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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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素朴な疑問 108 陶芸での失敗事例12?

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7) 施釉の失敗事例。前回の続きです。

 ⑥ 釉を掛けの失敗例。

   釉を掛ける際作品を破損する。生の釉は同じ様な色の物が多く間違え易い。施釉の際釉の中に

   作品を落とす。流れ易い釉を厚く掛け過ぎ、棚板まで流れる。畳付きや底の釉を剥がし忘れる

   蓋物の蓋が取れなくなる、又は蓋が合わない、その他色々な失敗があります。

  ) 一般に、釉は濃さが均一で滑らかに掛ける事を理想とする傾向にあります。

   逆に、濃度が段階的に変化するグラデーションを付ける方が、難しいかも知れません。

   a) 釉を均一の厚さに掛けるには、漬け掛けと呼ばれる方法が一般的です。筆や刷毛で塗る

    方法や流し掛け(杓子掛け)、スプレー掛けなどの方法もありますが、どうしても濃淡が

    でき、斑(まだら)になる場合が多いです。但し決してこの現象が悪い訳ではありません。

   b) 厳密には、漬け掛けでも釉の濃さが均一に成る訳ではありません。

    当然、釉の濃度が均一に攪拌されていても、中々均一に掛ける事は困難です。

    一般に釉の厚みは、釉に漬ける時間で決めます。時間を長くすれば、釉が厚く掛かる理屈

    ですが、物事はそう簡単にはいきません。一番の原因は、漬ける時間が3~5秒程度と、

    極端に短時間である為です。短い時間なら薄掛けになり、時間が長ければ厚めの釉が掛かる

    事になります。この短い時間内で調節する事は、慣れない方には難しいかも知れません。

    又、約6秒以上漬けておくと、逆に釉は薄くなります。原因は、素地が水分を十分吸い過ぎ

    それ以上に吸えない事と、吸い込んだ水分を吐き出す為に、釉の厚みが薄くなります。

    この原理を利用して、作品の一部に薄く施釉する方法があります。即ち薄く塗りたい部分を

    水に漬けたり、筆などで水分を素地に吸収させておきます。水で濡らした部分は、相対的に

    釉が薄く掛かります。

   c) 釉が作品に掛かる理由。水に溶かされた釉は、吸湿性のある素焼きの作品に水と共に

    吸収されます。素焼きの作品が良く乾燥していれば、水の吸収力も強く、厚めの釉が掛かり

    ます。又作品の肉厚が厚い程、吸水性が強く、釉の乾きも速く、塗った傍から乾き手で

    触れても安全です。

   d) 二重掛けする場合、下地の釉の乾燥が十分でないと、上の釉は厚く掛ける事が出来ません

    場合によっては、上の釉が流れる場合もあります。釉を厚く掛けるには、薄めの釉を時間を

    置いて二度、三度と掛ける事です。

   e) 先に漬けた部分を先に釉から引き上げる。上記の様に秒単位で釉の濃度が変化しますので

    釉を均一に掛けるには、同じ時間にする為に、先に漬けた部分を先に釉から引き上げる

    必要があります。その為には釉を入れる容器は作品に対して、十分大きくなければなり

    ません。当然、釉の量も多く必要になります。背の高い作品や大物作品を漬け掛けの方法で

    行うと、先入後出しの方法に成り易いです。(即ち、後から入れ部分を先に出す事)

    当然、先に入れた部分の時間が長く、後から入れた部分が短い時間になります。

  ) 釉を厚く掛ける事による問題点。

   a) 厚く掛けた釉は作品の素地と密着し難にくく、「捲れ(めくれ)」や「剥がれ」、「引け」

    の原因になります。特に濃い釉を一度に掛けた場合、顕著に現れます。薄めの釉を数度に

    分けて塗ると、比較的安全です。

    注: 「引け」とは、釉が部分的に寄り集まり、周囲が釉禿げ状態になる事です。

   b) 釉の種類にもよりますが、厚く掛けられた釉は「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる「ひび」

    が入り易いです。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 109 陶芸での失敗事例13?

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7) 施釉の失敗事例。前回の続きです。

 ⑥ 釉を掛けの失敗例。

  ) 複数の釉を使う場合の色分け方法。

    容器の内側と外側、作品の中央部のみを違う色にしたい場合など、何処で区切るかが問題

    になります。工業生産された作品では、良く見掛ける構図ですので、一見簡単な様ですが、

    単品の作品では、どの様に施釉すれば良いか、意外と厄介な事になるからです。

   a) 量産された作品では、それ専用の装置(道具類)が用意されていますので、訳無く行え

     ますが、単品ではその対応が出来ていませんので、それに代わる方法を取る必要があり

     ます。

   b) 一般的には、マスキングの方法が必要です。施釉したくない部分に釉が掛からない様に、

     蝋抜き、撥水剤、陶画のり(ラテックス)、マスキングテープ等を利用する事になります

     蝋抜きや撥水剤は、素地に直に利用すると、その部分に釉を塗る事が出来ません。

     それ故、下に施釉した上に行う事になります。陶画のり(ラテックス)、マスキング

     テープ等は素地に直接施し、施釉後に剥がす事ができ、そこに他の釉を塗る事ができます

   c) 施釉の仕方によっては、困難な場合があります。

    ・ 一番容易な方法は、筆や刷毛で塗る方法です。絵画の要領で塗りますが、欠点として

     均一で滑らかに塗る事が難しい事です。

    ・ 吹き掛けの方法もマスキングする事で、ある程度目的が達せられますが、必ずしも

      満足の行く様にはいきません。広い場所にマスキングする方法が難しい事が上げられ

      ます。特に曲面にマスキングする場合(特に内側)、紙やテープ等では十分カバーでき

      ません。勿論、ある程度目的以外の場所に、釉が掛かったとしても、ブラシで落とす事

      は可能です。

    ・ 柄杓などを使う流し掛けの方法は、ラフであれば割合容易です。流した釉がどの様に

      流れて施釉されるかは、作品のどの位置を持つかによって変化します。即ち釉は途中に

      障害物が無ければ、低い方(真下)に流れ易いです。施釉させながら刻々作品の方向を

      変えれば、釉は複雑な流れ方をします。但し、キッチリした直線を出すのは難しく、

      マスキングの方法をとる事になります。更に、注意する事は、躊躇する事なく一思いに

      釉の量を多くして流す事です。躊躇して数本の線上に流れない様にします。

      又、柄杓の出口を作品にくっつける様にすると、自分の思った処から施釉する事が

      出来ます。

    ・ スポイト掛けの方法も、柄杓掛けと同様に考えた方が良いです。但しスポイトの方が

      小回りが利きますが、一度に広い面積に施釉出来ない事が欠点です。

    ・ 内側と外側の釉を変えて塗る場合。

      一番難しいのは、口縁にの真上で掛け分ける事です。即ち真上が内側の色にするのか、

      外側の色にするのかが問題になります。いずれにしても、内側は釉を流し込んで施釉し、

      外側は、底を下にして漬け掛けします。但し、外側の釉を内側に入れてはいけません。

      それ故、口縁周辺には釉の塗り残しが出ます。この部分を筆や刷毛で塗る事も一つの

      方法ですが、筆や刷毛塗りによる斑(まだら)になる弊害も出易いです。

    ・ 上記の場合、区切る位置を口縁の外側数ミリ下にし、口縁周囲を内側の釉で塗る方法が

      あります。即ち、容器に釉を数ミリの深さに取り、そこに口縁を漬け掛けする事で、

      施釉する事が出来ます。逆に区切る位置を、口縁から内側数ミリの位置にする事も

      できます。 方法は、外側に使用した釉の中に、作品を逆さに持って数ミリの深さで

      漬け掛けする事です。

    ・ 釉薬は完全に塗り分ける事は出来ません。完全に塗り分けるには、間に隙間を設ける

      必要があるからです。一般には両方の釉が1~2mm程度は、重ねる必要があります。

      例え完全に二分して塗り分けたとしても、釉は固まる際両側に分かれる様に作用します

      ので、隙間が生じる恐れがあるからです。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 110 陶芸での失敗事例14?

