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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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素朴な疑問 148 手や指の使い方とは6

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1) 手や指の使い方の種類。(前回の続きです)

 ① 手や指のどの部分を使うか。

 ② どの指をどの様に使うか。

 ③ 指を使う時の注意。

 ④ 指はどの位置で使うのが効果的か。

   陶芸は力仕事と言う人もいます。小さな作品であれば、さほどの力は必要としませんが、

   大型の作品に成るに従い、強い力が必要に成ります。例えば、背の高い壷などを作る際には

   数kgの土を使います。その際土殺しや土を筒状に伸ばす作業には、非常に大きな力が必要に

   なります。但し、陶芸は必ずしも力だけで作品が出来る訳ではありません。少ない力でも

   有効に使う事で作品を作る事も可能になります。その為には、力を有効に使う事が求められ

   ます。

  ) 力を有効に使うには。

   a) 良い姿勢で作陶する事。

     当然ですが、作品に力を与え形や肉厚を変えるのは、手の指です。指は腕を通して胴体の

    一部の肩に繋がります。即ち、制作者の体がしっかりしていなければ、手の指もしっかり

    せず力も出ません。それ故、単に手先のみの問題ではなく、体即ち姿勢が大切になります。

    極端に前屈み(かがみ)になったり、轆轤作業時に極端に体を横向き過ぎたりすると力が

    分散し勝ちです。

   b) 極端に前屈みする原因は、作業する位置が遠い事です。即ち、座る位置や立ち位置を

     制作中の作品に近付ける事です。又、作業する位置が低い場合にも、前屈みの原因に

     成ります。その為、作業する高さを調整する必要があります。その他、手元が暗い場合や、

     近視や老眼の為にも前屈みになる場合があります。

   c) 陶芸では引く力よりも、押す力を多く使います。ほとんどの作業が押す力と言っても

     過言ではありません。土を上に伸ばすのも、壁の内外から押された土が、上部に逃げる

     現象ですし、紐作りの紐も左右(又は上下)より、押された土が横方向に逃げて細く

     なります。押す指の力は、腕の支点から短い程位置が安定し力も出ます。

     尚、支点とは、作業台の端などの一部や、適当な台や物であったり、轆轤作業では、

     轆轤の「ドベ受け」や制作者の横腹、足の膝(ひざ)などがあります。特別に用意する

     場合と、その近くにある物を利用する場合もあります。

   d) 体が伸びた状態では力が入りません。即ち、両脇が「スカスカ」に開いた状態では、

     力が出ません。両脇を締める事で手の指も安定し、振れを押さえる事が出来、力も入る

     事になります。

   e) 同じ力を有効に使うには、力を狭い範囲に集中させる事です。

     掌(てのひら)全体よりも、手の指全体、更には指先と範囲を狭くすると力が入ります。

     即ち、面より線、線より点と範囲が狭くなりるに従い力が入ります。但し、点で押すと

     一点のみが変化します。 轆轤の場合には、回転していますので、一点で押しても線状に

     力が伝わります。同様に線状に押した場合には、面状に力が伝わる事に成ります。

     それ故、轆轤作業では線状に押すと全体の形を変える事ができます。具体的には、轆轤の

     外側の手の中指、人差し指、薬指の三本の指を一体にし、高さを揃えます。

     当然、中指と薬指はわずかに湾曲する必要があります。こうする事で、土との摩擦を

     減らす事も出来ます。摩擦が大きいと撚れ(よれ)や変形の原因に成ります。

以下次回に続きます。
    

素朴な疑問 149 手や指の使い方とは7

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1) 手や指の使い方の種類。(前回の続きです)

