2) 墨書(ぼくしょ)土器と線刻土器。
筆を使い墨で文字や絵などを描くのは、土師器を焼成した後に行われます。吸水性のある土師器
では可能な事です。
? 墨書人面土器と墨書画。
壷、甕、皿などの胴体(側面)に描かれたものが多いです。
耳を除く輪郭、眉、目、鼻、口が勢いのある筆致で流暢(りゅうちょう)に描かれています。
全国的にも出土例は多く、平城宮の他、富山県、宮城県、静岡県などの遺跡にも見られます。
?) 人面土器の目的。
a) 罪や穢れ(けがれ)を土器に写し、川や海に流した様です。
鬼の面や貧乏神などの疫神を描く事が多いです。
b) 自分の顔を壷などの土器に描き、その中に息を吹き込み小石を入れ封をして、川に
流す事で、自分に付いた穢れを消す目的の様です。
c) 厄病などが流行り、厄除けや厄難を避ける為の祭祀(さいし)に使われ、お祓いの後
川などに流した。
d) 奈良、平城京の遺跡の溝跡から、総数55点の人面土器が出土しています。
土器を水に流す事で、疫病神や怨霊、禍、穢れから逃れられると言う古代の祭祀
(さいし)の形態と思われています。この祭祀は、奈良時代〜平安時代の約百五十年間
行われています。
?) 変わった人面土器
a) 一つの甕に四人の顔が描かれた土器も出土しています。(宮城県多賀城市出土)
一般的には一人の顔が描かれています。
b) 中には、優しい子供の顔を描いた人面土器も出土しています。
? 刻書土器(箆書土器)。
焼成前の土器に箆(へら)状の工具で、文字や絵画、記号を刻書したものです。
?) 刻書文字は、墨書文字と同じ様な場所から出土しています。
即ち、奈良平安時代の宮殿や宮都跡、寺院跡、城柵跡、地方諸官衙(かんが・国の役所)跡
集落(住居)跡などです。
?) 刻書は大部分が漢字で、皿、高坏(たかつき)、甕の胴部に縦に刻まれています。
書体の多くが楷書で一文字が多いです。
?) 書かれた文字は、人名(又は施設)や人物(人、女)、自然地形や地名(山、川、甲斐)、
仏教関係(佛など)、季節(秋)、十二支(龍、午など)、吉兆文字(芳、好)、数字、植物
(禾、木)などで、その他に王、本、太、合、玉などがあります。「×」は窯印と思われます。
? 線刻画の中で著名な物に、竪穴式住居が描かれた土師器があります。(埼玉県本庄出土)
底部が平底で胴部は球形の壷で、頸部から底に掛けて箆(へら)整形がなされ、肩部分に
箆先状のもので、立体的な切妻式の屋根を表現しています。地平を表す棟木と、八本の
垂木(たるき)と思われる斜め線で描かれています。
その他の絵柄。動物(猪、鹿)、根を降ろした樹木、河川などで、当時の生活の様子を伺い知る
事が出来ます。
次回埴輪に続きます。