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7) 施釉の失敗事例。前回の続きです。

 ⑥ 釉を掛けの失敗例。

  ) 漬け(浸し)掛けの失敗。

   一番一般的な施釉方法は、漬け掛けではないかと思われます。釉が入った容器に作品を漬ける

   事で、均一の厚みと滑らかな表面に施釉する事が出来るからです。但し、注意をしないと

   思わぬ失敗をする事もあります。

   a) 「ガバ漬け」の方法。一度に容器の内外を同時に塗る事が出来る方法です。

    但し、内外を同じ釉を使う事が前提です。この方法が向いている作品は、深さが比較的

    浅く、口径が大きいものです。茶碗類や湯呑程度の作品に向いています。

    その方法は、高台部分を持ち作品を逆さにして、釉の中に沈め、急激に上に引き上げます。

    その際、釉の水面近くで作品を上下に震動させる必要があります。

    上手に施釉出来れば、「ガバッ」と言う音がします。

   b) 「ガバ漬け」で作品の内側まで綺麗に施釉出来る理由は、急激に引き上げた際、内側が

    陰圧になり、釉が吸い込まれる為です。即ち、高台を持って釉の中に沈めると、内部の

    空気は圧縮し、内部の口縁近くに釉が入り込みます。急激に引き上げる事で、口縁の釉は

    下に取り残され、内部の空気は希薄に成ります(陰圧になる)。その為、水面近くの釉は

    内側に吸い込まれる事に成ります。

   c) 「ガバ漬け」の方法は慣れない方には、難しい作業です。

    失敗として、作品の内側の底周辺が施釉出来ない事が多いです。引き上げるタイミングと

    速さ、それに水面近くで行う震動などが、巧く出来ないと「ガバ漬け」は成功しません。

    練習方法として、コップ等を使い、お風呂の中で繰り返し練習し、「ガバッ」と言う音が

    出る様にします。

   d)「ガバ漬け」の欠点として、内側には1秒以下の時間(瞬時)で施釉する事になります。

     その為、通常の釉の濃さより若干濃くしておく事です。又、普通の濃さの釉を二度掛け

     する方法もあります。

   e) 「ガバ漬け」が出来ないうちは、杓子等で内側に釉を流し込んだ後、高台を持って逆さに

     釉に漬けます。この方法は内外を異なる釉を塗る方法でもあります。但し、引き上げる

     速さは比較的「ゆっくり」させる事です。急激に引き上げると、陰圧になり外の釉が

     内側に流れ込みます。この場合、縁の周りの一箇所のみに現れます。

   f) 底に穴の開いた植木鉢の様な作品は、鳩目(はとめ)の要領で、粘土を使い穴を塞ぎます

     穴の空いた作品を逆さに漬けると、漬けた深さまで内外が施釉します。

     一般に、植木鉢の内側の大半は施釉しない方が、植物には良いと言われていますので、

     施釉しない事が多い様です。その為、逆さに沈める前に、粘土などを使い穴を塞ぎます。

     即ち、凸状態の粘土を作り、内側又は外側から穴に差し込んだ後、反対側に出た凸部の

     先端部分を潰し、空気や水が通り抜き出来ない様にします。

   g) 施釉し終わっても、直ぐに作品を上に向けてはいけません。

     釉は素地に吸収されて乾く事になりますので、直ぐに乾燥せず10秒程度そのままの状態

     で保持した後、上に向けて下さい。さもないと、乾いていない流動性のある釉が表面を

     流れ落ち、斑(まだら)な文様になります。勿論、流れ文様にしたい場合には、この行為

     を積極的に利用する方法もあります。

    h) 釉鋏み(はさみ)等を使う方法。

     陶芸材料店では、釉鋏みなるものが市販されています。鋏みの先端で作品を掴み、釉の

     容器の中に入れて施釉する道具です。これは、掴み難い作品(碁笥底高台など)を保持

     したり、指跡を残さない為に使用します。又、これに類似した道具をご自分で作る事も

     できます。例えば、金属の網状の物と、針一本でも施釉できます。針は作品を安定させる

     様に作品の重心(中心)を押さえ、網に載せた作品を釉の中に底から全て没します。

     針で作品は押さえたままです。金網ごと引き上げ、作品を斜めにして、内側の釉を外に

     捨てます。色々工夫すれば、高いお金を出さずに、施釉する道具を作る事も可能です。

  ) 釉掛け後の失敗。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 111 陶芸での失敗事例15?

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7) 施釉の失敗事例。前回の続きです。

  ) 釉掛け後の失敗。

   a) 指跡の処理。

    抹茶々碗などでは、あえて指跡を付けておく作品もあります。これは、指跡が一つの景色と

    して認識されている為です。しかし、一般には、指跡は無い方が良いと考えられていす。

   b) 施釉する際、高台を3本の指(親指、人差し指、中指)で持って行う事が多いです。

    人差し指と中指の間隔を出来るだけ広げ、3本の指の間隔を一定にし安定した状態にします。

    (尚、高台は持ち易い形状になる様に、削り出す事が肝要です。)   

    高台の無い場合には、底の角や腰、胴を3本の指で掴みます。角皿の様な平板な作品は、

    角皿の対角線の角を、両手の人差し指で、皿の中心に押す様にして保持し、漬け掛けします。

    いずれにしても、施釉した後に指跡が残ります。尚、指跡は完全に消す事が出来なくなる

    可能性も有りますので、指跡は目立たない場所にします。

   c) 指跡を最小限に抑える方法や、施釉の仕方によっては、ほとんど付ける事無く施釉する

    事も可能です。最小限に抑えるには、施釉する直前に、上記3本の指を釉の中に浸し濡ら

    して置く事です。綺麗な手で作品を持てば、確実に釉の掛からない指跡が付きますが、

    釉で汚しておけば、指の釉が素地に吸い込み、比較的指跡を目立たなくする事ができます。

    尚、ほとんど指跡を残さない方法は、吹き(スプレー)掛けや、流し掛け、漬け掛けです。

   d) 流し掛けや漬け掛けの際、半分を施し、乾燥後に残り半分を施釉すれば、ほとんど指跡は

    残りません。但し、一部二重掛けになる欠点もあります。

   e) 指跡を消すには、施釉されていない場所に、筆や指を使い釉を塗り補修します。

    指で補修するのは、施釉直後の表面が、濡れている時が最適です。

    補修の方法は、釉の種類にもよりますが、筆で置いて行く方法や、筆を引っ張りながら塗る

    補修方法があります。志野釉の様に流れ難い釉では、引っ張り気味に塗り、流れ易い釉では

    置いて行く方法でも補修が可能です。いずれにしても、筆や指で塗る方法では釉が薄く

    成り易いですので、濃い目の釉を使うと良いでしょう。

    指跡は指の周囲が釉で厚く掛かり、盛り上げっています。それ故、修正後に盛り上がった

    部分を、針や指の爪で削り取ります。    

   f) 施釉した直後は作品の表面が濡れていますので、持っている処を除き、直接作品に触る

    事は出来ません。又、他の作品などに「ぶつける」事も出来ません。それ故、施釉の終

    わった作品は、広い場所に置く必要があります。濡れた作品に触ったりすると、作品の釉が

    剥がれ、釉が触った方(指など)に移ります。例え作品の釉が乾燥している状態でも、

    濡れた手で触ると、同じ様に手にくっついてしまいます。

   g) 畳付きの部分の釉は確実に落とす。

    棚板に直接触れる底や、畳付きに掛かった釉は、必ずブラシ等で削り取ります。

    蓋物の場合、蓋と器を一体で焼く方法と、別々に焼く方法があります。基本は一体で焼く

    事です。その為、蓋受け部とそれに接する蓋の一部には、釉は塗れません。塗らしてしまった

    場合には、釉を削り取る必要があります。更に、削り取った部分を、スポンジで水拭きすれば

    完璧です。釉の種類によっては、底から数ミリ上まで釉を落とす必要があります。

   h) 施釉した直後には問題ないものが、一晩経つと問題になる場合があります。

    多いのは、釉が素地から「めくれ」てしまう事です。釉の濃度が濃い場合や、二重掛けの時、

    釉と素地との密着具合の悪さにあります。

    後者の場合には、釉の中に「CMC](化学のり)等を添加し、釉の剥がれを防止します。

    釉の「めくれ」が発生した場合、「めくれ」部分を剥がし、補修する事もありますが、

    釉全部を剥がし取り、新たに全体を施釉する方が、速くて綺麗になります。

    尚、下絵を施した場合には、釉と共に剥がれていますので、霧吹きで霧を吹き、軽く押さえ

    て素地に密着させ、更に筆などで補修する場合もあります。

  
以下次回に続きます。

 

素朴な疑問 112 陶芸での失敗事例16?

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8) 作品移動時の失敗。

  画家が屋内で制作する際、絵を描き終えるまで、カンパスを移動する事は少ないと思われます。

  しかし、陶芸では、制作時や作品の乾燥時、素焼き時、施釉時、窯詰め時、窯出し時などで、

  作品を移動する事は度々行われます。更に、作品が出来上がっても、飾り皿の様な作品を除き、

  食器などでは、毎日の様に食器戸棚から食卓へ移動し、使用後には洗う為に台所へ移動し、

  場合によっては食洗機にも運ばれる事もあります。最後に又食器戸棚に収納されます。

  この様に、一つの器であっても、目まぐるしく移動を繰り返します。

  この移動によって、作品が変形したり、作品が欠けたり最悪、粉々に割れる事も起こります。

  これらに付いて順次お話したいと思います。

 ① 轆轤挽きでの制作時の移動の失敗。

  ) 手捻りの場合、制作時の粘土は、手に持てる程の固さがあります。一方轆轤挽きで形を

   作った作品は、水を多量に使っている為、底を糸や「シッピキ」等で切り離した後、比較的

   肉が厚い高台脇を持って、轆轤上より取り去る事になります。その際、両手の人差し指と中指を

   上に向け、「ジャンケンのチョキ」状にして、高台脇を挟み、手前に倒す様にして持ち上げます

   当然ですが、指と指の間に水分や泥が付いていない事です。

   持ち上げた作品は、水平に置かれた手板の上に載せます。水平に置かないと作品が傾きます。

   尚、手板は底の水分を吸収してくれる素材でなければなりません。プラスチックやニスや

   塗装された板では、くっ付いてしまいます。手板は複数個が載る細長い板と、一個のみを載せる

   板があります。いずれにしても、この板に載る作品は、次の乾燥の段階に移りますので、

   静かに他の場所に移動させる必要があります。その際にも、手に持った手板は水平を保つ

   様にします。

  ) 失敗し易いのは、高台脇が「ドベ」(泥)が付き、ベト付いた状態ですので、指が滑り

   易く、持ち上がらない事があります。無理に取り上げ様とすると、折角綺麗に作った作品

   (真円)が歪みます。それ故、高台脇は竹へら等で、綺麗にドベを取っておく事です。

  ) 高台脇が取り上げ難い形状の場合もあります。

   取り上げるには、指が滑らない形状でなければ成りません。高台脇が筒状で凹凸がないと指は

   引っ掛かりがない為、取り上げる事が出来ません。全体が筒状の湯飲みやコップでも状況は

   同じです。

  ) この様な場合の解決方法に、二段切の方法があります。本来の高台の高さの数センチ下を

   糸などで切り取る方法です。この数センチの高さの土は、取り上げ易い形にして置きます。

   乾燥後に下の部分を取り除ます。又、この方法では、作品が歪み難いと言う利点があります。

  ) 轆轤上から取り上げた作品が、歪んでいる場合も多いです。

   原因の一つに上記の如く、取り上げに「手こずった」場合です。更に糸で切り取った面が水平で

   ない場合や、口径に対して、底の面積比較的広い場合に起こります。

   a) 底を水平に切り取らないと、作品は斜めに傾きます。斜めに傾く事は口縁の一方に重みが

    増す事になり、乾燥不十分な状態では、作品の変形として表れます。

   b) 底の面積が、口径に対して比較的広い場合、口径の形に影響を与えます。

    理想的には、「逆ハの字」状に上開きの形にしたいです。

  ) 取り上げた直後に、口縁が歪んでも、口縁部分で修正してはいけません。

    狂いは作品の腰で直します。作品が狂うと口縁は楕円形になります。長くなった方の腰を

    少し持ち上げる様にして、真円に近付けます。一度で補修できない場合もありますが、

    何度も補修を繰り返すと、余計悪くなります。この場合、少し乾燥させ土に強度を持たせて

    から再度補修する事です。

以下次回に続きます。
 

素朴な疑問 113 陶芸での失敗事例17?

