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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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焼き物の着物(色彩)31 灰釉陶器(白瓷) 1

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1) 灰釉(かいゆう)陶器とは。

  植物の灰を原料とした釉(薬)を素地に掛けて焼成した焼き物です。

  現在でも多くの陶芸産地や陶芸家達、特に民藝陶器は、灰を原料にした釉を使っていますので、

  広い意味では、現在の釉も灰釉陶器と言えますが、ここでは狭い意味で、平安時代の9〜11世紀

  の焼き物を指す事にします。

  ? 中国の西周時代(紀元前1046年頃から紀元前771年)の墳墓遺跡からは、副葬品として

    灰釉の掛かった焼き物が出土していますので、その歴史はかなり古い様です。

    これらは、自然釉ではなく、意識的に灰釉を掛けた物と思われています。

  ? 自然釉からの発想の灰釉。

    我が国では、窯の改良により1200℃以上の高温で焼成される様になると、燃料である薪の

    灰が降り掛かり、薄緑色や黄色、褐色等のガラス質と成って表面を覆う、灰被り(はいかぶり)

    の状態に成ります。 この事から、灰が高温でガラス質になる事が判明します。

    そこで、植物を焼いた灰を水に溶かし、意図的に素地に塗る事で、作品をガラス質で覆う事が

    考え付いたと言われています。

  ? 灰が熔けるとガラス質になる理由。

    草木灰の中に含まれる石灰(CaO:20〜50%)や、カリウム、マグネシウム、ナトリウム等の

    アルカリ成分が、高温になり熔ける事で、素地に含まれるアルミナ成分や珪酸と反応し熔けて

    ガラス質になると言われています。

    その焼き物は当時、瓷器(ジキ)や白瓷(シラキ)と呼ばれていました。

  ? ガラス質の効能。

    表面をガラス質で覆う事により、水や油分の吸収を抑え、汚れ等から器体を保護したり、装飾の

    役目も果たす事になります。

2) 我が国での最初の灰釉陶器が作られてた場所。

  現在知られている最初の灰釉陶器は、平城宮跡で天平宝字(757〜764年)の木簡を伴い

  出土した、愛知県猿投(さなげ)窯産の長頸瓶(ちょうけいへい)と言われています。

  ? 愛知県猿投で焼成された理由。

    畿内では、須恵器や奈良三彩、緑釉陶器が作られ、陶器の一大生産地であるにも関わらず

    畿内より遠い愛知県で作られたのは、耐火度の高い陶土が大量に存在していたからです。

    ・ 草木灰の熔融点は1200℃以上必要で、須恵器や三彩、緑釉陶器に対し100〜200℃

      程度高くなります。

  ? 猿投窯の地層。

    窯の西側の東山地区では、赤褐色の鉄分を多く含む陶土が産出しますが、東方の猿投山に

    近い場所では、カオリン系の鉱物を含む比較的良好の、耐火度の高い白色粘土を産出して

   います。尚、猿投山は花崗岩から出来ています。

   それ故、時代を経るに従い、古窯跡群は東方の猿投山西南麓の低丘陵地帯に広がって

   行きます。

 ? 灰釉陶器の古窯群について。

以下次回に続きます。


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