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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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質問9 楽焼とガス窯について

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坂下様より、以下の質問を頂戴しました。

楽焼ですが私は小型ガス窯一般用しか持ってませんが、その窯で楽焼をやる方法を教えて下さい。

800度になったらどういうことをすればいいでしょうか。


明窓窯より

 楽焼は800℃程度の低い温度で焼成する焼き物です。

 楽焼の方法には、主に二つの方法があります。

 A) 800℃程度に昇温した窯に、作品を入れ釉が熔けた段階で、鉄の火箸で挟み出す方法です

   急熱急冷を行う事で、鮮やかな黒色に発色します。これを「引き出し黒」と言います。

   尚、当ブログでは主にこの方法に付いて述べています。

 B) 一般の本焼き(1200〜1250℃)と同様な方法で、800℃程度で行う方法です。

   即ち、高温の窯の中に作品を出し入れしない方法です。これを「置き冷まし」と言います。

   歴史的にはこの方が、古いやり方です。

 ◎ では本題に入ります。

   一般に、楽焼は楽焼専用の窯を使います。この窯は胴の横方向、又は天井部に作品を出し入れ

   する小窓(蓋)が付いていますので、加熱状態で作品の出し入れが可能です。

   今回は小型ガス窯一般用での楽焼をご希望です。

1) 焼きたい作品の種類と、焼く数に応じて考える必要があります。

  「黒楽茶碗」を焼きたい場合や、短時間で連続して多数の作品を焼成したい場合には、

  A)の方法を採ります。「黒楽茶碗」以外の作品(例えば人形などの置物)であれば、

  B)の方法が危険も無く無難な方法です。 

2) A)の方法では、高温(800℃以上)の窯の扉を開ける必要があります。

 ? 当然、作品は楽焼用の釉で施釉された状態で、表面が乾燥している必要があります。

   手早く作品の出し入れをする為にも、作品の準備や窯の周囲の整理整頓が大切です。

 ? 扉を開ける際、ガスが点火した状態ですと危険ですので、なるべく火は止めた状態にしたい

   です。炎が直接身に迫ると危険です。

 ? 扉を開けると、開いた状態(隙間)と開いている時間によって違いますが、確実に窯の温度は

   下がりますので、850〜900℃程度まで上げておいた方が良いでしょう。

   窯によっては、1〜2分程度で、直ぐに100℃下がる事も稀ではありません。

   作品は、手早く取り出し易い状態で窯に並べます。横扉では手前側に置きます。

   作品の一つ以上は、色味穴から釉の熔け具合が見られる場所が最適です。

 ? 扉を閉じて再点火し、温度を上げ作品の表面がテカル状態に成れば、釉が熔けていますので

   扉を開けて引き出す事が可能です。加熱時間は10〜20分程度です。

   この場合も火は止めておく方が安全です。

   釉が熔け過ぎると光沢(テカリ)が強く出、熔け不足ではザラツク感じになりますので、

   加熱時間を調整します。尚、熔け不足の場合、再度窯に入れて焼く事が出来ます。

 ? 火が止まっていても、扉を開けると熱風が出てきますので、手袋が必要ですし場合により

   眼鏡などを用意した方が安全です。くれぐれも火傷(やけど)をしない様に注意する事です。

   更に、前もって作品を火箸で掴む練習をしとおくと、後々役にたちます。

3) B)の補足説明。

  楽焼は急冷する事で、黒い色が鮮明に成ります。そこでB)の方法で少しでも早く冷やす方法を

  述べます。

  ? 窯は下段から冷え始めます。それ故、早く冷ましたい作品は、窯の最下段に窯詰めします。

  ? 放熱を早くする。但し、窯内部を急に冷やすと、窯を痛めるますので、急冷は避けたいです

   ?) 色味穴などがあれば開く。この程度の穴ならば、火を止めた直後に開いても安全です。

   ?) 窯の温度が300℃程度に成ったら、扉を徐々に開く。

      窯の壁の厚さによって冷えの速度は変わります。

      尚、300℃程度に成れば、直接引き出した方が早いかも知れません。

   ?) 冷えが遅い場合には、扇風機で窯に風を送り込み冷やします。

4) 最後に、800℃程度の温度は素焼きの温度とほぼ一緒です。

   それ故、素焼きの作品と一緒に焼く事も可能ですが、素焼きの土が急冷に耐えられない場合

   には、窯を急冷する事は危険です。

以上ですが、疑問点などがありましたら、再度質問して下さい。
  

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