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8) 作品移動時の失敗。前回の続きです。

 粘土や磁土で作った作品は、制作直後から粘りや固さ、脆さ(もろさ)、水に対する耐性、

 更には、色々な性質が刻々と変化します。その変化に合わせて移動方法(処置)も変化させます。

 ② 作品の移動は出来るだけ、直接、間接的でも、作品を両手に持つ事が失敗しない為の秘訣です

  但し、一人で施釉する場合には、片手で持つ事も多いです。前回述べた様に、轆轤挽き直後の

  作品は直に触る事は出来ませんが、削り出すことが可能な程の乾燥であれば、直接触れる事が

  できます。その場合も、片手で作品の一部を支え、片手で底を支えるとより安全です。 

 ③ 手渡しの危険性。

   作品を移動させる際、途中で他の人に手渡しする場合があります。この時に事故が起こり易い

   です。即ち、渡す人と受け取る人の呼吸が合わないと、作品を取り落とす恐れがあります。

  a) 特に直接作品に手を触れる事なく、手板などに載せた作品の場合は、更に危険が増します。

   即ち、作品を渡す人が、相手が受け取ってくれたと感じ、手を早めに離した場合や、手板での

   手渡しの際、水平でない場合にも、作品が傾き手板上から転げ落ちる恐れがあります。

   それ故、この様な場合は、なるたけ最後まで一人で移動させる様にしたいです。

  b) 時には、作品を直接手渡ししなければ成らない場面も出てきます。この場合は、しっかり

   乾燥させた状態か、素焼き後の作品などある程度、変形する事も無く、固さがある場合です。

   その場合でも、「渡すよ」とか「手を離すよ」とか一声掛けてから手渡しすればより安全です。

 ④ 移動する際、通り道を確認し、何処に置くかを、決めてから行動を起こす事です。

  a) 雑然とした作業場(工房)では、足元に何がが置かれている場合が多く、通り道も狭い事も

   多いです。又、移動する場所の間に、扉がある場合もあります。その様な時には、予め扉を

   開いておくと、より安全です。扉に関心が移り、作品への注意が疎か(おろそか)に成り

   易いからです。更に、置く場所の確保も必要で、なるべく広い空間を確保したいです。

  b) 移動する際、何処を見ているかも重要です。素焼き後の作品の様に、有る程度機械的強度が

   ある物では、しっかり作品を掴み、作品以外を見る事も可能ですが、乾燥前や乾燥不十分の

   場合、不安定な作品等の場合には、作品と足元(通路の状態)両方に注意が必要になります。

   この様に注意が分散すると、作品を取り落とす事があります。

 ⑤  長距離を移動する際の注意。

   ご自分の窯を持たない人は焼成して貰う場合や、出張講習などで、ご自分の工房以外で制作

   した生の作品は、工房まで長い距離を移動させる必要が出てきます。大抵は自動車での移動

   ですが、振動(揺れ)で壊れない様に何らかの対策が必要です。

  a) 制作直後の状態では、振動や何かにぶつかると変形してしまいます。

   そこで、ある程度強度のある、ダンボール箱などに、新聞紙などを敷き、作品を入れます。

   新聞紙を入れる事で、ダンボールにくっつくのを防ぐ為です。更に、出来るだけ作品間は距離

   を取り、その間に、新聞紙やスポンジ、タオル、布切れなどのクッションを入れます。

   制作直後の状態では、土に粘りがありますので、欠ける事は少なく、変形し易いですが、

   移動後に修正する事が出来ます。

  b) 素焼き以前の作品の移動。土が白く成る程度に乾燥した作品は、粘りがなく脆い(もろい)

   ですので、移動の結果、作品が欠ける事も多いです。当然作品同士はぶつからない様にします。

   小さな作品では、ティッュペーパーで一個一個包み保護します。大きな作品は、クッション材で

   包むと安全です。これらはダンボールなど入れますが、中でガタガタ移動しない様にします。

   同じような形状の物が多い場合には、仕切りのある専用のダンボール箱を用意すると良いで

   しょう。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 114 陶芸での失敗事例18?

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8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑤  作品を長距離移動する際の注意。

   ご自分の窯を持たない人は、他人の窯で焼成して貰う場合や、出張講習などで、ご自分の工房

   以外で制作した生の作品は、工房まで長い距離を移動させる必要が出てきます。大抵は自動車

   での移動ですが、振動(揺れ)で作品が壊れない様に何らかの対策が必要です。

  c) 素焼きした作品を他の場所で施釉したり、下絵付けを施した後、再度窯のある場所まで

   移動する事があります。例えば、子供やお孫さんが作った皿などの作品に、子供やお孫さんが

   絵付けをする場合などです。当然、工房や作業場まで来て絵付けするのが基本ですが、何ら

   かの事情で来れない場合には、絵の具と共に持ち帰って、絵付けをする事になります。

  ・ 素焼きした作品は、生の状態より機械的強度がありますので、一個一個紙などに包めば

    ほぼ安全です。更に、重ねる事も可能ですので、かさ張りません。さほど注意する必要も

    ありませんので、比較的容易に運搬できます。

  ・ 絵付け後の作品は、特に注意が必要です。作品が壊れる事よりも、折角絵付けした絵柄が

    他の物と擦れて、模様が不鮮明になったり、絵柄の一部が剥げ落ちる場合も珍しくあり

    ません。下絵の絵の具は、単に作品の表面に載っている状態ですので、指や他の物

   (紙や布など)が触れたりすると、簡単に剥がれます。剥がれた絵の具は布などに付き、

    直ぐに他に転写してしまいますんで、始末が悪いです。当然、紙や布で作品を包む事も

    難しく、作品同士を重ねる事も出来ません。

  ・ 作品は、小さな箱などに入れるか、仕切り板のあるダンボール箱に入れて運びます。

    ダンボール箱同士は重ね合わせる事ができます。

 ⑥  水(雨)に弱い作品の場合の移動。

  生の状態の粘土は、少量の水であれば、ほとんど問題になりません。しかし、素焼直前の作品や

  施釉された作品は、事情が異なります。

  ) 素焼き前には、作品を良く乾燥させる為、天日干しする事が多いです。

   a) 晴天の時を狙い、日の良く当たる広い場所に、作品を並べて乾燥させます。午前中から

    午後3時過ぎまで、場合によっては作品の位置を変えたり、天地を逆さにしたりして、均等

    に乾く様にします。少々の風は好都合です。

   b) 雷雨に注意。晴天だからと言って、夏場では急な雷雨に見舞われる事も珍しくありません。

    素焼き前の作品は、雷雨に当たると、作品の表面から溶け始め、時間が経つにつれて水分が

    肉厚の中心部まで達すると、作品の形は崩れてしまいます。それ故、外出する事はなるべく

    控え、雲行きを見て、雷雨が来そうな時は速めに取り込む必要があります。

  ) 雨天の際の窯詰めに注意。

    作品を保管している場所と、窯との間が離れ、しかもその間に屋根が無い場合、雨天の

    窯詰めは、注意が必要です。施釉された作品に雨が当たると、当たった処の釉が薄くなった

    り、強い雨では、表面の釉が流される恐れがあります。この様な状態で焼成すると、綺麗な

    色にならず、斑(まだら)文様のある焼き上がりとなります。それ故、出来るだけ雨天での

    窯詰めは控えたいですが、どうしても窯詰めを終わらせなければ成らない状態になる事も

    あります。この様な場合、人は濡れても作品が濡れない様に、両手で抱え込んだり、布など

    で雨を避けます。 但し、布は直接作品に触れない様にします。尚、傘などを差すと、

    作品を持つ手が疎か(おろそか)になりますので、出来るだけ使わない事です。

以下次回に続きます。    
   

素朴な疑問 115 陶芸での失敗事例19?