 ④ 指はどの位置で使うのが効果的か。

  ) 力を有効に使うには。

  ) 轆轤の回転力を利用する。

    力は制作者自身が引き起こすのは当然ですが、轆轤の回転力を利用する事で、小さな力を

    大きな力に変える事ができます。

   a) 轆轤を使用する理由。

    轆轤(電動、蹴り、手回し)は、回転する事で円形の作品を作るのに適します。

    それ故、形が整った作品になります。更に手捻りの場合にも利用します。

    電動轆轤などを使う一番の利点は、短時間で形の整った作品を作る事が出来る事です。

    更に肉厚も比較的薄く、軽い物を作る事も可能です。気が付いていないかも知れませんが、

    轆轤の回転力は、上手に使う事で、制作者の力をサポートして、力を与えてくれています。

   b) 轆轤が発生する力とは。

    一般に轆轤(電動、蹴り、手回し)は回転する事で、遠心力を発生します。逆に轆轤は

    遠心力のみを発生する機械(道具)とも言えます。垂直方向の力はありません。

    遠心力(F)=質量(m)X半径(r)X角速度(ω=オメガ)の二乗で現わされます。

    即ち、角速度(回転速度)が二倍に成れば、四倍の遠心力が働く事になります。

    それ故、轆轤作業では、回転速度が重要になり、制作時の場面場面で微妙なコントロールが

    必要になります。

   c) 遠心力(平面、横方向の力)を外側から押さえる事により、垂直方向の力に変える事が

    できます。例えば、土殺しの際の延べ上げでは、遠心力に逆らい、土を両手で締め上げる

    事で、土は上に伸びます。制作者は自分で土を上に伸ばしたと感じるかも知れませんが、

    実際には、轆轤の回転力も大いに寄与しています。同様に、延べ下げの場合、上に伸びた

    土の頭を右手の親指の付け根(右回転の場合)で、前方横方向に押し倒す(遠心力を押さ

    える)事で、少ない力で、土を捩り(ねじり)ながら、下方に下げる事(延べ下げ)が

    できます。 轆轤に慣れていない方は、土の頭を真上から真下に押さえ込もうとしますが、

    これでは垂直方向の力は発生しませんので、大きな力が必要になります。

   d) 土を上に薄く伸ばす場合にも遠心力を上手に使うと、意外と楽に土が上に伸びます。

    (電動)轆轤作業で難しいのは、土を薄く上に伸ばす事と言われています。十分薄く伸ばす

     事が出来れば、「轆轤技術の7~8割はマスターした事になる」と言う人もいます。

     上に薄く伸ばすには、遠心力を利用する必要があります。即ちある程度のスピードのある

     回転がいります。轆轤に慣れていない方は、回転スピードが遅くなり勝ちです。即ち速く

     すると、振ら付き易くなると思うからです。しかし回転が遅いと逆に振れが発生する事が

     あります。

   e) 轆轤作業で土が上に伸びない原因には、上記の回転スピードの他に、外側からの押す力が

     不足している事が上げられます。土は筒状の内外から力を加え上に伸ばしますが、外側の

     手の力が弱いと、土は上に伸びません。筒の中央部分が凹む程度まで、力を強くしないと

     土は上に伸びてくれません。勿論、外側の手は基準ですので、肘などは太ももや脇腹に

     押し付け、しっかり固定する必要があります。

   f) 外側の手は時計の針の8時の位置で使うと、力を有効に使えます。

    10時、11時と成るに従い、力が入り難くなります。即ち、体が伸びた状態では、力が

    発揮できません。最悪でも9時の位置までです。逆に7時、6時の位置ですと、外側の手の

    手首は急激に曲がるか、手をひっくり返す必要が生じますので、力は入らず表面を撫でる

    程度の為、土は薄くは成りません。

2) コテ類を有効に使う。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 150 手や指の使い方とは8

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2) コテ類を有効に使う。

  コテは手や指の代わりをする陶芸用具です。袋物と呼ばれる口が狭い作品や、大皿や大鉢の様に

  広い平面(曲面)を持つ作品に用いる事が多いです。即ち手や指では成形し難い時に使用します

  但し、他の方法を取る事も出来ますので、必ずしも必要と言う訳では有りません。

  陶芸では手や指先の感覚を大事にしますから、出来るだけ、ご自分の手や指で直接粘土に触る

  事を勧めます。「コテ」の材料は主に木製です。その他、ゴム製やプラスチック等でも作る

  事が出来ます。形としては、「柄コテ」と「木コテ」があり、形状は作品に応じて色々あり、

  市販もされていますが、出来るだけご自分で制作する事をお勧めします。

  適当な板材や木の棒があれば、比較的容易に作る事ができます。

 ① コテは、面状で押さえる物、線状で押さえる物、点で押さえる物とに分かれます。

   「コテ」は水に漬けて濡らし、滑る様にして使います。「柄コテ」の場合、先端の突起部に

   濡れた布切れを巻き付け、水切れを防ぐ方法もあります。(但し巻き付ける方向に注意、

   使用時に解けない方向に巻きます。轆轤が右回転の場合、布も右回転方向に巻きます。)

  ) 面で押さえる物の代表的なコテが「牛ベラ」です。主に作品の内側のカーブを作る時に

    使います。同じ形の作品を作る時に便利です。「牛ベラ」は比較的長細い形状(長刀型)で

    先端部分を使いますが、他には、小判型の物もあります。掌(手のひら)でしっかり握り、

    ややカーブした面を当てて使います。使用する際、片手だけでなく、他の手の指で支えて

    使用します。又皿などの場合、「コテ」の裏側に手を添えて、両方から挟む様にすると

    使う時位置が安定します。

  ) 線状に使う「コテ」に「木コテ」があります。主に、鉢や皿、茶碗などの内側に使い、

    特に仕上げに用いる事が多いです。使い方は、「コテ」をやや手前に倒し、縁(エッジ)を

    土に当てます。その際他の手の指で補佐する必要があります。

    コテの役目は、指では狭い範囲にしか力を伝える事しか出来ませんが、「木コテ」では広い

    範囲を、一定の形状で押さえる事が出来ます。

    市販の「コテ」には、中央に丸い穴が開いた物が多く、手の指が握り易くなっている物が

    多いです。形状も「まちまち」ですが、一般的にはユニバーサル型の「おむすび」形の物で

    雲形定規の様に、周辺のカーブが徐々に変化しています。必要に応じて、どのカーブを使う

    かを考える必要があります。

  ) 「柄コテ」は長い柄をもち、先端部(先端近く)に突起(凸状)の「こぶ」を持った物で

    手や指が入らない袋物と呼ばれる、徳利や壷などの内部に「こぶ」の部分を押し当てて

    胴体部分を膨らませたり、形を整えるのに使います。

    柄を鷲掴み(わしつかみ)にし、持ち手の肘は太ももに密着させ手を安定させます。

    細くなった口部分を支点として、掬い上げる様にして使います。基本的には下から上に

    向かって移動させます。「柄コテ」の「こぶ」の部分と対応する外側に、他の手の指を当て

    て使います。使用中に口縁の形が変形する場合も有りますが、余り気にしない事です。

    後から直す事が出来ます。

  ② その他の使い方。

   「柄コテ」は形を整える以外に、細い筒状の作品を作る際にも利用できます。

   細長い作品では手や指が内側に入りません。又、手の入る程度の太さの筒状の作品を外側から

   締めて、細長くする事も出来ますが、肉厚に成ってしまいます。この様な場合、「柄コテ」の

   柄の部分を真っ直ぐ筒状の内側に押し当てながら、外側より、柄に向かって押し付けると土は

   薄い状態で背が高くなります。 その他、利用方法を工夫して下さい。

以上にて手や指の使い方の話を終わります。
    

素朴な疑問 151 本焼きの焼成時間は1?

