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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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焼き物の着物(色彩)16 無彩色15(埴輪4)

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? 埴輪の種類: 前回の続きです。

 ?) 人物や動物の埴輪。

   古墳時代の5世紀中頃から、巫女(みこ)などの人物埴輪や馬や犬などの動物埴輪が登場します   

   人物埴輪や動物埴輪などは、行列した状態や一塊の像として並べられており、葬送儀礼を表現

   したとする説と、生前の祭礼の様子を再現したとする説などがあります。

   この様な埴輪の姿、形や並べ方は、古墳時代の祭祀や死生観を反映していると見られます。 

   a) 古墳時代の葬儀に付いて。 当時の葬儀に、殯(もがり)の風習があります。

   イ) 殯儀礼とは、死亡直後から本葬までの期間に行う儀礼です。

      この期間は、大きな権力を持つ人ほど長期に成り、歴代天皇では短くても数ヶ月、長い場合

      には数年に及ぶ例もあります。

   ロ) 目的は、死者の復活を願い「魂呼び」を行う事です。棺に遺体を収納し住居とは別の「喪屋」

      に仮安置します。 同時に本葬の為の丘墓の造営や石室建設が行われる時期です。

  b) 「魏志倭人伝」によると、殯儀礼には死者霊を呼び戻す為、「うすめ」、「なきめ」、「みけひと」

     「はきもち」等の言葉が登場します。「うすめ」は魂を呼ぶ呪術を施す巫女で、「なきめ」は

     「泣き女」と思われます。又「みけひと」は死者に食物を用意する人、「はきもち」は掃除用具を

     持つ者と考えられています。その他に儀式の布を織る「ゆうつくり」、生贄(いけにえ)の獣を

     捕らえ料理する「ししひと」等の人々が登場します。

   イ) これらの人々は、それぞれ殯の間に役割分担が行われていた事を表します。

   ロ) 本葬後にも、殯と同じ働きを人に替え、人物埴輪が役割を担っていたと思われます。

   ハ) 殯では、歌や舞は重要な行為で、琴を奏で太鼓を叩き、歌い舞い踊る事で霊魂を揺さぶり、

      遊離した魂を呼び戻す行為とされていました。 

   ニ) 人物埴輪は他の器財埴輪(家、武具など)が墳丘上又は石室入り口付近で出土するのとは

      異なり、墳丘外で出土するのも殯との関連性が指摘されています。

  d) 人物埴輪の出現は、5世紀代で主に畿内です。この頃は大部分が巫女の埴輪でした。

     人物埴輪の制作が群馬や茨城県など関東地方に伝わるのは、6世紀に入ってからです。

     埼玉県鴻巣市の生出塚遺跡は当時の東日本最大級の埴輪生産遺跡として知られています。

   ◎ 人物埴輪の種類: 巫女、踊る男女、武人、正装の男女、琴をひく男、冠をつけた男、笑う男

    ひざまずく男、鷹匠など多くの人物が登場します。

   イ) 腰かける巫女: 6世紀 高さ、68.5cm 重要文化財 群馬県出土 東京国立博物館蔵

      腰に鈴と鏡、香袋と思われる物を付けています。顔は未婚の少女の様相です。

    ・ 手をあげる巫女: 6世紀 高さ、88.5cm 群馬県出土 東京国立博物館蔵

      上衣は暗褐色の円文で飾られ、顔、眉、頬(ほほ)に赤色が施されています。

   ロ) 冠をつけ座る男: 6〜7世紀 高さ、74.9cm 重要文化財 高崎市出土 

      円形の腰掛にあぐらをかいて座り、上部が山形の切り込みで、蝶や円形の飾りを付けた

      豪華な冠を付けています。殯を主宰する人物と思われます。

     ・ 冠をつけ座る男: 6世紀 高さ、89cm 重要文化財 福島県いわき市出土 

       両手を挙げて何かを捧げるポーズです。

      立派な王冠は当時の王(又は権力者)を表しています。

     ・ 「冠をつけた男」などは、簡素な冠ですので、王ではなく神官かも知れません。

     ・ 「帽子をかぶった男」や「盛装の男」、「あごひげの男」などは、葬儀に列席した貴人と

       思われます。

   ハ) 武人の埴輪は、短甲(たんこう)や挂甲(けいこう)をつけた武人の埴輪が、多数出土して

      います。又、盾を持つ男の埴輪もあります。

    ・ 「短甲つけた武人」(埴輪武装男子像): 6世紀 高さ 64cm 重要文化財 熊谷市出土

     東京国立博物館。短甲とは、短い鎧の事で、短甲つ着用した武人埴輪は例が少ないそうです

    ・ 国宝 「挂甲をつけた武人」(埴輪武装男子立像): 6世紀 高さ 130.5cm 群馬県

      太田市出土 東京国立博物館。  全身を甲冑で身を固め、太刀と弓矢を持つ武人埴輪。

   ニ) 琴をひく男: 6〜7世紀 高さ 73.3cm 重要文化財 前橋市出土

   ・ 琴をひく男: 6〜7世紀 高さ 64cm 埼玉県出土

    いずれも、円筒の台に腰掛、前を見据えて、両手で4弦の琴を奏でています。

  ホ) 踊る男女、両手を高く上げた女など、手の動きがユーモラスに表現されています。

  へ) その他、頭に壷をのせた女、笑う男、鍬(くわ)を持つ男、馬をひく男など、日常生活の一部を

     写し取った埴輪も出土しています。

  ト) 埴輪の男女差を見分ける方法は、髪型の差で、衣装の違いは少ない様です。

   ・ 男の髪型: 男の結髪は「みずら」と呼ばれる、長く伸ばした髪を左右に分け、耳の周辺で束ね

    結んだ状態です。 更に盛装の男性は「下げみずら」と呼ばれる、髪の先端が肩まで伸びて

    います。労働に従事する者は「上げみずら」と呼ばれ、髪の下端が耳の周辺で小さく丸められて

    います。

   ・ 女の髪型(髷=まげ): 髪を前後に分け、それぞれふっくらと折り曲げ、中央を紐で結わえた

    形をしています。島田髷を潰した状態に見えますので、原始島田髷と表現する人もいます。

    但し、時代と共に簡略化され、薄い板状で表現される様になります。

   ・ 男女の衣装: 上下に分かれる衣装で、上着を衣(きぬ)と呼び、腰よりやや長めで裾広がり

    です。 腰紐のある物は左右を左前に合わせます。現在でも死者に衣装を着ける場合、左前

    に行います。

  e) 動物埴輪。

以下次回に続きます。


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