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8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

  ) 素焼きの窯詰め時の失敗。

   a) 作品は素焼きの出来る状態にある事です。

    素焼きの出来る状態とは、作品の水分を出来るだけ乾燥させ、「カラカラに乾いた」状態に

    しておく事です。その為、一日天日干しを行う事もあります。

    又、この状態で「ひびや亀裂」の入った作品は、除去しておきます。この状態で焼成しても

    何ら良くなる事はありません。壊して水に漬ければ粘土は再生できます。

   b) 制作完了から素焼きまでの時間は、作品の肉厚や大きさ、乾燥の環境(天気など)に

    関係しますので、どの程度乾燥時間(日数)を取れば良いかは、一概に言えません。

    表面が白く乾いている様でも、肉厚の内部や、作品の内側などに水分が残っている事も

    あります。この状態で、素焼きを行うと、作品が水蒸気爆発を起こし、粉々になる恐れが

    大きいです。

   c) 制作後から素焼きまで、どうしても時間が無い場合には、以下の方法があります。

    ・ 窯詰め後、200℃程度で一定時間(出来れば一晩)保持させると、水分が蒸発すると

     言われています。但し、一晩中200℃に保持するのは大変なので、一度200℃にした状態で

     そのまま放置しておきます。但し、乾かしたい作品は、出来るだけ窯の上部に置くと、

     窯の冷えが遅くなりますので、乾燥が進みます。

    ・ 本焼き等の焼成中や、窯を冷やしている状態であれば、窯の近くに置き、放熱を利用

     する方法もあります。

    ・ 窯出し直後であれば、窯の余熱が残っていますので、その余熱を利用すれば、濡れた

     作品を乾かす事もできます。

    ・ 素焼きの温度上昇を、極端に鈍くする事です。上記の様に200℃程度まではある程度早く

     温度上昇させても問題ありませんが、それ以上は1時間当たり、約60℃以下で温度上昇

     する事です。ほとんど乾燥していない場合には、もっと少ない温度上昇の方が、より

     安全です。

    尚、爆発を起こす温度は、窯の構造にもよりますが、経験上240~300℃程度と思われます。

    但し、窯の焚き始めは、窯の中の温度は上部と下部では、極端な差があるものです。

    その為、温度計が300℃を示したからと言って、安心できません。多くの場合200℃以下の

    場所(100℃程度の差が有るのは、極普通な事です)もあるはずです。

   d) 素焼きでは温度上昇に伴い、大量の水蒸気が発生します。例え、天日干ししても事情は

    同じです。窯に設けられた蒸気抜きの穴を開けておきますが、作品同士の間にも蒸気の通り

    道を作って置くと良いでしょう。但し、余り心配する事はありません。蒸気は自然と通り

    易い場所を通って外に逃げていきます。

  e) 素焼きの窯詰めは、重ね焼きが可能な為、本焼きに比べ1.5~2倍程度の量を詰める事が

    出来ると言われています。棚板の数は本焼きよりも少なくなるはずです。しかし、窯の天井

    まで積み上げると、熱(火)の周りが悪くなりますので、天井から数cmの隙間が欲しい

    です。作品を重ねる場合、一箇所に重量が掛からない様にします。特に口縁部は肉が薄く、

    片持ち構造になりますので、破損(欠け)し易いです。又、平たい皿も数枚重ねて立て

    掛けて窯詰めする事も可能ですが、出来れば、密着させずに隙間を設けると、均一に焼け

    ます。

  f) 素焼きでは素焼き前と後では作品の大きさは、ほとんど変化はありません。更に、変形する

     事もありません。但し、素地の色は確実に変化し、吸水性が増し、水に溶ける事も無く

     なります。

  ) 素焼きの窯出しの失敗。

以下次回に続きます。

 

素朴な疑問 116 陶芸での失敗事例20?

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8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

   素焼きの温度は一般に700~800℃程度とされている為、厳密に何度で焼成しなければ成らない

   と言う事はありません。又、必ずしも、「寝らし」と呼ばれる一定温度をキープする必要も

   有りませんので、焼成自体は焼成の初期で温度上昇に気を使えば、比較的面倒ではありません

   尚、素焼きは施釉の際、破損する事を少なくする為に行うのが、主目的ですので、施釉しない

   焼き締め陶器などでは、素焼きを行わないのが一般的です。但し、還元焼成ですと、作品間に

   煤(すす)などが溜まりますので、出来るだけ酸化焼成にした方が、作品も綺麗に焼けます。

 ) 素焼きの窯出しの失敗。

    所定の温度になったら火(又は電気)を止めると、急速に冷却が始まります。窯の大きさや

    窯の壁の厚さに応じて、冷却スピードは違いますが、明らかに本焼きより早く低い温度まで

    冷えます。但し、外気温に成るまで待つと、かなりの時間が必要ですので、扉を開けて

    外気を入れ、冷却を早めます。

   a) 窯の温度が、100℃を切った状態で、扉などを徐々に開け、冷却を早め80℃程度になったら

     両手に軍手などの手袋を嵌めて窯出しする事ができます。素手で触ると火傷(やけど)を

     しますので注意が必要です。素手で行う場合には、約50℃以下になってから行います。

     小さな窯では、作業は一人で行いますが、大きな窯では、複数人で行います。

     窯から出す人が中心になり、その他の人は作品を所定の位置に運搬する役目です。

   b) 早めに窯に冷たい外気を入れると、冷め割れの原因になります。

    当然、窯の上部は熱くとも、下部は早く冷めますので、全体が冷めていない場合は、下部

    から窯出しをするのも、一つの方法です。

   c) 作品は慎重に取り出す事。特に重ねて詰められている作品は、一個一個上から又は横から

    取り出します。重なった状態で取り出さない事です。取り出す際、立て掛けてある作品が

    倒れない様に気を使います。倒れれば確実に破損します。又、取り出す際には、なるべく

    両手を添えて肉厚の部分を持ちます。意外と多い事故が、棚板を取り除く時に起こる支柱の

    落下です。棚板が複数枚使う場合には、支柱が倒れ落ちて、下の作品に当たる事です。

   ・ 特にアルミナコーチング(保護材)を棚板に塗布した直後の焼成では、棚板と支柱が焼き

    付き棚板と一緒に取れ、棚板移動の途中で落下し、作品に当たる事も多いです。

   d) 素焼きの終わった作品は、表面が「ザラツク」感じになります。それ故、手が滑って

    取り落とす事は少ないですが、一個一個慎重に取り出します。取り出した作品の傷やひびの

    有無を確認します。場合によっては今まで見逃していた傷などが現れる事もあります。

    取り出した作品は、広い場所で種類ごとや制作者ごとに分けておくと、後々便利です。

    見るべき場所は、容器の内(又は外)側の底の部と、口縁の周囲、それに把手などがあれば、

    その取り付け部分です。傷の程度によって、次の本焼きに進むべきかの判断が必要になり

    ます。

   e) 窯出しされた作品も重ねて保管する事が出来ます。

    窯出しを終えた作品の量は、窯の大きさにもよりますが、結構大量になる場合があります。

    そのような場合、保管する場所の関係で、施釉する迄の間重ねて保存します。

    重ねる際、2~3枚(個)であれば直に重ね合わせる事も可能ですが、それ以上の場合には

    作品と作品の間に紙を入れると、作品同士が直に触れませんので、新たに傷が付く事が

    防げます。

  ) 本焼きの窯詰め時の失敗。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 117 陶芸での失敗事例21?

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8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

