤(ろくろ)に付いて。

    須恵器制作の特徴として、轆轤の使用が挙げられます。

    埼玉県の入間郡三芳町新開遺跡から、須恵器の工房跡が発掘され、回転台(轆轤)の

    軸芯棒を埋め込んだと思われる穴(ピット)が発見されます。

   ?) 轆轤の使い方は現在と異なります。

     以前には、小型の須恵器は現在と同じ、水挽きによる方法と考えられていました。

     しかし、当時の工房跡から発見された軸芯棒の穴から、強い遠心力を発生する事は不可能な

     事が解かる様に成りました。高速で回転させ強い遠心力発生させる事が出来ないと、土を上に

     伸ばす事は出来ません。それ故、轆轤(回転台)を使ったのは事実ですが、他の方法で制作

     した事が解かります。

   ?) 轆轤を使った、巻き上げ又は輪積み方法。(巻き上げ水挽き技法)

     この方法は、轆轤(回転台)の上に円形の粘土板を載せ、その周囲に粘土紐を巻き上げ

     又は、輪積により積み上げて、轆轤の回転力により形を整える方法です。

    a) 成形時に手間は掛りますが、小さな(弱い)遠心力で同一規格の製品を短時間で作れます

    b) 須恵器の壷などの外側には、轆轤によって巻き上げの粘土痕が消されたと思われる跡が

      見られる物や、内側には不完全な処理で積み挙げた痕がある物もあります。

    c) 7世紀の須恵器では高台の付く器が生産されますが、ほとんどは、付け高台に成って

      いますので、轆轤より切り離した跡は見られません。

      8世紀に成ると盤(皿)など平たい須恵器が多く作られる様になり、8世紀中頃からは

      轆轤での「糸切」跡や「箆(へら)起こし」などの跡を処置せずそのまま残す作品が多く

      なります。その結果、渦状の跡や同心円状の「箆おこし」の跡が底に残り、轆轤を使って

      作品を作った事が解かります。

     ・ 糸切の場合、轆轤を回転させながら切る回転切と、轆轤を静止させた状態で糸切を

       行う場合では、その跡に違いが出ます。同様に「箆起こし」も回転と静止の状態では    

       その跡は異なります。

     ・ この底跡から、轆轤の回転方向や、糸を入れる際の方向、糸のからめ方等が判明する

       様に成ります。

   ?) 整形の仕方。

     轆轤の上で成形された粘土は次に整形の作業に入ります。整形には「撫(なぜ)整形」と

     「箆整形」が有ります。

    a) 「撫整形」とは、指や皮革を使い器面を綺麗に撫ぜ、平滑に仕上げるものです。

      轆轤の回転に合わせて一定方向に撫ぜる方法と、方向性の無い方法があり、前者の方が

      新しいやり方です。

    b) 「箆整形」とは、箆(へら)状の工具を使い余分な個所を削り取ったり、肉厚を薄く削り取る

      などの方法で整形する方法です。轆轤を回転させながら連続的に削る方法と、静止した

      状態で削る方法があります。回転削りは須恵器で多用されています。

   ?) 叩き(たたき)技法。

     壷や甕(かめ)などの大物は、内側に当て用具を当て、外側から叩き棒(木製、陶製)で叩き

     整形する方法です。その目的は、土を締める事で割れを少なくする事と、肉厚を薄くし重量を

     軽くする事です。 土を叩く事で、粘土中に残る空気を叩き出す事も出来、更に器面の

     平行文様や同心円状の文様は叩き棒の叩いた跡や、棒に付けられた文様の跡です。

5) 須恵器の種類。

以下次回に続きます。    


Viewing all articles
Browse latest Browse all 836

Trending Articles