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本焼きの焼成時間は、窯の種類や大きさによって、数時間~数週間と幅があります。

数週間も焚き続ける窯は、共同窯の大窯や大型の登り窯などの場合で、昔ながらの薪で焼成する

窯です。今では特殊な窯に成っていて、多く使われている訳ではありません。

一般に使う個人の窯でも、焼成時間は、数時間~十数時間とバラバラです。

今まで主に使われている時間の目安は、1時間で100℃上昇させると良いと言う事です。

即ち1250℃までに12時間半で焼成する事になります。窯の温度を測定するゼールコーンは、この

温度上昇に対応しています。勿論、窯の構造や大きさ(容量)、燃料(電気)の違い、窯に入れる

作品の大きさと形、土や釉の種類によっても異なります。

陶芸の技術書や作品写真では、16~18時間程度で焼成時間した物が多い様に見受けられます。

それには、何らかの事情があると思われます。

当然ですが、焼成時間が短い程、燃料費も安く済みますし、労力も少なくなります。

陶芸で一番ランニングコスト(経費)が掛かるのは、燃料(電気)代と言われています。

それ故、なるべく短い焼成時間にしたいのが人情です。どの程度まで時間を短く出来るかが関心の

的になります。

1) 長時間焼成する事のメリット。

 ①  土を焼き締める。

   素地(粘土、磁土)は、高温に曝される(さらされる)と収縮し始め、密度が大きくなり、

   機械的強度も強くなります。即ち、高温で時間が長い程、壊れ難くなります。

   更に、密度が増す事で水を透し難くなり、水漏れも少なくします。作品を指で弾くと高く

   金属音に近い音がし、焼きの締まり具合が判断できます。

 ②  熔け難い釉を完全に熔かす。釉の種類によっては、その組成する材料によって温度だけで

   無く、長時間高温に曝す事で熔ける物もあります。代表的な釉は「志野釉」などがあります。

   又、釉はさほどの高温にせずとも低い温度(SK-1程度低い)で、時間を掛ければ熔ける

   性質があります。その為、一定温度に保ったままの「寝らし」時間を長くしたりもします。

 ③  世の中に名品と呼ばれる作品群は、良く焼き締まった作品が多いです。

   逆に、良く締まった焼き物が、良い焼き物とも言えます。

   それ故、高価な作品では、良く焼き締めるのが普通です。

2) 温度上昇は必ずしも、直線的ではありません。

 ①  本焼きの場合、窯に火(又は通電)を入れた直後の場合には、窯の容積によっては、1時間で

   300~400℃上昇する事も稀ではありませんし、この様に急上昇させても、ほとんど問題が無い

   場合が多いです。この段階ではほぼ直線的に温度が上昇します。

 ②  温度上昇が徐々に鈍る。

   窯の温度が上昇するに従い、温度上昇は徐々に鈍ります。これは主に熱が壁などを通して

   外部へ漏れ出る結果と思われます。1200℃程度までは、どうにか温度上昇しますが、1200℃

   を超える頃から、極端に温度上昇が鈍くなります。

 ③  酸化、還元焼成によっても、温度の上昇は異なります。

   極端な酸化、還元焼成では温度の上昇は見られず、逆に温度低下をもたらす場合もあります。

   但し、酸化、還元焼成だからと言って、土の焼き締まりや釉の熔け具合に影響を与えるもの

   では有りません。単に、釉の色具合に変化を与えるだけです。

3) 近年は焼成時間が短くなっています。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 152 本焼きの焼成時間は2?