  ) 本焼きの窯詰め時の失敗。

    本焼きは素焼きより、500℃程度高い温度で焼成し、しかも、なるべく温度差が出ない様に

    しますので、窯詰めの方法にも配慮が必要です。

   a) 窯には、その窯特有の癖(くせ)があります。

    例えば、窯の中で、望みの色に仕上がるのは、この場所と限定される場合があります。

    但し、その場所は釉の違いによって、色々の場所に点在する事になります。

    それ故、施釉した作品は、施釉の種類によって、その場所に詰める必要があります。

    窯によっては、比較的温度の高い場所や、低い場所、酸化焼成になる場所や、還元が強く

    出る場所もあります。窯の大きさが大きい程この傾向は強く出ます。

    最適な場所は狭い場合が多く、同じ釉の作品が多い場合には、一部を次の窯焚きに回すか、

    次点(次に良い)の場所に窯詰めする事になります。

   b) 釉の色は似たり寄ったりですので、間違わない事です。

    特に、施釉が終わった状態では、中々判別が出来ません。概ね(おおむね)白色系、茶褐色

    緑色系、青色系、黄色系、黒色系に別れますが、例えば、白い色の釉には、透明釉、乳白釉

    藁白釉、白萩釉、志野釉、白マット釉など多彩で、各々焼成する場所が異なる場合があり

    ます。当然、施釉してから窯詰めまでの間には時間的な「ズレ」がありますので、何らかの

    方法で作品に釉の名前(又は記号)を付けておく必要があります。

   c) 作品間と、作品と窯との間には、適度の隙間が必要です。更に、作品を詰め過ぎない様に

    する事が大切です。逆に「スカスカ」に隙間が空いた時にも、温度が上昇しない場合が

    多いですので、何らかの対策を考える必要があります。

   ・ 詰め過ぎの場合には、火や熱風の通り道を塞ぐ結果、均等に熱が伝わらずに、焼き不足の

     作品になり易いです。火(炎)を使う場合、倒炎式の窯が多く、一度天井まで上った炎は、

     天井で反射し、窯の下部に向かいます。天井部分に隙間がないと、炎は確実に反射して

     くれません。又、作品間に手の指一本程度の隙間があると、炎はその間を通り、下部へ

     流れていきます。この現象を「炎が伸びる」と言い理想的な焼成になります。

   ・ 作品の量が少ない場合には、作品を暖める熱が作品に消耗されずに、どんどん外に逃げて

     しまいます。更に、作品の総蓄熱量も少ないですので、窯の中には熱が留まらず、無駄に

     外に廃熱する事になります。この場合、ダミーの物を置く事です。即ち、棚板を支える

     支柱などを隙間に立てるのも一つの方法です。

    ・ 指一本の隙間を設ける利点は、作品の位置を変える時都合が良い為でもあります。

      即ち、一度窯詰めした作品を、何らかの理由で、他の場所に移動する場合も珍しくあり

      ません。その際、作品を隣の作品にぶつからない様に取り出すには、指の入るスペース

      が必要になります。

    ・ 余談ですが、窯の壁が薄い場合にも、熱は壁を通して外部に逃げ、温度が中々上昇

     してくれません。   

   d) 窯の構造によって窯詰めの方法が異なります。

    窯には、上扉型、横扉型、及びシャトル型などがあります。即ち、上扉型は上部より作品を

    詰めますので、当然一番下から順番に詰め、積み上げる事になります。窯の容量にも寄り

    ますが、上から覗き込む様に作業する事に成ります。

    横扉型は棚板が前後に敷かれた場合は、奥から詰める事になります。窯の底の高は、かなり

    低い位置になります。それ故、体を丸める様にして作業する事になります。これらの窯では

    必ず死角が出来、作品の位置関係も推定で判断する事になります。更に、窯詰めする姿勢も

    上体を下にしたり、頭を低くしたりする、背をかがめる必要があり、窮屈になります。

    当然、作品を並べる際にも不安定に成り易いです。作品はしっかり保持する必要があります

    これに反し、シャトル型は窯の外に詰める台を引き出し、前後左右の四方と上部から窯詰め

    する事がで、死角がありません。一番作業が楽で全体が見渡せるのは、シャトル型です。

    シャトル式では、台を移動させますので、不安定な状態で窯詰めする事は出来ません。

    又、窯に入れる時に、作品が窯の壁にぶつからない様にするのは、当然の事です。

  )本焼き後の窯出しの失敗。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 118 陶芸での失敗事例22?

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8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

  ) 本焼き後の窯出しの失敗。

   a) 本焼きの窯出し方法は、素焼きの窯出しとほとんど同じです。

    但し、作品の釉が熔けていますので、若干の違いがあります。

    窯の扉を開ける瞬間は、何回本焼きしても、緊張するものです。今回は順調に温度も上がり

    窯焚きは上手くいったと思っていても、いざ窯の扉を開けるまでは、結果が判明しません。

    扉を開け一目見れば、焼きの良し悪しが判断できます。例え、一部のみしか見えなくても、

    まだ見えない部分の状態が把握されるからです。

   b) 最初に目に入るのは、釉の色です。勿論、作品の形が崩れるている場合や割れている事も

    有りますが、稀な事です。一般には、釉の良し悪しで判断します。それ故、窯出しは昼間の

    日中に行う事が大切です。夜間や電灯の光等では、釉の本来の色が見え難いからです。

    勿論、太陽の明るい光の下で色を見る事もありますが、一般には、日陰の状態か曇天の時が

    良いと言われています。尚、色の確認は、窯出し後に時間を掛けて見ることで、別の発見が

    ある物です。

   c) 釉の流れ具合の確認をします。

    流れ易い釉の場合、適度に流れ望みの作品に成る事もありますが、作品の表面を流れ落ち

    棚板まで到達している作品もあります。この様な時は、棚板から上手に剥がさないと、

    作品が壊れます。特に、「鏨(たがね)」等で無理やり剥がすと、棚板に接している作品の

    一部が割れて「ギザギザ」に成ります。

    棚板には、「アルミナコーチング」と呼ばれる物質が塗られています。これは棚板を高熱

    から守る役目もありますが、主に釉が棚板まで流れた際に、このコーチング材を境に棚板

    から剥がせる為でもあります。即ち、流れ落ちた棚板の裏側から、木槌などで叩き衝撃を

    与えると、コーチング材が作品側に付き、棚板から剥がす事ができます。

    但し、この付着物を取り除くには、「グラインダーやダイヤモンドヤスリ」で削り取る必要

    があります。この作業は意外と大変です。尚「ダイヤモンドヤスリ」は100円ショップで、

    色々な形状の物が市販されています。

    作品を剥がした棚板は、コーチング材が剥がれ、地肌が露出しますので、コーチング材を

    塗り、補修します。補修の際棚板の表面が凸凹しますので、紙やすり等で、平坦にしておか

    ないと、次回の焼成で、作品が水平に置けません。

   d) 望みの釉の色が出なかった原因や、釉が流れ落ちた原因など、施釉の方法や窯焚きその他

    での思い当たる処がある場合には、次回以降の参考にする為、それをノートに記し、

    その対策を考える様にします。但し、意外と原因は判明しない場合が多いです。

   e) 本焼きした作品の底は、「ザラツイテ」いるのが普通です。勿論、素地の肌理の細かさに

    よってその差があります。この状態ではテーブル等を傷付ける恐れがありますので、

    必ず砥石(といし)を掛けたり、作品同士の底を合わせる「共擦り」し、滑らかにします。

    但し、「紙やすり」では綺麗に出来ません。

   f) 水を長い時間入れる花瓶類では、水漏れの予防をする必要があります。

    但し、水が「ポタポタ」漏れ出す場合には、水漏れ防止剤でも止まりません。

    この場合には、再度施釉して本屋焼きする事です。

    水漏れは単に底のみとは限りません。即ち、器の胴体部分から、汗の様に吹き出る場合も

    有ります。但し、胴体からの水漏れが少量の場合、空気中に蒸発してしまう為、気が付か

    ない場合もあります。又、食器類の畳み付き部分は、施釉しませんので、陶器では若干水を

    吸い込みます。又、高台内に施釉しない抹茶々碗等もあります。その為、乾燥不十分で

    作品の底を中心に「黴(かび)」が生える事もあります。これらの作品には、市販されて

    いる水漏れ防止剤を流し込んだり、筆で塗ったりします。必ず、食器用を使う事です。

    水漏れ防止剤を塗った場合、乾燥させる為、一昼夜は必要で、その間水洗いや水で濡ら

    したりすると、水漏れ防止剤の効力が失われます。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 119 釉薬の性質を変えるには1?

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常日頃使っている釉でも、特に不都合ではないが、少し変えたいと思う事も多いと思われます。

釉の知識のある方ならば、ご自分で調合し、思う通りの釉に改造できますが、市販の釉を使っている

場合には、どの様にすれば良いかと、思い患う事もあるかも知れません。又、手持ちの釉を使い

何かを添加して、別の釉を作り出したいと思っている方もでいるでしょう。

今回のテーマは、その様な方に対し、少しでもお役に立てる事柄を述べたいと思います。

1) 釉の熔け過ぎ、熔け不足対策。

 ① 市販の釉には1230℃で焼成する物以外に、1180℃、1200℃、1250℃、1280℃、1300℃等と

  表示されているのも多いです。これ以外の温度表示されている釉もあります。

  但し、陶芸の窯は容量の大小の他、燃料の差、酸化還元の差、焼成時間、作品の量と窯詰め仕方

  など、多くの要素によって、常に一定に焼成できる訳でもありませんが、より安定した釉に

  したいと思うのは人情です。

 ② 釉の性質にもよりますが、多くの場合熔けの過不足は、焼成温度の調整で対応できます。

  但し、同じ窯で複数の釉を使う場合には、窯の最高温度は変える訳には行きません。そこで、

  熔け過ぎを防ぎ、熔け不足を解消する為に、別の何かを添加する事で解決する必要があります。

 ③ 熔け過ぎる釉と、熔け不足の釉の表情。

  ) 熔け過ぎる釉で問題に成るのは、釉が作品の表面を流れ落ち、棚板まで達する事が最大の

    問題になります。途中で止まる分には、模様として見れば良い訳です。

  ) 釉には元々流れ易く調合された釉があり、市販されています。又、流れる事で本来の色調

    が現れるものもあります。例えば、結晶釉と呼ばれる釉は、釉が流れて移動する事により、

    結晶が成長すると言われています。又、織部釉も若干流れる事で綺麗な色に発色すると

    言われています。

  ) 熔け不足の表情としては、光沢釉であるにもかかわらず、熔け不足でマット調になる

    場合があります。更に、表面が滑らかに成らず、「ザラツク」感じとなります。尚、この様

    なマット状の釉では、器に汚れが付き易いとも言われています。又、水漏れの原因になる
   
    場合もあります。

 ④  熔け過ぎの原因。(ここでは、焼成温度に付いては除外して考えます。)

  ) 釉の基本的構造は、主に釉を熔かす成分(アルカリ類)、固める成分(珪酸類)、粘る

   成分(アルミナ類)の三要素から成っています。それ故、熔かす成分を少なくするか、固める

   成分を増やせば良い訳です。但し、一度調合された物から、何かを減らす方法は困難ですので

    固める成分か、粘る成分を増やす事で対応します。

  ) 固める成分の珪酸はSiO2で表わし、「シリカ」と呼ばれる物質で、珪石や珪砂、石英、

   水晶などに多く含まれています。一般的には、珪石や珪砂を使います。これらは、陶芸材料店

   で、容易に入手できます。又、珪酸は熔融温度を上げる働きもあります。

   但し、加え過ぎると、艶消し釉になります。

  ) 粘る成分のアルミナ分(Al2O3)を添加する事により、流れ過ぎるのを抑える事ができ

   ます。アルミナ成分は、長石やカオリン、粘土、黄土等から採るのが一般的ですが、添加する

   際には、水酸化アルミニュウムを使用します。これは、素地と釉の密着を良くする働きがある

   からです。長石やカオリンの添加では、釉の濁りも少なく、艶消しになる事は少ない利点が

   あります。

  ) 釉の調整以外でも、流れ過ぎを防止する事が可能です。

   即ち、施釉を厚く掛けると、釉は流れ易くなります。それ故、若干薄く掛ける事です。

   又、窯の中で比較的温度の低い場所があれば、そこに窯詰めする事で、釉の流れ落ちるのが

   防止できます。

 ⑤ 熔け不足の原因。

以下次回に続きます。
 

素朴な疑問 120 釉薬の性質を変えるには2?

