3) 白瓷の種類(器形)について。
? 食器類。 椀、皿、盤、鉢、坏、高坏(たかつき)、盌(まり)、高盤などがあります。
調理用具としては、擂鉢(すりばち)等の各種の鉢類があります。
a) 椀類は腰部が丸く湾曲し、わずかに端反り輪高台で、内面に陰刻花文を有する物も多いです
b) 皿類には、輪高台を持つ物、腰に稜(出っ張り)を持つ物、内又は外面に段差を有する物
などがあります。
? 液体容器。 水瓶(すいびょう)、浄瓶(じょうへい)、長頸瓶(ちょうけいへい)、平瓶(へいへい)
双耳瓶(そうじへい)、横瓶等の瓶類です。又、手付水注、手付小瓶、手付瓶など小型の物も
多いです。
a) 水瓶とは: 仏教では水を入れる器(水甕)で、比丘(びく)が持つもので、仏像では、
観世音菩薩(観音様)などの持ち物です。卵形の胴に細長い頸を持つ物で、高さが20〜25
cm程度のものが多いです。
b) 浄瓶とは: 水瓶と同じく水を入れる器ですが形が異なります。即ち、胴の肩にある口から
水を入れ、頂部の細長い口から直接水を飲むという、特殊な用法の器です。
水瓶と同じ様な形ですが、肩に水を入れる口がある事と、最上部に蓋が付いています。
c) 長頸瓶とは: 古墳時代より奈良時代まで、長期に渡り作られた形で、数の上でも最も多い
焼き物です。卵形の胴にやや太めの長い頸を付けた形です。口縁は端反に成っています。
高さは25〜30cm程度です。
d) 平瓶とは: 長頸瓶に次いで、多く作られた器で、中心から離れた場所に液体の注ぎ口が
付けられています。奈良時代に成ると円形から扁平の器に変化し、上面に把手(とって)が
付きます。特殊な形に、鳥の摘みの付いた蓋を持つ平瓶もあります。(長野県諏訪市出土)
? 貯蔵容器。 壷や甕などです。灰釉が掛かった広口短頸壷は、火葬骨蔵器として出土する
事が多いです。唾壷(だこ)や四足壷(しそくこ)など特殊な壷も作られています。
・ 四足壷は2〜3段の紐が胴に巻かれ、その外側(胴の側面)に四本の土紐で足が等間隔に
付けられ底が浮き上がった形です。又足紐の最上部に孔が空けられ、紐を通した孔と思われ
ます。高さは15〜20cm程度です。
? その他の特殊な物。 硯(すずり)、枕、合子(ごうす)、火舎(かしゃ)、塔(とう)等仏具や文房具
陶印も作られています。
a) 合子とは、蓋を持つ直径15cm程度の椀形の小さな容器です。蓋には、扁平な物や丸みの
ある物など、幾つかの種類があります。
b) 古代の硯はほとんど焼き物です。形として円面硯(えんめんけん)と風字硯(ふうじけん)に
分かれます。宝珠硯は円面から風字硯への移行期(9世紀)に出現します。
風字硯は平面の形が漢字の「風」の字に似ている事からの命名です。
変わった形の物に、鴨形硯が出土しています。鴨の頭部と頸が付いた硯です。(愛知県
黒笹出土) 猿投窯では11世紀位まで焼かれていました。
c) 火舎とは、円形の浅鉢形の炉で、3〜6脚の様々な獣の脚が付いています。
奈良時代では、火鉢(手を暖める道具)として使われていた様で、鎌倉時代には仏具の
香炉として使われていた焼き物です。
4) 白瓷の制作技法。
白瓷の制作には、大きく二つの時期に分別されます。一つは10世紀初め頃までの時期です。
この頃は、同じ窯で須恵器と白瓷が一緒に焼かれていました。(共用窯の時代)
他の一つは、10世紀初頭頃より、瓷器専用の窯で焼かれていた時代です。
以下次回に続きます。