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3) 近年は焼成時間が短くなっています。

   本焼きの時間は勿論、素焼きの時間も短くなっています。最初に本焼きに付いて述べます。

   量産を主体とした商業的ではなく、個人やグループ、小規模な陶芸教室などでは、必ずしも

   一度に多量の焼き物を作る(焼く)訳ではありません。陶芸で一番手間隙が掛かり、難しいと

   言われているのが、窯を焚く事です(特に本焼き)。その為、より簡便に窯が焚ける事が

   要望され、それに応じて、窯のみでなく、粘土や釉の改良がなさ、それらが市販されいます。

   以前と比べて、それ程苦労せずに窯焚きが行われる様になりました。但し、「窯焚き一生」と

   言われる程で、窯は簡単に焚ける様に成りましたが、希望する焼き物を焼くには、現在でも

   大変な苦労があるのは、変わりまません。

 ①  焼成時間が短くなった理由

  ) 比較的小型な窯が多くなった。

    特に近年、燃料を使わない小型の電気窯が普及しています。小さな窯では、家庭用の単相

    100Vの電力でも焼成が可能に成っています。小型ですので、短時間で所定の温度に達し易い

    です。尚、燃料(ガス、灯油)を使う窯では、電気窯程容量の小さな窯は見当たりません。

  ) 窯の構造や材質、燃料の影響で、熱効率が良くなった。

    一般に窯の壁材は耐火レンガ(軽量が主役に成っています)を用いて作られていますが、

    その他に、耐火ボードやセラミック・ファイバー(ウール)と呼ばれる素材が出現し重量が

    軽い窯も登場しています。即ち、耐火レンガを使わなくても、1250~1300℃まで耐える事が

    可能の窯であり、フアイバー(ウール)を用いれば、密封度も上がり、温度のロスも少なく

    なっています。又、耐火レンガと併用して使えば、窯の壁の厚みが増し、表面より逃げる

    熱が少なくなりますので、温度上昇も早くなります。

  ) 粘土や釉の改良がなされ、比較的短時間焼成が可能になった。

   a) 粘土は産地毎に特徴があり、温度の急上昇に耐えない土もあります。例えば本来の備前土

    は短時間で昇温すると、素地が煎餅の様に膨らむ為、じっくり温度をげる必要があります。

    その為、焼成時間は長時間になります。その他にも、長時間焼かないと焼き締まらない土も

    あります。

   b) 現在陶芸材料店で市販されている多くの土は、約8時間で焼き締まる様に調合されている

    と言われています。備前の土として市販されている土も、実際にはこの様に調整された合成

    備前が主流に成っています。それ故、8時間程度の窯焚きで土も焼き締まり、作品として

    立派に通用します。但し、素焼きをした作品である事が前提条件です。

    備前土は素焼きを行いませんので、ゆっくり温度上昇させる素焼き分も含めると、実際には

    もっと長くなります。

   c) 市販されている多くの釉も土と同様に、約8時間で十分熔ける様に調合されています。

    勿論、温度範囲は明記されていますので、この範囲内での事です。

    土と釉がこの様に約8時間で焼成できる用になった結果焼成時間も、以前より短くする事も

    可能になりました。

  ) 温度上昇速度にメリハリを付けて短時間で焼成を終わる。

    極端ですが、大分以前に、素焼きが2時間、本焼きが4時間で終わる事が可能と宣伝する

    窯がありました。

以下次回に続きます。
    

素朴な疑問 153 本焼きの焼成時間は3?

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3) 近年は焼成時間が短くなっています。

 ①  焼成時間が短くなった理由(前回の続きです。)

  ) 温度上昇速度にメリハリを付けて短時間で焼成を終わらせる。

    極端ですが、大分以前に、素焼きが2時間、本焼きが4時間で終わる事が可能と宣伝する

    「ガス窯」がありました。果たしてどの位まで時間を短くする事が可能でしょうか?

    焼成には、最高温度と窯焚きの時間の長さが必要です。最高温度は釉を熔かすのに必要な

    温度であり、時間は素地を焼き締めるに必要な時間と、釉を平滑にする遺憾の長さです。

    最高温度は判り易いですが、時間はいまいち理解が出来ないかもしれません。

    メリハリを付ける事とは、以下の事と思われます。

   a) 低い温度で時間を掛けても余り役立ちません。必要な時(温度)に十分時間をかけます。

    素焼きした作品を本焼きする場合、素地はすでに750~800℃程度の温度に晒されています

    ので、この範囲内で時間を掛けても、素地にほとんど何の変化も起こりません。それ故、

    時間を掛ける事は、多くの場合無意味になります。

   b) 必要なのは、高い温度で長時間持続させる事です。

    950℃近辺より、酸化又は還元焼成に入ります。一般にこの過程では温度の上昇が鈍くなり

    ます。 燃料や空気の量との関係もありますが、主な理由は釉が熔ける為に、熱量が取ら

    れる事です。この段階(950~1200℃)でどんどん熱量を増やし温度急速に上げると、何らか

    の問題が発生するでしょうか?。熱量が増えると、素地は徐々に収縮します。収縮が早まる

    からと言って、釉薬も溶け始め軟化しますので、素地の収縮で、釉が素地から離れる事は

    考え難いです。但し、粘土には、急速な温度上昇に耐えられない物もあります。多くの場合、

    有機物を含んだ土です。この場合には急上昇は厳禁です。但し、市販の土では余り見る事は

    ありません。即ち、調合、精製された土が主だからです。但し、ご自分で採取した土は

    試し焼きをして確認が必要です。

    更に、釉に含まれる不純物(有機物など)が燃えガスが発生し、釉の表面より抜け出る為、

    釉の表面が痘痕(あばた)に成るかもしれません。但し、痘痕になっても、1200℃以上に

    なれば、釉も本格的に熔け、痘痕も消えますので、この段階での痘痕はほとんど問題に

    成りません。

   c) 施釉した作品を本焼きする場合には、施釉した作品が水を吸っている場合、この水分を

    蒸発させる為に、時間を掛ける必要があります。その為ゆっくり温度上昇が必要になります

    但し、水分がほとんど無い程度に乾燥していれば、比較的短時間で高温にする事が可能に

    なります。釉の水分が素地に浸み込みますので、水分が十分に抜けていないと内部の水が

    急激な蒸気となり、素地から抜け出る際、釉を下から浮き上がらせる事になります。

    それ故、施釉したら直ぐに焼成せず、数日置いてから詰めるか、施釉した作品を風通しの

    良い場所や、日陰などで天日干しし、水分を無す又は少なすると、急減な温度上昇も問題なく

    行う事が出来ます。

   d) 以上の事から、施釉時の水分が無くなっていれば、750~800℃までは、急激な温度上昇が

    可能になります。窯の容量や燃料によっては、ここまで3時間程度(従来の半分程度)で

    済ます事も出来ます。但し、窯の大きさや構造の違いによって、窯内の温度がバラツク場合が

    あります。特に急上昇の場合に起こり易いです。その為、本格的な焼成に入る前に、窯の

    温度を均一化する時間が欲しいです。

   e) 還元や酸化に必要なのは、温度と窯の雰囲気です。温度は約950~1200℃と言われ、

    それ1200℃以上は酸化焼成するのが一般的です。この範囲内で温度を急上昇させても、

    酸化還元に影響を与える事は少ないです。重要なのは、窯の雰囲気です。但し極端な酸化や

    還元では、早く温度を上げたくとも、温度上昇は鈍ります。

   f) 本当に必要な温度は、1200℃以上になります。この期間に長時間晒されて焼き物は、

    焼き締まり、釉も滑らかに熔けます。所定の温度(陶器の場合1230~1250℃)になったら

   「寝らし」作業に入り、一定時間温度を持続させます。技術書を読むと1時間程度の物が多い

   ですが、30分でも十分ですし、窯の容量にもよりますが、短い場合には10分で済む場合も

   あります。短い時間であれば、燃料費(電気代)も安くできます。流れ易い釉の場合は、

   「寝らし」時間は短めにする方が安全です。

   尚、焼成時間を短くした場合、最高温度をやや高めに設定した方が、良い結果が出ます。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 154 素焼きの焼成時間は1?