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1) 釉の熔け過ぎ、熔け不足対策。(前回の続きです。)

 ⑤ 熔け不足の原因。

  ) 釉の主成分は長石ですが、熔融温度が高い為、単体では熔けません。そこで、アルカリ類

   を添加して、融点を下げるのが一般的な方法です。勿論、珪酸を減らす事でも対応できますが

   既存の釉から取り除く事は困難ですので、アルカリ類を増やす事に成ります。

  ) アルカリ類の種類。

   a) 石灰系の釉では、アルカリ成分に石灰を用いています。灰系の釉ならば、各種の灰が

    使われています。それ故、石灰や、松灰、藁(わら)灰、樫(かし)灰、栗皮灰、土灰等を

    添加すれば、釉は熔け易くなります。尚、灰類には天然の物と、合成の物があります。

    釉を熔かす作用は似たり寄ったりです。

   b) アルカリ類と同じ働きをする物質に、上記の他に酸化亜鉛(亜鉛華)や炭酸バリウム、

    マグネサイト等があります。特に、亜鉛華は良く使われる熔剤です。透明釉などの融点を

    下げるのに最適です。炭酸バリウムは、熔かす力が強く、釉に粘りを与え貫入を少なくする

    作用があります。添加量が増すと細かい気泡が発生し、乳濁釉になります。

    マグネサイトは、結晶作用を伴いますので、熔融剤としてよりマット系の釉に添加(5%程度)

    する事が多い物質です。

2) 釉の貫入(小さなひび)を減らす方法と、「ひび釉」を作る方法。

  「ひび」があると、汚れ易くなると言う欠点もありますが、その「ひび」に適度の茶渋が付き、

  趣きある様子に成りますので、必ずしも悪い訳ではありませんが、一般には「ひび」が無い方が

  良いと言われています。

 ① 釉の「ひび」は素地と釉との収縮率の違いによって起こります。即ち、釉の方が素地より

   大きく縮む為に起こる現象です。(釉>素地の関係です)当然その差が大きい程ひびが大きく

   沢山出来る事に成ります。「ひび」は釉に起こり、素地まで「ひび」が入る訳ではありません

 ② 「貫入(ひび)」を少なくする方法。

  ) 珪酸分の多い釉は、粘りが少ない為、小さな「ひび」が入り易いです。

   釉に粘りを与える為に、アルミナ成分である「カオリン」や「蛙目粘土」、「天草陶石」

   などを添加します。添加量は10%程度です。又「炭酸バリウム」を少量(5%程度)加える事で

   「ひび」を少なくする事が出来ます。

  ) 錫(すず)を少量加える事で、「貫入(ひび)」を少なくできます。

  ) 釉を厚く掛けると「ひび」が入り易くなります。それ故、やや薄く掛けるる事で、減らす

    事も出来ます。

 ③ 「ひび」が入った釉を「亀裂釉」といいます。

   薩摩焼や相馬焼き、粟田焼き等は「ひび」が入っているのが、魅力で「ひび」は景色の一つに

   成っています。「亀裂釉」は、「鮫肌釉」や「柚子(ゆづ)肌釉」、などとも呼ばれ、

   「ひび」の程度によって、氷裂紋(ひょうれつもん)、魚子紋(ぎょしもん)、牛毛紋

   (ぎゅうもうもん)たどと命名され、珍重されています。

  ) アルカリ成分を多くする。(アルミナ成分を少なくする)

   アルカリ成分として、炭酸バリウム、マグネサイト、各種の灰(天然、合成)などがあります

  ) 釉を厚く掛ける。青磁は釉を厚く掛ける為、二度三度と塗り重ねますと、「貫入」が

    入り易くなります。

  ) 窯の扉を早めに開け、冷却を早める。

    本焼きの窯出しの際、作品が外気に晒されると「チンチン」と言う音がします。

    これは、釉に「ひび」が入った時に起こります。即ち釉が縮み亀裂が入った音です。

    この音は窯出し後、数日間続く場合があります。窯の扉を早めに開けると、「チンチン」と

    なる音は数が増えます。

  ) 亀裂では有りませんが同じような現象に「梅皮(かいらぎ)」や「虫食い」の現象が

    あります。これは、釉が極端に縮んだ結果です。「梅皮」は抹茶々碗の高台脇や高台内に

    出来る小さな釉の塊群です。「虫食い」は作品の端に出来る釉飛の事です。

    (尚、釉飛に関しては、後日お話しする予定です。)

以下次回に続きます。

素朴な疑問 121 釉薬の性質を変えるには3?

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3) 釉の光沢が強過ぎるのを減らしたい場合と、光沢を増したい場合の処理。

  現在使っている釉が、光沢があり過ぎて、釉の色彩に落ち着きの無いと感じたり、光沢を少なく

  したいと思う時があります。逆にマット(艶消し)感が強過ぎ、若干光沢を付けたいと思う時も

  有るかも知れません。その様な場合どのような物質を添加したら良いかが判れば、実行したく

  なります。

 ① 光沢に関係する物質。

  一般に良い釉と言われるのは、「光沢があり良く熔けている状態」になった物と言う人もいます

  それ故、市販されている釉も、光沢のある物が多いです。しかし、光沢の無い(又は少ない)

  釉を好む人もいます。

 ) Al2O3-SiO3図から判る事。

   注:Al2O3-SiO3図(アルミナーシリカ相関図)とは:アルミナ成分とシリカ成分の割り合い

    で、釉の性質がどの様に変化するかを表したグラフです。

  アルミナ成分が多くなるほど、マット調が強まり、シリカ成分が増すにつれて、光沢のある釉

  になります。更にシリカ成分が増すと、乳濁釉になります。乳濁釉も光沢があれば光沢釉に

  分類されます。それ故、シリカ成分を多く添加すると、光沢のある釉になります。

  逆にアルミナ成分を増すと、マット系に近づきます。

 ) 光沢があり過ぎた場合、光沢を押さえる方法。

  a) アルミナ成分である、「カオリン」や「天草陶石」を加えると、失透感が出て光沢が押さえ

    られます。

  b) 「マグネサイト」や「酸化チタン」等、結晶を起こす物質を少量加える事で光沢を押さえる

    事が出来ます。

 ) マット感が強すぎる場合、少なくする方法。

   マット調になる原因は、熔け不足、結晶が発達し過ぎた為、アルミナ成分が多い等が挙げられ

   ます。

  a) アルカリ類を増やして、釉の熔け不足を解消する。

   一般に、灰類を使用します。特に合成土灰を添加します。又、亜鉛華を添加し熔け不足を解消

   させます。

  b) 結晶釉の場合、窯焚きの仕方によって、結晶の促進を抑える事ができます。

   結晶釉では、窯の冷却時にある温度範囲で徐冷する事が多いです。それ故その徐冷の温度

   範囲を短時間で通過させると、結晶の成長が抑えられます。

  c) 酸化リチユムは0.5%程度を添加するだけで、釉の光沢を増し、機械的強度も増します。

4) 「釉飛び」、「釉切れ」と「めくれ」

   いずれも、焼成で素地表面より釉が弾いたり、めくれて剥がれたりする現象です。

  ① 原因としては、釉が収縮し過ぎて素地から浮き上がれ事です。

   その他に、埃(ほこり)や何らかの粉末(釉、紙やすりクズ等)が作品に付着したまま

   施釉した為です。又、素地と釉の間に空気などが入り込み、焼成で釉が浮き上がる事も

   あります。更に、釉を二重掛けした際、二度目の釉の水分を一度目の釉が吸い込み、膨張し、

   釉を剥がす事もあります。

  ② 「釉飛び」は貫入と反対現象と思われています。即ち釉よりも素地の方が収縮率が大きい時

   に起こります。焼成温度を幾分下げる事でも解決できます。

  ③ 対策。

   釉に問題がある場合と、施釉方法に問題がある物に分かれます。

   ここでは、釉に問題がある(釉を改良すれば防げる)場合を取り上げます。

  ) 釉の接着力を強くする。

   一般に、釉にCMC(化学のり)を使い、接着力を与え剥がれ難くします。

  ) 釉の縮みを少なくする。

   微粉末の珪酸を加える。又は酸化錫(すず)を少し加える事で改善されます。

5) 釉の煮えの改良方法。

以下次回に続きます。

 

素朴な疑問 122 釉薬の性質を変えるには4?

