土師器(はじき)とは、古墳時代に登場する焼き物です。
弥生式土器の流れを汲む焼き物で、弥生式土器から徐々に移行して行きます。
それ故、土師器の始まりは色々説があり、必ずしも明確ではありません。
終焉時期も人により色々な説がありますが、奈良、平安時代にも祭祀用の器として使われています。
より強く焼き締まった須恵器や施釉陶器と入れ替わる様にして衰退して行きます。
1) 土師器の特徴。
一般に文様が消え、器形もある程度地域性がありますが、北海道から九州までほとんど全国的
に共通しています。これは、政治的統一が進み、全国的な文化交流が増大した事の証明に
なります。
? 酸化焔による赤褐色、黄色褐色の土器ですが、弥生式土器に比べ、粘土が水簸(すいひ)
等が処理され、均一性と緻密性が増します。
? 焼成温度も800℃前後と、弥生式土器より若干高めで、特別の窯で焼成してはいない様で
弥生式土器の焼成方法と、ほぼ同じと考えらています。
? 土師器の用途は弥生式土器と同様に、煮沸(煮炊き)用土器として、甕(かめ)が作られて
います。その他に、貯蔵用の壷類、供献(きょうけん)用土器として、皿や高杯(たかつき)、
盤などが在ります。中でも供献用土器が一番多く作られていました。
2) 墨書(ぼくしょ)土器と線刻土器。
土師器が他の土器と違う点は、墨書や線刻された土器が出土する事です。
主に、宮殿跡や諸官衙(かんが・国の役所)跡、城柵跡、寺院跡、集落跡などで出土します。
これらは文字が読み書きできる人がいる、高い文化があった場所です。これらの事から、その
生活振りや制度を知る事も可能になります。
? 墨書土器は文字や記号、絵画などが黒墨、又は朱墨で器の底裏、側面に描かれた物で、
絵画などは器の内側に描かれている物もあります。又、甕は胴体部分に描かれています。
?) 墨書文字には、判読可能なものと、意味不明なものがあります。
a) 役所を表す文字には「宮内省」と書かれた杯や、「大炊寮(おおいのりょう)」と書かれた
蓋杯などがあります。前者は宮中の政務や庶務を司り、後者は宮内省に属し食料などを
司る役所です。又厨房を意味する「厨」や「厨家(くりや)」などの記載もあります。
b) 寺院跡では、「法華」、「僧房」、「尼寺」、「講院」などがあります。
c) 年記をあらわす文字。「天応」、「和銅」、「神亀(しんぎ)」などの年号が記されています。
d) その他に、人名を表す文字や官職を表す文字、「東、西、南」など方位を表す文字、「福」や
「吉」、「寶(たから)」、「富」などの吉兆を表す文字、地名や地形を表す文字など、多くの文字が
あります。
?) 意味不明な文字。一文字、二文字、三文字以上のものがあります。
a) 一文字: 長、丸、力、平、上、良、内、正、太、明、井、縄などです。
b) 二文字: 黒川、須本、上田、成田、正八、兼村、布可、可可、天天その他などです。
c) 三文字: 本役三、高継長などです。
? 墨書人面土器と墨書画。
以下次回に続きます。