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3) 近年は焼成時間が短くなっています。

 ② 素焼きの時間も短くなっています。(前回の続きです。)

   素焼きは本焼きに比べ、同じ温度になるまで、1.5~2倍程焼時間が長くするのが一般的で、

   陶芸の技術書にはその様に書かれています。現在でも同じでしょうか?

   それは、急な温度上昇では、窯の中で作品が爆発したり、「ひび」が入り易くなる為です。

   爆発は文字通り、作品が粉々になり、周囲に散乱する状態です。飛び散った破片は周囲の

   作品に当たり、その周辺の作品を壊す事になります。場合によっては、電熱線を痛めたり、

   窯の壁を破損させる事もあります。実際、小生も数回爆発事故を経験しており、窯を焚いた

   事のある人なら一度は経験している事でしょうす。

  ) 素焼きでの爆発事故の原因。

   a) 爆発は水蒸気爆発です。 素地に含まれる水分が温度上昇と共に、水蒸気と成って作品の

    表面から抜け出します。温度上昇が緩やかな場合には、内部からの蒸気の発生量が少なく、

    水蒸気が素地に留まる量も少なくなり、爆発の危険性は少ないです。

   b) 逆に放出量より、発生量が多いと、素地の内部に水蒸気が滞積し、内部の圧力が高まり

    ます。その結果素地の弱い所から亀裂が入り、最終的には爆発を起こします。

    爆発音は、窯の外にまで聞こえますので、直ぐに判ります。

    それ故、ゆっくり温度上昇をさせる必要があります。

   c) 素地から水蒸気が発生するのは、ある温度範囲の場合のみです。それ故、その温度範囲は

    ゆっくり温度上昇させれば良く、それ以外では、躊躇無く温度上昇させても安心です。

    a) その温度範囲は約230~約300℃です。この温度範囲では、10分間に10℃程度の温度上昇

     ならば安全です。一番危険な温度範囲は、約240~約270程度です。

     但し、窯が低い温度の場合には、窯の中の温度に「バラツキ」があります。その為、

     窯の隅々まで約240~270℃にするには、窯の容量にもよりますが、約300℃程度まで注意

     する必要があります。

    b) 窯に点火(通電)直後から約200℃程度までは、温度を急上昇させても、ほとんど問題

     有りません。この段階でゆっくり温度上昇させる事は水分を蒸発させる事になりますので

     必ずしも無駄では有りませんが、水分は別の方法で少なくする事で代用できます。

     即ち、作品制作後に十分乾燥させ、窯詰め直前に晴天の下で天日干し、水分を少なくする

     事です。但し天日干ししても、若干の水分(2~5%)が残っています。特に肉厚の作品は

     内部まで乾燥しているか注意が必要です。

   c) 300℃程度までは、窯の扉などを少し開け、水蒸気が逃げる様にします。

    水蒸気が外に逃げる様にしないと、水蒸気が何らかの理由で、水滴に戻り、作品の上に

    落ちると、釉の表面に染みが出来、汚れます。

    天火干しし水分が少なくなっている場合、水蒸気の発生量は少なく、危険温度地帯も短時間

    で終わります。尚、水蒸気の発生は、冬場であれば目で確認できます。夏場でも大量の場合

    には目で確認出来ますが、カラス(ガラス瓶)などを蒸気の出口穴にかざせば、曇り具合

    から発生量が判断できます。

  ) 素地に含まれる有機物が燃える温度。

    市販されている土には、不純物である有機物はほとんど除去されていますので、問題あり

    ませんが、ご自分で採取した土に有機物(木の葉や腐った木片)が含まれている場合には、

    300℃程度から燃焼が始まります。若し有機物が含まれていると、300℃以上で温度を急上昇

    させると、「ぶく」と呼ばれる現象が起こります。

     注: 「ぶく」とは、煎餅(せんべい)の様に素地の一部が膨らむ現象で、素地の表面が

     凸凹になります。

   )素焼きで「ひび」が入り易い温度。(素地の熱的変化と、結晶水の放出)

    一般に300℃を超えた段階より、約550程度までは、温度を急上昇させても問題ありません。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 155 素焼きの焼成時間は2?