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5) 釉の煮えの改良方法。

  釉の煮えとは、焼成後に釉が作品上を薄く流れ去って、光沢の無い斑点状態のピンホールが

  発生した状態を言います。原因は、部分的に温度が高い場合や、炎が一部に集中して釉が熔け

  過ぎた場合に起こります。

  この場合、窯の中の温度を均一にする為に、窯詰めの方法を変えたり、場合によっては窯の

  改良で対処する方法もありますが、ここでは、釉で対処する方法をお話します。

 ①  熔け過ぎを是正する方法。

  釉のアルカリ成分の量を一定にして、アルミナと珪酸(シリカ)の比率を変えずに、量を増や

  せば熔ける温度を上げる事が出来ます。即ち、現在の釉にアルミナ成分とシリカ成分を増やせば

  良い訳です。

 ② 釉の粘度を高くする。

  酸化亜鉛(亜鉛華)や石灰、マグネサイトは、釉の粘度を上げる働きがあります。

6) ブク(気泡)が発生する時の対処方法。

 ブクとは、釉の表面に泡状の気泡が凸状に現れる現象です。又、ピンホールが集まったものと見る

 事もできます。

 ① ブクの原因。

  ) 施釉する際、素地との間に空気(気泡)が入り込む為や、釉の中に気泡が存在する場合

    に起こります。特に小さな穴が付けられている作品では注意が必要です。

  ) 釉と釉の間にガスが閉じ込められる場合。

    二種類以上の釉を重ねて施釉する際、熔融温度に差があれば、先に熔けた釉からガスが

    発生し、これが、上の釉で閉じ込められる場合があります。

  ) 釉に含まれる灰類の「灰汁(あく)」が存在する為。

    注 灰汁とは: 植物を焼いた灰を水に浸して得られる上澄み液の事です。

     ナトリウム、カリウム、マグネシウム等を含み、アルカリ性を示します。

     古来、洗剤、漂白剤、染色などに使用されていますが、焼き物では灰汁は、悪さをする

     物質です。

    天然の灰類は、釉に使う為に灰汁抜きを行います。アルカリの含有量が少量の場合には、

    水に溶けますが、多目の場合は、灰汁抜きが不十分の為、完全に水に溶けず、残る事に

    成ります。

 ② 解決方法。

  ) 釉の濃度が濃い場合や、粘性が強い場合、釉の中に細かい気泡が残る事があります。

    細かい気泡であっても、高温では膨張しブクを発生させますので、濃度や粘性の調整を行い

    気泡が残らない様にします。又、小さな穴の中まで、釉が入り込む必要があります。

  ) 熔融温度に差がある場合、温度差を無くす様に調合する。(釉を熔け易くする方法などは

    本ブログで既に述べていますので参考にして下さい)

    又は、先に、熔け難い釉を塗ってから、熔け易い釉をその上に、掛ける事です。

  ) 灰汁抜きをしっかり行う。

    市販の灰はしっかり灰汁抜きが行われていますが、ご自分で作った天然の灰は、不十分の

    場合がありますので、調合する前に水に付けながら、何度もに水を交換し灰汁を抜く事です

7) 釉のあばた(痘痕)現象の対処方法。

  「ブク」が大きく単発的なのに対し、「あばた」は釉の表面に、「にきび痕」の様な細かい

   凸凹が出来る状態の事です。

 ① 原因は、以下の事が考えられます。

  ) 釉に硫黄成分が含まれている場合、

  ) 不純な顔料や酸化物が含まれている場合、

  ) 過度に温度上昇させた場合などで起こります。

 ② 対策方法。

  ) 釉に硫黄分がある場合、痘痕の他に気泡が存在し、その外側は乳濁状態になります。

    この釉で還元焼成すると、痘痕の状態は酷くなりますので、酸化焼成する事です。

  ) 不純な金属酸化物には、クロム、ニッケル、アンチモン等があり、これらが多く含まれた

    釉では、大きな気泡が発生し易いです。マンガン、コバルト、ニッケルを含む釉では、

    高温状態で、酸素のやり取りが頻繁に行われる結果、気泡(ガス)が出来易くなります。

  ) 高温の窯の中では、ある種の酸化物は他の酸化物に置き換わります、その結果その際、

    素地との関係が変化し、素地からガスが放出し痘痕や気泡(ブク)が発生する場合があり

    ます。

以下次回に続きます。


素朴な疑問 123 釉薬の性質を変えるには5?

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8) 市販の石灰系透明釉を他の釉に変化させる。

 石灰系透明釉は、安価でごく一般的に使用されている釉です。ご自分でも調合できますし、市販の

 物が、各メーカーから出ています。

 透明釉には一号釉(1280℃=SK-9)と三号釉(1230=SK-7)が著名な種類で、光沢のある

 綺麗な透明に熔けます。貫入が無い様に調合され、下絵付けをした作品に使われる事が多いです。

 ① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。

   市販の釉も年々価格が上昇しています。出来れば一番安価である石灰系の透明釉を利用して、

   自分で調合して、別の釉に仕立て上げればより経済的であり、ご自分の釉を作り出す事も

   できます。 尚、以下の配合は外割りです。即ち透明釉100gに他の材料を指定の割合

   (グラム=g)を添加する事です。

  ) 灰釉風の透明釉をつくる。

    灰釉(かいゆ、はいゆ)は、民芸風の雰囲気を作りだす効果があります。石灰系の透明釉

    より、雅味(おもむき)のある色になります。即ち、灰には主に石灰分やシリカ分が含まれ

    ます。その他に、各種のアルカリ(マグネシウム、ナトリウム、カリウム)や、微量な鉄分

    マンガン、リン酸、炭酸カルシウムなどの不純物が含まれています。その為、淡い色の

    付いた透明釉になります。酸化焼成の場合は黄色味を帯、還元焼成では青味が出易いです。

    当然、灰の種類(天然又は合成の松灰、栗皮灰、樫灰、くぬぎ灰、土灰など)によって

    若干の色の差が出ます。 石灰透明釉:各種灰=100:40

    但し、藁(わら)灰の場合には、透明に成らず乳濁し易いです。

  ) 白マット釉を作る。

    マグネサイトを添加し、結晶作用によってマット化します。

    石灰透明釉:マグネサイト=100:15

  ) カオリンマット釉を作る。

    粘土質のカオリンを添加し、熔け不足気味の白いマット釉を作ります。

    石灰透明釉:カオリン=100:15

  ) 乳濁釉を作る。

    マグネサイトを添加し、結晶作用によって乳濁化します。

    マグネサイトは5%程度を添加すると、乳濁が始まります。但し添加量が増えると、マット

    化してしまいます。  石灰透明釉:マグネサイト=100:5

  ) 黒釉、黒マット、飴釉、そば釉、黒そば釉薬を作る。

    主に鉄分である弁柄(酸化第二鉄)を添加します。釉の種類によってその割合や、他の材料

    を添加します。

   a) 黒釉(黒天目): 酸化焼成では、光沢のある真っ黒い釉に焼き上がります。

     還元焼成では、茶色風になり易いです。釉を薄く掛けた場合も、茶色風になります。

     尚、黒さを出すには、黒色顔料を添加したり、マンガンを入れると良いと言われています

     石灰透明釉:弁柄=100:10

      注: 黒色顔料は、鉄分、マンガン、コバルト等の着色金属から出来た物で、化学的に

       安定した材料ですので、釉に混ぜると黒が増します。

   b) 黒マット釉:黒釉に20%のナグネサイトを添加し、マット釉に変化させます。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:10:20

   c) 飴(アメ)釉: 素地の色により、明るい茶色から黒っぽい茶色になります。

     石灰透明釉:弁柄=100:7

   d) そば釉: 飴釉の中に金色の結晶である、斑点が表れる釉です。厚く掛けると斑点の結晶

     は大きくなります。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:7:5

   e) 黒そば釉: 黒釉に金色の結晶である、斑点が表れる釉です。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:10:5

以下次回に続きます。
   

素朴な疑問 124 釉薬の性質を変えるには6?

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8) 市販の石灰系透明釉を他の釉に変化させる。

 ① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)

  ) 黄瀬戸、織部、瑠璃(るり)、青磁釉を作る。

   a) 黄瀬戸釉は、透明感のある黄色に仕上がる釉です。鬼板などで下絵付けした上に施釉

     する事で、絵付け文様も表現できます。

     ・ 石灰透明三号:弁柄 = 100:2 (重量比、以下同じです。)

     ・ 石灰透明三号:黄土 = 100:10

     ・ 石灰透明三号:弁柄:松灰 = 100:2:40

     ・ 石灰透明三号:黄土:松灰 = 100:10:40

    黄土は鉄分を含む土ですが、鉄分の含有量は弁柄のおよそ1/5程度です。

    黄土を添加する事で、ややマット感のある釉肌になります。

    松灰(天然、合成)を添加する事で、釉調に深みが出、柔らかい感じになります。

    尚、天然の灰の方が、成分に「バラ付き」が多いですので、釉調の変化が大きいです。

   b) 織部釉を作る。

    織部釉は人気のある釉です。特に酸化銅を添加した釉で酸化焼成した作品は、青織部と呼ば

    れています。但し、銅は還元焼成すると桃色(ピンク)、赤紫、赤色に変化します。

    これらを織部釉と区別して辰砂釉と呼びます。

    ・ 石灰透明三号:酸化銅 = 100:5~7

    ・ 石灰透明三号:酸化銅:松灰 = 100:5~7:40

    酸化銅のみを添加した釉は、透明感のある釉になりますので、緑色の発色が弱くなる傾向が

    あります。更に松灰を添加した釉は、釉に細かい気泡や貫入が入る為、光が複雑に屈折し

    趣ある釉に成ります。更に、熔け易くなり若干流れ易くもなりますので、部分的に釉溜りが

    起き、色の濃淡も現れます。

    注: 酸化銅は、窯の焼成方法によって、色々な色に発色します。例えば、緑、青、黒、

     紫、赤紫、ピンク、赤色などです。逆に、焼成の度に変化する為、扱い難い顔料とも

     言えます。

   c) 瑠璃釉を作る。濃い青色や紺色の釉になります。

    ・ 石灰透明三号:酸化コバルト = 100:0.3~1

    ・ 石灰透明三号:酸化コバルト:弁柄(又は黄土) = 100:0.3~1:2

    酸化コバルトのみの添加では、鮮やかな青色で趣の無い色になると言う人もいます。

    弁柄などの鉄分を添加すると、釉は緑色掛かった釉になり、落ち着いた色になります。

    酸化コバルトは強烈な色ですので、少量添加するだけで十分です。

    現在の酸化コバルトは、合成品です。更に高価でもありますので、古代呉須などで代用でき

    ます。但し、呉須には不純物も含まれていますので、若干多目に添加します。

    瑠璃釉を厚く掛けると濃い紺色になります。尚、酸化と還元焼成による発色の差はほとんど

    ありません。

   d) 青磁釉を作る。鉄分を少量加え、還元焼成する事で青緑色に発色します。

    ・ 石灰透明三号:弁柄 = 100:0.5~2

    ・ 石灰透明三号:弁柄:炭酸バリウム = 100:0.5~2:20

    炭酸バリウムを添加すると、釉中に細かい気泡が出、深みのあり趣のある釉になります。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 125 釉薬の性質を変えるには7?

