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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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素朴な疑問 84 窯を開けるまで解からない?10

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3) 焼成方法や焼成温度、焼成雰囲気に関する事項。

 ⑩ 窯出し後の処置。

   作品を窯から出せば、作品が完成と言う訳ではありません。所定の処置が必要です。

  ) 作品の状態を確認する。

   a) 割れやひび、作品同士のくっ付きがないかを確認します。

    イ) 特に窯入れ前には、無傷であったものが、割れやひびの入った状態で焼き上がる事も

     珍しく有りません。多くは素焼き時に小さなひびや亀裂が入っている場合で、余りに

     小さな傷の為、見落としていたものが、焼成で拡大し現れた物です。焼成すると小さな

     傷でも拡大し、釉を掛けても傷口を塞ぐ事は出来ません。

    ロ) 蓋物の場合、蓋をして焼く事が多いです。蓋が外れる事を確認します。蓋の合わせ

     目に水酸化アルミナ等を塗り、熔着を防ぎますが、釉が隙間に流れ込み、取れなくなる

     事があります。その際は、蓋の周囲を軽く叩き振動を与え、根気良く作業する必要が

     あります。 蓋と器の間に隙間が出来れば、その隙間に金箆などを差込、こじ開けます。

     但し、注意しないと、合わせ目が破損する事もあります。

   b) 絵を描いた作品では、釉が熔け切っていない場合には、絵が不鮮明に成ります。

    マット系の釉でも、焼成温度が高くなると、光沢が出る場合があります。

    釉は本来の色に発色するとは限りません。即ち窯変と呼ばれる現象で、めったに出ない色に

    なる場合もあります。尚、窯変はその原因を究明すれば、意図的に作る事が出来るとも

    言われています。それ故窯のどの位置に窯詰めし、どの様な雰囲気や温度、温度上昇などの

    データーを取っておく必要があります。

   c) 再焼成する作品。

    釉が熔け切ていない場合、再焼成する事で、釉を熔かす事が出来ます。

    イ) 又、ひび割れや底割れなどがある場合、そこにシャモット(焼粉)等を充填し、

     釉を掛ける事で、傷を目立たない程度に小さくできます。一度高温で焼成していれば、

     同じ程度の高温で再焼成しても、傷口が開く事はありません。

    ロ) 釉の発色が悪い場合や、酸化焼成にすべき処が還元が掛かってしまった場合にも、

     再焼成する事で、より良い色にする事も出来ます。 但し、再焼成すれば必ず、良くなる

     保障はありません。

    ハ) 再焼成は、作品の上に新たな釉を掛ける場合と、そのまま行う方法があります。

     前者は、釉の色が薄い場合や、発色が予想と反した場合などで、後者は熔け不足の場合

     です。

  ) 畳付きの処理。

   a) 畳付き(テーブル等に接する底の部分)を砥石(といし)で磨く。

    砥石で磨く前に、棚板に流れ落ち作品に「こびり付いた」アルミナコーチングは取り除いて

    おきます。尚、砥石は必ずしも、水で塗らしす必要はありませんが、水で塗らす方が、

    効率良く磨けます。

   イ) 多くの作品は棚板の上に載せて焼成する事が多いです。その際、水酸化アルミナの様な

    熔け難い薬品を筆などで塗り、棚板との熔着を防ぎます。焼成すると、塗った部分は

    白くなります。素地が白い場合には、目立ちませんが、黒色など色が付いた素地では、

    目立ちますので、なるべく取り除きます。但し、強固に着いている事が多く容易に取れない

    かもしれません。

   ロ) 畳付きを砥石で磨く主な理由は、表面の「ザラツキ」を無くす為です。

    即ち、テーブル等を傷付けない為の処置で、砥石を掛けた後、指で触り引っ掛かりの無い

    事を確認します。

   b) 高台内側や畳付き、器の内側に水漏れ防止剤を塗る。

    イ)この行為は必ずしも行う必要はありませんが、食器などでは、高台内や畳付き部分に

     黴(かび)が付く事も多いですので、その予防となります。陶器ではどうしても、僅か

     ですが吸水性がありますので、密閉された高台内には、黴が発生し易いです。

     良く乾燥させれば黴を押さえる事が可能です。尚、食器専用の水漏れ防止剤を使う事です

    ロ) 尚、水漏れ防止剤を皿の表面などに塗ると、水を弾きますので、汚れに強いのですが

     使用前に器を水に漬けた時に、水を吸いませんので、和食器としての、瑞々(みずみず)

     しさが出ません。趣を欠きますので、余りお勧めできません。

    ハ) 花瓶など、常に水を貯めて置く器では、内側から外側へ、又は底面に水が滲み出る

     事があります。土の種類(粗め、細め)や、土の焼き締まり具合に差があったり、焼きが

     甘い(温度が低い)場合、更にはひび(貫入)がある場合などに起こる現象です。

     一々水を入れて放置し水漏れを検証しても良いのですが、水漏れの有無に関係なく、

     器の内側に、防止剤を流し込み、数分後に外に流し出します。ほぼ一昼夜かけて乾燥させ

     てから、使います。尚、徳利など短時間、酒などを蓄える器では、この処置は不要です。

     むしろ、酒の成分が徳利内に浸み込み、酒が美味くなる場合もあるそうです。


以下次回に続きます。

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