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3) 近年は焼成時間が短くなっています。

 ② 素焼きの時間も短くなっています。(前回の続きです。)

  ) 素焼きでの爆発事故の原因。

  ) 素地に含まれる有機物が燃える温度。

  ) 素焼きで「ひび」が入り易い温度。(素地の熱的変化と、結晶水の放出)

   a) 素地に含まれる水の量は、成形水量と結晶水に分かれます。成形水量は可塑性を増す

    働きがあり、成形方法によって増減する事ができます。大気中に放置すれば、徐々に蒸発し

    乾燥が進みます。

   b) 結晶水は素地内で化学的に結合した水で、大気中では絶対に蒸発する物ではありません。

    一般に素地の中に14%程度含まれており、粘土物質では450~500℃の加熱で粘土の結晶が

    破壊されて、結晶水が失われると言われています。尚、粘土の成分によって、結晶水が抜け

    出る温度も変化します。結晶水が抜けるこの状態の粘土質を、メタ・カオリンと呼びます。

    吸熱反応ですので、この温度範囲内では、温度上昇が鈍くなり勝ちです。

    市販の粘土を使う場合、この間に温度を急上昇させても、ほとんど問題に成りません。

    但し、素地によっては、急上昇させると、分解温度で収縮が起こり、素地の内部と外部の

    温度差によって歪(ひずみ)が発生します。この歪を解消する為に、亀裂が入る場合もあり

    ます。

   c) 上記温度範囲は、素地の粒子の細かさ、密度、温度の上昇速度によって変化します。

     即ち、粒子が細かい程、更に温度上昇が遅い程、低温で分解が進みます。

   d) 石英を多く含む素地(蛙目粘土など)では、550~650℃の間で大きく膨張します。

     石英は珪酸(SiO2)の原料として、砂状や塊状として存在します。

     石英は573.3℃で長さ方向で、0.45%、体積で1.35%膨張します。但しこの現象は可逆性で、

     冷える際には、同じ量減少します(冷め割れの原因)。それ故、石英を多く含む土は、

     この温度範囲では、慎重に温度上昇させる必要がります。

    e) 尚、素地がガラス質に変化し始めるのは、約980℃程度からです。それ故、素焼き後に

     施釉するのであれば、この温度以下で終わらなければ成りません。

   ) 冷め割れ現象。

    窯焚きは温度を上昇させるだけでなく、窯を冷ますのも窯焚きの重要な要素になります。

    素焼きのみならず、本焼きに付いても言える事ですが、ここでは素焼き時に付いてのべます。

    600~500℃の間で、肉厚が厚く、石英を多く含む粘土などでは、急冷すると「冷め割れ」を

    起こします。これは上で述べた様に、石英の結晶の形態が変わり、容積が急減するからです。

    他の成分との間に歪(ひずみ)が発生する為で、この歪を解消する為に、「割れ」が発生

    する物です。その為、急激な冷えは悪い影響を与えます。

 何度も述べますが、市販の粘土類は、様々なトラブルを回避する様に、調合されていますので、

 上で述べる事柄は、ほとんどありません。それ故、素焼きの時間も3~4時間で終わらす事も

 可能に成ってきています。但し、素焼きでは素地の生乾きによる水蒸気爆発に気を付ければ、

 従来の半分程の短時間焼成も可能です。

    

素朴な疑問 156 粘土と粘土の接着法1?

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主に手捻りに多い作業ですが、手捻りに限らず、電動轆轤作業の際でも、土と土を接着する必要に

迫られる場合があります。その他、広い意味で異なる粘土同士を混ぜ合わせる行為や、化粧土を

塗る(刷毛目など)作業、象嵌(ぞうがん)も、土同士の接着と見る事ができます。これらの行為が

成功する場合と失敗する場合がありますが、今回のテーマは、その原因と対策方法を考えたいと

思います。

1) 接着する物同士の乾燥具合によって、接着方法も異なります。

 ① 土同士が十分軟らかい場合。

   軟らかいとは、手や指で容易に変形可能と言う事です。但し「泥々」の状態では有りません。

  ) 代表的なのが、手捻りの紐作りの方法です。

    多くの場合、同じ土を使う事が多いですが、上下で異なる土を使う場合もあります。

    a) 土で紐が作れると言う事は、土は十分軟らかく成っているはずです。

    b) 紐作りには色々な方法がありますが、基本的には、下段の土に同じ太さの新たな土を

     上に載せ背を高くし、より大きな作品を作る時に際に行われます。

    c) 下段の土の上に、土をやや捻り(ねじり)ながら、別の土を押し付けて積み上げます。

     その際、「水やドベ」などは使わず、直接押し当てます。水を使うとむしろ接着し難く

     なる場合があります。注意点は、押し当てた部分に隙間が出ない事や、空気の塊を閉じ

     込めない事です。

    d) 圧着部分に隙間が出来ると、その部分から割れ目や剥がれが起こり易いです。

    e) 繋ぎ目を消します。一般に手の指を使う事が多く、水で濡らした「竹へら」を使う事も

      あります。更に、面積の広い場合は、「コテ」を使う事もあります。

      繋ぎ目を消すには、上下の土を交互に上下と擦り付け、繋ぎ目の横線を消します。

    f) 肉厚が厚く、大きな作品の場合、内側に「コテ」を当て、外から叩き棒で叩き土を

      締める事で、「割れやひび」の発生を抑える事ことも出来ます。

    g) 接着の成功とは、「ひびや割れ」がない事と、水漏れを起こさない事、更に強度的にも

      一体感がある事です。紐作りの場合、紐の跡を消すのが一般的ですが、文様やデザイン

      として、片面のみ紐の跡を残す場合もあります。

  ) マーブル(大理石)模様を作る場合。

    二色以上の粘土を適度に菊練などで練り、糸などで切りその断面を見ると、マーブル模様

    に成っています。練る回数によって、粗い模様から細かい模様まで変化します。

    この板状の土で板皿などを作ります。 又、その模様も一度限りのもので、再度同じ模様を

    作る事は出来ません。

   a) 二色の土は同じ土で、一方には練り込み用の顔料(多くの色が市販されています)を

     添加した色土を使うと上手くいきます。土が異なると、土の収縮率などが微妙に変化

     しますので、境目に「ふびや割れ」が入り易いです。

   b) 二色を練り込む前に、各々の土は十分練っておく必要があり、軟らかさも同じ様にして

    おきます。

  ) (電動)轆轤作業中に土を足す事が可能か?