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① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)

) 結晶釉を作る。

   結晶釉とは、釉の内部又は表面に目に見える程の大きさの結晶が現れた釉です。

   小さ過ぎて目に見えなくとも、顕微鏡などで確認できる程度の結晶の場合、艶消し(マット)

   釉になります。大きな結晶を作る一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、鉄、ルチールなどが

   あります。酸化物の種類によって発色も変化します。

   a) 亜鉛結晶釉: 酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)と呼ばれて市販されています。

    石灰釉に含まれる珪酸と結合して、珪酸亜鉛と呼ばれる大きい扇状の結晶となります。

    結晶釉の中で最大の結晶を作るとも言われています。

     石灰三号透明釉:酸化亜鉛(亜鉛華) = 100:20~25

    他の結晶釉と比べ、亜鉛華の添加量は格段に多くします。

    尚、酸化ニッケルを1%(1g)添加すると、緑色の釉になります。

   ・ 一般に、作品の何処に結晶が出るか、を予め予想する事はできません。出た所勝負に

    なります。

   ・ 亜鉛華を10%程度添加した場合は、結晶釉には成りませんが、融点を下げる働きがあり

    ます。釉の熔ける温度を下げる一般的な方法です。

   b) チタン結晶釉: 酸化チタンは安定した強力な結晶剤です。

    白濁した(または少しマット化した)パール状に輝く細かい結晶釉です。

     石灰三号透明釉:酸化チタン = 100:10

   c) 鉄結晶釉(鉄赤釉): 茶色地に赤色の結晶が出る釉です。

     石灰三号透明釉:酸化鉄:マグネサイト :骨灰 = 100:15:7:12

     酸化鉄は弁柄を使う事が多いです。

   d) ルチール結晶釉: ルチール結晶釉は朱金地釉と呼ばれる、朱赤の地に金色の結晶が

    生ずる釉です。酸化ルチールは、「金紅石(きんこうせき)」と呼ばれ、鉄分を含む

    ルチール鉱物です。酸化チタンと同様な結晶を作りますが、鉄分が含まれる為、酸化焼成

    では乳濁したクリーム色に、還元焼成では青味掛かった乳濁釉になります。

     石灰三号透明釉:酸化ルチール = 100:10

   e) 茶金石結晶釉:茶褐色の地に金色の砂鉄の様な細かな結晶がキラキラと輝く結晶釉です。

     石灰三号:酸化鉄:酸化チタン:マグネサイト:亜鉛華  =100:10:11:13

     酸化鉄を黒浜(砂鉄)に置き換えると、更に変化に富んだ結晶が得られます。

   尚、結晶を成長させる為には、徐冷をすると良いと言われています。徐冷の方法は結晶釉に

   よって若干の違いがありますが、おおよそ焼成温度より100~200℃程度低い温度で

   数時間保持すると良いとの事です。

   但し、上記調合例は、窯の焚き方など色々な条件で、結晶の出具合も変化しますので、

   一つの参考として読んで下さい。

   (必ずしも、結晶が出来る事を保障するものではありません。)

以下次回に続きます。

素朴な疑問 126 辰砂釉とは?

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1) 辰砂(しんしゃ)とは、本来天然に存在する「朱」の硫化水銀(HgS)の事ですが、辰砂釉

 は硫化水銀を利用した釉と言う訳ではありません。基礎釉に酸化銅を添加し、更に還元焼成

 する事で朱紅色に発色する釉を言います。その発色の違いによって、牛血紅(ぎゅうけつこう)

 火焔紅(かえんこう)、桃花片(とうかへん)と呼ばれています。

  注:・ 牛血紅は辰砂の中で代表的な色で、牛の生血の様に派手で力強い赤色(ルビー色)に

     成っています。1700年頃に景徳鎮で作られたと言われています。我が国では宇野仁松氏

     (1864~19337年)が作った釉が著名です。尚、赤い色の調子によって、鶏血紅(けいけつ

     こう)や猪肝紅(ちょかんこう)と呼ぶ場合もあります。

   ・ 火焔紅は燃盛る炎の様に、真紅の上に藍紫色の煙がたなびいている様子に成っています。

     藍紫色の他に、白紫色の場合もあり青味を帯ます。この釉には、酸化チタン(ルチル)

     や硫酸バリウム、酸化錫(すず)などが添加され、これらの微細な結晶が釉に浮いている

     為に、光が分散、反射され紫や青味を帯びると考えられています。

   ・ 桃花片は海棠紅(かいどうこう)とも呼ばれ、穏やかな薄い紅色に発色する物です。

     酸化銅が0.3~0.5%程度と極めて少量です。但し、焼成方法が極めて難しく作るのは

     非常に困難との事で、作品の数も少ないそうです。

 2) 釉の配合は、基本的には、織部釉と同じです。違いは、辰砂は還元焼成で、織部釉は酸化

   焼成で緑色になります。

  ① 銅を含む釉は、酸化焼成で緑系に発色します。これは、酸化第二銅(CuO)の色です。

    還元焼成では、酸化第一銅(Cu2O)となり、美しい赤色に発色します。

  ② 銅を含む釉には、生釉とフリット釉がありますが、辰砂釉は生釉を用いた釉をいいます。

    フリット釉の場合の朱紅色は、一般に銅赤釉と呼んでいます。

  ③ 辰砂釉の赤色が映えるには、素地が白い方が効果てきです。

    一般には、素地の色を問題にしませんが、素地の色も大切です。

  ④ 酸化銅の含有量と色調。

    最も良い色を出すには、銅が釉の0.5~0.5%程度の量が必要です。但し次に述べるように

    銅は高温で揮発しますので、2%程度の銅を添加します。銅の割合が増えるに従い、色が

    濁ってきます。10%を超えると、黒色になります。

  ④ 辰砂釉の掛け方。

   銅を含む釉やその化合物は、高温で容易に揮発し消失する性質があります。

   そこで、若干異なる釉を二種類用意し、二重に掛けて揮発を抑えると共に、積極的に還元焼成

   を行うのが良いとされています。

   ) 素地に近い層には、酸化銅と高温で還元作用を起こす酸化錫を1%程度添加した釉を

     使います。

   ) 上の層には、酸化錫1%を含み、酸化銅を含まない釉を掛けます。

   ) 勿論焼成は還元焼成で行います。そうする事で綺麗な赤が出ると言われています。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 127 長石と灰で釉を作る1

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前回までは、市販の石灰系透明釉三号に他の材料を添加して、別の釉を作る方法を述べてきましたが

今回からは、長石と各種の灰や他の原料の組み合わせで、別の釉を作る方法に付いて述べます。

長石はガラスの素となる原料ですが、融点が高い為、そのままでは熔けず釉に成りません。

熔け易くする為に熔媒として、灰を使う場合があます。灰を用いた釉は灰釉(かいゆ、又はいゆ)と

呼ばれています。主に民藝調の作品に使われる事が多く、灰釉を好んで使う陶芸作家も多いです。

当然、長石の種類も多く、産地によってその性質も異なり、釉の調子も違いますので、ここでは

比較的容易に入手可能な福島長石を使う事にします。同様に灰の種類も多く、その性質も異なります

ので、ここでは比較的安価である「合成土灰」や「合成藁灰」と、やや高価ですが入手し易い

「天然松灰」や「天然栗皮灰」等との組み合わせに付いてお話します。

更に釉と素地の相性を良くする為に「カオリン」を添加します。「カオリン」は入手が容易な

「朝鮮カオリン」を使います。

 ・ 注: 合成灰は天然灰に含まれる成分を、人工的な薬品(原料)に置き換えた物で、天然物に

   多い、産地、季節、部位(幹、根っ子、枝など)によるバラツキの差をなくし、品質を安定的

   な物にしたものです。逆に、雑味に乏しく(不純物が少ない)味気ないと思う方もいます。

  ・ 注: 以下に調合例を記載しますが、割合は乾燥時(粉末状態)の重量比です。

1) 福島長石に合成土灰を添加した釉。

  福島長石は長石の中でも代表的な物で「正長石(カリ長石」です。シリカ(SiO2)が主成分

  で、単味ではかなり高温でしか熔けません(1533℃)。高温で熔けても透明感はありません。

  更に熔けたとしても縮れや貫入が入ります。

 ① 灰系透明釉。貫入も少なく、ほぼ透明な状態に仕上がります。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン = 65:25:10

 ② 長石釉。 志野釉が代表的な釉です。透明感のあるやや白濁した釉です。

   白濁の原因は、長石特有の大小の貫入がある為で、光の乱反射で白く見えます。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン = 80:10:10

 ③ 白マット釉。 マグネサイトの結晶作用により白いマット釉になります。天草陶石は失透感が

  増す働きをします。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン:天草陶石 = 60:15:15:10

 ④ 黒マット釉: 上記白マット釉に10%の弁柄を添加する。

 ⑤ 緑マット釉: 上記白マット釉に7%の酸化銅を添加する。

 ⑥ 藁(わら)白釉 : 藁灰に多量に含まれる珪酸分が釉中に白い粒子として残る為、白濁し

  ます。 藁灰は釉に流動性をもたらし、流れて筋を付ける場合もあります。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:合成藁灰 = 30:30:40

 ⑦ 織部釉: 福島長石:合成土灰:酸化銅 = 70:30:7

 ⑧ 瑠璃釉: 福島長石:合成土灰:酸化コバルト = 70:30:0.3

以下次回に続きます。

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