外国で作られた作品が、我が国の窯場で作られた物として、流通している物があります。
その様な例として、以下の焼き物があります。
1) 南蛮焼締陶が、古備前の名前で流通する。
? 中国南部やタイ等の東南アジア各地を「南蛮」と呼び、焼き物を「南蛮焼」と呼ぶ事があり
ます。この地方では、各時代を通して、無釉の焼締陶が焼かれています。
わが国に於いて、特に室町末から桃山時代、江戸初期に掛けて「南蛮物」として、水指、
花生、香合などの茶道具類が輸入され、珍重されてきました。
注: 「南蛮」と「安南」は必ずしも厳格に区別できませんが、以下の様に成っています。
・ 「南蛮」は中国の南に位置する国々、即ち、琉球(沖縄)、台湾、タイ、カンボジア等
の東南アジア諸国の事です。「南蛮焼」はこれらの国で作られた、粗陶のみを指す事が
一般的です。
・ 「南蛮土」は陶芸材料店で入手できますが、肌理が比較的細かい黒色の粘土です。
焼き上がりも黒色になります。但し、ここで述べている「南蛮の土」と同じ物では
ありません。
・ 「安南(あんなん)」は、一般にベトナムを指します。13世紀頃から中国の影響を受け
白磁や青磁が作られ、その後鉄絵、染付け、赤絵と発展してゆきます。
? この地方の土が、備前の土に似て肌理が細かく、火襷(ひだすき)様に発色した壷などが
あり、更に備前の器に似た物も現れます。これらの作品がわが国にもたらされた場合、備前の
壷として、誤認(又は偽って)されて流通する事があります。
尚、「備前焼」と言えば偽者になりますが、「南蛮備前」と呼べば偽者とは言えません。
? 逆に、「南蛮」の人気に預かり、備前で「南蛮風」の写しの作品を作った事もある様です。
東南アジアで、わが国の唐津や、伊万里焼、「くらわんか」の染付け等が見つかる事が、
稀にあるそうです。これらは、伊万里港から輸出された一部と思われています。
? 南蛮焼締陶の筒形陶器が、丹波焼の花生として流通する。
又、経筒と誤認される事もあります。 丹波焼の特徴は無釉の焼締陶器で、文様を付けたり、
耳を付けると言う装飾方法がありません。それ故、国内の他の窯との区別は、比較的容易
ですが、南蛮焼締陶と似る事になります。
2) 李朝初期の雑器である茶碗は、室町時代の古瀬戸の碗に成っている場合があります。
両方とも、同じ様な土である為と、灰釉が似通っている事、更には古色が付いていると、一層
どの産地の物か判定し難いです。但し、見慣れた人(鑑定家など)であれば、その作品の形
(様式)から判断可能との事です。
3) 宋胡録(すんころく)の白化粧碗が、李朝粉引茶碗として流通する。
宋胡録は、タイで作られた陶器です。わが国では、李朝の白化粧土を使った、三島手や粉引、
刷毛目、掻落しの作品などは、人気があります。その為、比較的安価な宋胡録が、より高価な
李朝の作品として流通する事に成ります。
4) 中国磁洲窯の鉄砲絵が、鶏竜山(けいりゅうざん)絵刷毛目碗として流通する。
中国の河北省にある宋代の磁洲窯では、掻落しと絵高麗の作品が良く知られています。
鶏竜山窯は、朝鮮の忠清南道公州にあり、李朝初期の代表的な窯です。
三島、彫三島、刷毛目、 鉄絵刷毛目、天目、白磁などを焼いていますが、特に絵刷毛目は
文様が変化に富んでいるのが特徴で、人気の作品が多いです。
・ 李朝初期の鶏竜山と磁洲窯との茶碗の違いは、器形の違いによって判別できるそうです。
即ち、鶏竜山の碗は、独特の鼈(すっぽん)口の天目形をしています。
口元が一度狭まり、口縁で広がる鼈口の有無で見分けると良いそうです。