   a) 一般に轆轤作業中に取れた(ネジ切れた)土は、元の土に接着する事は出来ません。

    多い事例として、轆轤作業に馴れていない方が、土殺し中の「伸べ上げ」の際土をネジ切って

    しまう事があげられます。この場合、同じ軟らかさの土であっても、原則元の土に着ける

    事は出来ません。理由は、元の土も取れた土も表面が水で濡れている為です。この状態で

    力任せに圧着しても、接着面が滑るだけで一体には成りません。

   b) 接着するには、接着面の水分を布等で拭き取る必要があります。

    水分を取り除けば元の土に圧着し、接着させる事ができます。圧着後は普通に土殺しが

    可能です。又、底に残すべき土が少な過ぎ、穴が空きそうな場合、底の水分を布やスポンジ

    で取り除き、団子状の土を底の中央に置き、真上から指で団子を伸ばす様に接着すれば、

    底の肉厚を厚くする事ができます。

   c) 轆轤作業中に胴体など側面に穴が空いた場合、水分を拭取れば、別の土を接着可能ですが

    上手く行きません。なぜなら、圧着した場所は他の場所より肉厚が厚くなり、轆轤が上手く

    挽けない為です。この場合は諦めて最初からやり直すか、轆轤作業を一度中止し、作品を

    若干乾燥させてから、他の土を圧着し補充します。その後轆轤作業を続行します。

   d) 次々に土を足して轆轤を挽く。

    轆轤上の土が残り少なくなった場合、土を更に追加する事があります。その場合、最後の

    作品の底を糸で切って取り上げた状態のままで、その上に土を足します。

    糸の切り跡は濡れていないはずです。即ち接着面に水分が残っていなければ、追加の土を

    くっ付ける事が可能です。

 ② 削れる程度に乾燥している場合。

 ③ 白くなる程度に乾燥している場合。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 157 粘土と粘土の接着法2?

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1) 接着する物同士の乾燥具合によって、接着方法も異なります。(前回の続きです。)

 ① 土同士が十分軟らかい場合。(前回はここまで述べました)

 ② 削れる程度に乾燥している場合。

  タタラ(板状の土)で箱型などの作品を作る際、そのタタラが自立できる程度に乾燥していな

  ければ、組み立てる事が出来ません。又コヒーカップに取っ手を付ける際にも、本体の底削りを

  終えてから行います。即ち、土に別の何かを接着する際、生乾きの状態で行う事が前提になる

  場合が多いです。

  ) 接着する物は、本体と同じ程度に乾燥していなければ成りません。

    乾燥とは、土が収縮する事です。それ故、後から付けた物が本体より乾燥不十分の場合、

    本体より大きく収縮する事に成ります。その為、後から付けた物が本体側に引っ張られ

    亀裂や剥がれを引き起こします。但し、後から付けたものが、寸法的に余裕があり、引っ張

    られても十分対応が出来れば、「亀裂や割れ」は発生しません。

    更に、後から付けた物が、ある程度乾燥していないと、その形の保持が出来ません。

  ) 接着の方法は両方の接着面に、剣先や櫛で細かい刻み(細い凹み線、アヤメ文様が良い)

    を付け、同じ土で作った泥。即ち「ドベ(ヌタとも言います)」を筆などで塗り、接着面を

    擦り合わせる様にし、前記凹み線内に入り込ませてから圧着します。

    その際、接合面より「ドベ」がはみ出す程度に多量に付けます。量が少ないと、しっかり

    接着でず、強度的にも弱くなります。はみ出した「ドベ」は「竹へら」や指で、綺麗に

    拭き取ります。そのままにすると、接合部分が凸凹になる場合もあります。

  ) 一般に接着は余り広い面積を一度に行う事は少ないです。

    広い面同士を接着する方法は、上記と同じですが、接合時に空気が入り易くなりますので、

    注意が必要です。中央から外側に圧を掛けて行くか、一端から接着し徐々に広げる事で、

    空気を押し出して、閉じ込めるのを防ぎます。空気を閉じ込めると、素焼きの際爆発する

    恐れがあります。

  ) カップ類や急須などの取っ手などを接合する場合、取り付け面の土を伸ばしながら一方に

    なすり付け、接合面を滑らかにする事で、見た目を良くし、機械的強度を増す様にする

    場合があります。更に楔(くさび)状態になった部分に細い紐状の土を入れ、楔を解消した

    りします。 即ち楔状の場所は、汚れなどが付き易く、更に狭い為洗い難い形状に成って

    いるのを解消しようとするものです。但し、隙間に入れる粘土の量が多いと、その土が乾燥

    と共に「ひび」が入り易くなりますので、出来るだけ土の量は少量にすつか、余分の土は

    剥ぎ取ります。

  ) 土には記憶性があります。

   a) 取っ手など板や紐状態から変形(曲げる)して形造ると、乾燥と共に元の状態に戻ろうと

     します。即ち変形前に近づきます。それ故、変形後ある程度乾燥させて変形が大きく

     ならない様にしてから、接着します。

   b) 圧縮した部分は、元の状態に戻ろうとして膨らみます。

     接着するとは、土同士を圧縮させて押し付ける行為です。押された土は縮みますが、

     乾燥と共に、元の状態に戻りますので、接合部分が若干膨らみます。

   c) 良く挙られる例は、急須の注ぎ口を接着する際の注意です。

     轆轤の回転方向に捻られて作った(挽いた)注ぎ口は、乾燥と共に捻れが戻る様な働き

     をしますので、その戻りを見越して注ぎ口を取り付けます。

 ③ 白くなる程度に乾燥している場合。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 158 粘土と粘土の接着法3?

