7) 施釉の失敗事例。前回の続きです。
⑥ 釉を掛けの失敗例。
釉を掛ける際作品を破損する。生の釉は同じ様な色の物が多く間違え易い。施釉の際釉の中に
作品を落とす。流れ易い釉を厚く掛け過ぎ、棚板まで流れる。畳付きや底の釉を剥がし忘れる
蓋物の蓋が取れなくなる、又は蓋が合わない、その他色々な失敗があります。
) 一般に、釉は濃さが均一で滑らかに掛ける事を理想とする傾向にあります。
逆に、濃度が段階的に変化するグラデーションを付ける方が、難しいかも知れません。
a) 釉を均一の厚さに掛けるには、漬け掛けと呼ばれる方法が一般的です。筆や刷毛で塗る
方法や流し掛け(杓子掛け)、スプレー掛けなどの方法もありますが、どうしても濃淡が
でき、斑(まだら)になる場合が多いです。但し決してこの現象が悪い訳ではありません。
b) 厳密には、漬け掛けでも釉の濃さが均一に成る訳ではありません。
当然、釉の濃度が均一に攪拌されていても、中々均一に掛ける事は困難です。
一般に釉の厚みは、釉に漬ける時間で決めます。時間を長くすれば、釉が厚く掛かる理屈
ですが、物事はそう簡単にはいきません。一番の原因は、漬ける時間が3~5秒程度と、
極端に短時間である為です。短い時間なら薄掛けになり、時間が長ければ厚めの釉が掛かる
事になります。この短い時間内で調節する事は、慣れない方には難しいかも知れません。
又、約6秒以上漬けておくと、逆に釉は薄くなります。原因は、素地が水分を十分吸い過ぎ
それ以上に吸えない事と、吸い込んだ水分を吐き出す為に、釉の厚みが薄くなります。
この原理を利用して、作品の一部に薄く施釉する方法があります。即ち薄く塗りたい部分を
水に漬けたり、筆などで水分を素地に吸収させておきます。水で濡らした部分は、相対的に
釉が薄く掛かります。
c) 釉が作品に掛かる理由。水に溶かされた釉は、吸湿性のある素焼きの作品に水と共に
吸収されます。素焼きの作品が良く乾燥していれば、水の吸収力も強く、厚めの釉が掛かり
ます。又作品の肉厚が厚い程、吸水性が強く、釉の乾きも速く、塗った傍から乾き手で
触れても安全です。
d) 二重掛けする場合、下地の釉の乾燥が十分でないと、上の釉は厚く掛ける事が出来ません
場合によっては、上の釉が流れる場合もあります。釉を厚く掛けるには、薄めの釉を時間を
置いて二度、三度と掛ける事です。
e) 先に漬けた部分を先に釉から引き上げる。上記の様に秒単位で釉の濃度が変化しますので
釉を均一に掛けるには、同じ時間にする為に、先に漬けた部分を先に釉から引き上げる
必要があります。その為には釉を入れる容器は作品に対して、十分大きくなければなり
ません。当然、釉の量も多く必要になります。背の高い作品や大物作品を漬け掛けの方法で
行うと、先入後出しの方法に成り易いです。(即ち、後から入れ部分を先に出す事)
当然、先に入れた部分の時間が長く、後から入れた部分が短い時間になります。
) 釉を厚く掛ける事による問題点。
a) 厚く掛けた釉は作品の素地と密着し難にくく、「捲れ(めくれ)」や「剥がれ」、「引け」
の原因になります。特に濃い釉を一度に掛けた場合、顕著に現れます。薄めの釉を数度に
分けて塗ると、比較的安全です。
注: 「引け」とは、釉が部分的に寄り集まり、周囲が釉禿げ状態になる事です。
b) 釉の種類にもよりますが、厚く掛けられた釉は「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる「ひび」
が入り易いです。
以下次回に続きます。
⑥ 釉を掛けの失敗例。
釉を掛ける際作品を破損する。生の釉は同じ様な色の物が多く間違え易い。施釉の際釉の中に
作品を落とす。流れ易い釉を厚く掛け過ぎ、棚板まで流れる。畳付きや底の釉を剥がし忘れる
蓋物の蓋が取れなくなる、又は蓋が合わない、その他色々な失敗があります。
) 一般に、釉は濃さが均一で滑らかに掛ける事を理想とする傾向にあります。
逆に、濃度が段階的に変化するグラデーションを付ける方が、難しいかも知れません。
a) 釉を均一の厚さに掛けるには、漬け掛けと呼ばれる方法が一般的です。筆や刷毛で塗る
方法や流し掛け(杓子掛け)、スプレー掛けなどの方法もありますが、どうしても濃淡が
でき、斑(まだら)になる場合が多いです。但し決してこの現象が悪い訳ではありません。
b) 厳密には、漬け掛けでも釉の濃さが均一に成る訳ではありません。
当然、釉の濃度が均一に攪拌されていても、中々均一に掛ける事は困難です。
一般に釉の厚みは、釉に漬ける時間で決めます。時間を長くすれば、釉が厚く掛かる理屈
ですが、物事はそう簡単にはいきません。一番の原因は、漬ける時間が3~5秒程度と、
極端に短時間である為です。短い時間なら薄掛けになり、時間が長ければ厚めの釉が掛かる
事になります。この短い時間内で調節する事は、慣れない方には難しいかも知れません。
又、約6秒以上漬けておくと、逆に釉は薄くなります。原因は、素地が水分を十分吸い過ぎ
それ以上に吸えない事と、吸い込んだ水分を吐き出す為に、釉の厚みが薄くなります。
この原理を利用して、作品の一部に薄く施釉する方法があります。即ち薄く塗りたい部分を
水に漬けたり、筆などで水分を素地に吸収させておきます。水で濡らした部分は、相対的に
釉が薄く掛かります。
c) 釉が作品に掛かる理由。水に溶かされた釉は、吸湿性のある素焼きの作品に水と共に
吸収されます。素焼きの作品が良く乾燥していれば、水の吸収力も強く、厚めの釉が掛かり
ます。又作品の肉厚が厚い程、吸水性が強く、釉の乾きも速く、塗った傍から乾き手で
触れても安全です。
d) 二重掛けする場合、下地の釉の乾燥が十分でないと、上の釉は厚く掛ける事が出来ません
場合によっては、上の釉が流れる場合もあります。釉を厚く掛けるには、薄めの釉を時間を
置いて二度、三度と掛ける事です。
e) 先に漬けた部分を先に釉から引き上げる。上記の様に秒単位で釉の濃度が変化しますので
釉を均一に掛けるには、同じ時間にする為に、先に漬けた部分を先に釉から引き上げる
必要があります。その為には釉を入れる容器は作品に対して、十分大きくなければなり
ません。当然、釉の量も多く必要になります。背の高い作品や大物作品を漬け掛けの方法で
行うと、先入後出しの方法に成り易いです。(即ち、後から入れ部分を先に出す事)
当然、先に入れた部分の時間が長く、後から入れた部分が短い時間になります。
) 釉を厚く掛ける事による問題点。
a) 厚く掛けた釉は作品の素地と密着し難にくく、「捲れ(めくれ)」や「剥がれ」、「引け」
の原因になります。特に濃い釉を一度に掛けた場合、顕著に現れます。薄めの釉を数度に
分けて塗ると、比較的安全です。
注: 「引け」とは、釉が部分的に寄り集まり、周囲が釉禿げ状態になる事です。
b) 釉の種類にもよりますが、厚く掛けられた釉は「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる「ひび」
が入り易いです。
以下次回に続きます。