以下次回に続きます。
その様な例として、以下の焼き物があります。
1) 南蛮焼締陶が、古備前の名前で流通する。
? 中国南部やタイ等の東南アジア各地を「南蛮」と呼び、焼き物を「南蛮焼」と呼ぶ事があり
ます。この地方では、各時代を通して、無釉の焼締陶が焼かれています。
わが国に於いて、特に室町末から桃山時代、江戸初期に掛けて「南蛮物」として、水指、
花生、香合などの茶道具類が輸入され、珍重されてきました。
注: 「南蛮」と「安南」は必ずしも厳格に区別できませんが、以下の様に成っています。
・ 「南蛮」は中国の南に位置する国々、即ち、琉球(沖縄)、台湾、タイ、カンボジア等
の東南アジア諸国の事です。「南蛮焼」はこれらの国で作られた、粗陶のみを指す事が
一般的です。
・ 「南蛮土」は陶芸材料店で入手できますが、肌理が比較的細かい黒色の粘土です。
焼き上がりも黒色になります。但し、ここで述べている「南蛮の土」と同じ物では
ありません。
・ 「安南(あんなん)」は、一般にベトナムを指します。13世紀頃から中国の影響を受け
白磁や青磁が作られ、その後鉄絵、染付け、赤絵と発展してゆきます。
? この地方の土が、備前の土に似て肌理が細かく、火襷(ひだすき)様に発色した壷などが
あり、更に備前の器に似た物も現れます。これらの作品がわが国にもたらされた場合、備前の
壷として、誤認(又は偽って)されて流通する事があります。
尚、「備前焼」と言えば偽者になりますが、「南蛮備前」と呼べば偽者とは言えません。
? 逆に、「南蛮」の人気に預かり、備前で「南蛮風」の写しの作品を作った事もある様です。
東南アジアで、わが国の唐津や、伊万里焼、「くらわんか」の染付け等が見つかる事が、
稀にあるそうです。これらは、伊万里港から輸出された一部と思われています。
? 南蛮焼締陶の筒形陶器が、丹波焼の花生として流通する。
又、経筒と誤認される事もあります。 丹波焼の特徴は無釉の焼締陶器で、文様を付けたり、
耳を付けると言う装飾方法がありません。それ故、国内の他の窯との区別は、比較的容易
ですが、南蛮焼締陶と似る事になります。
2) 李朝初期の雑器である茶碗は、室町時代の古瀬戸の碗に成っている場合があります。
両方とも、同じ様な土である為と、灰釉が似通っている事、更には古色が付いていると、一層
どの産地の物か判定し難いです。但し、見慣れた人(鑑定家など)であれば、その作品の形
(様式)から判断可能との事です。
3) 宋胡録(すんころく)の白化粧碗が、李朝粉引茶碗として流通する。
宋胡録は、タイで作られた陶器です。わが国では、李朝の白化粧土を使った、三島手や粉引、
刷毛目、掻落しの作品などは、人気があります。その為、比較的安価な宋胡録が、より高価な
李朝の作品として流通する事に成ります。
4) 中国磁洲窯の鉄砲絵が、鶏竜山(けいりゅうざん)絵刷毛目碗として流通する。
中国の河北省にある宋代の磁洲窯では、掻落しと絵高麗の作品が良く知られています。
鶏竜山窯は、朝鮮の忠清南道公州にあり、李朝初期の代表的な窯です。
三島、彫三島、刷毛目、 鉄絵刷毛目、天目、白磁などを焼いていますが、特に絵刷毛目は
文様が変化に富んでいるのが特徴で、人気の作品が多いです。
・ 李朝初期の鶏竜山と磁洲窯との茶碗の違いは、器形の違いによって判別できるそうです。
即ち、鶏竜山の碗は、独特の鼈(すっぽん)口の天目形をしています。
口元が一度狭まり、口縁で広がる鼈口の有無で見分けると良いそうです。
以下次回に続きます。