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1) 接着する物同士の乾燥具合によって、接着方法も異なります。(前回の続きです。)

 ① 土同士が十分軟らかい場合。

 ② 削れる程度に乾燥している場合。

 ③ 白くなる程度に乾燥している場合。

  ) 陶器の場合、乾燥して白くなった土に、後から土を付け加える事はしません。(磁器では

   行う様です)理由は、後から接着が効かない為です。例えば、「ドベ」を使ったとしても、

   一見成功した様に見えても、素焼き後であっても、少しの衝撃で離れてしまいます。

   又接着面の強度が弱く、例え無事に本焼きまで辿りついても、剥がれる事が多いです。

  ) 素焼き前に「割れやひび」が入った場合、「ドベ」等で補修しても、上手く行かない

   事が多いです。完全に「割れ」て、別体(バラバラ)になった場合の方が処置し易いです。

   単なる「ひび」であった場合、その隙間に「ドベ」を入れる事は難しく、隙間に入った様に

   見えても実はその表面の割れ目に入り、中まで浸透していません。一般には、「割れやひび」

   の入った作品は、焼成せず元の粘土に戻すのが正解です。

  ) どうしても諦め切れない人には、陶芸用の接着材があります。しかし、必ずしも上手く

   とは限りません。特に、本体からぶら下がる様な形状のものは、本焼きで剥がれ落ちる危険性

   が大です。接着する前に、取れた部品を元に組み立てた時に、安定して自立していれば、

   接着も有望です。この段階で不安定の場合は、失敗する確率が大きいです。

 ④ 背の高い作品を作る場合、上部になる物を、途中から継ぎ足す方法があります。

   紐作りの場合は、普通に行われている方法ですが、轆轤作業でも行う事が可能です。

   轆轤作業では、以下の方法があります。

  ) 円筒形に挽いた二つを上下に積み上げる方法。

    一方の円筒には底があり、他は底のない筒にします。当然接合面の径は同じにしておきます

    下になる円筒は、上に載せる円筒の重みに耐える程度に、乾燥していなければ成りません。

    接合面は生乾きの状態で、乾燥度合いによって、そのまま載せる(上部が軽い場合)、

    水を引いてから載せる、更には「ドベ」を付けてから載せるの、三通りの方法があります。

   a) 高さが20cm程度の筒を轆轤で二個挽く事が出来れば、これを縦方向に繋げば、40cm

    の筒になります。但し、土の内径は片手が入る程の大きさが必要です。上に筒を載せてから

    繋ぎ目の内外から濡れた布切れ等を使い、周囲の土を上下させて滑らかに繋ぎ合わせます。

    筒の内径が細い場合には、「柄コテ」を使います。「柄コテ」に布切れを巻き付け、

    水切れが無い様にします。

   b) 背が高くなると、振れ易くなりますので、完全に振れが無くしてから、形作りに入り

    ます。一般には、胴体部分を広げる事が多いです。

  ) 作品の下部と上部を別々に形作り、下部が生乾きの段階で上部を繋ぐ方法。

    大よそですが予め、上下の形が確認できますので、全体のイメージが解かり易いです。

    但し、接合面が肉薄で、径が大きくなり易くなりますので、上記)の方法より慎重に

    作業する必要があります。下部を乾燥させる際、接合面が乾かない様に、濡れた布切れで

    覆い乾燥を防ぎます。

  上記の様に上下の作品を繋ぎ合わせれば、轆轤作業に精通していなくても、軽くて大きな

  作品を作る事ができます。  

2) 異なる性質の土を接着する場合。

以下次回に続きます。

 

素朴な疑問 159 粘土と粘土の接着法4?

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2) 異なる性質の土を接着する場合。

  性質の異なる土同士を接着するのは、「剥がれや割れ、ひび」等の問題が発生する事が多いです。

 ① 土にはその土特有の性質があります。

  例えば、腰の強い土や弱い土、成形し易い土とし難い土、轆轤挽きに適する土と適さない土、

  赤土など色の付いた土と、白い土(顔料を添加して色土が作り易いです)、粒子の粗い物と

  細かい物、水分を吸収し易い土、乾燥の早い土と遅い土、軽い土と重たい土、乾燥時の収縮率の

  大小、焼成(耐火)温度が高い土と低い土、焼き締まり易い土と、焼き締り難い土、などなど、

  数え上げればキリがありません。多くの場合その性質を最良の形で引き出す方法で、作品を制作

  します。

 ② 土同士を接着して模様を着ける方法には、鳴海(なるみ)織部や市松模様に代表される練り込

  みがあります。これらは、土の色の違いによる装飾方法です。

  ) 無難な方法は、同じ粘土を使い、一方に鉄や銅、コバルトなどの金属の顔料を混ぜて

    色土を作ります。二色以上の色土を使う方法もあります。同じ土であれば、収縮率などの

    差が無い為、「ひびや割れ」が起き難い為です。

  ) 又、同じ産地の色違いの土を使う場合があります。

    顔料を入れた色土は、人工的でやや不自然な感じがします。そこで自然の色土を使うと、

    違和感の無い調和の取れた色使いになります。その際、同じ産地の土を使えば類似した

    性質になりますので、「ひびや割れ」の危険も少なくなります。例えば信楽の白土と赤土

    などです。他にも、同じ産地だありながら、色の違いのある土も意外と多いです。

  ) 鳴海織部は板状にした白土と赤土を、平面で繋ぎ合わせてから作品に形造ります。

    形造る際には、型などを使う事がありますので、さほど難しくはありませんが、土同士を

    繋ぎ合わせる際、注意が必要です。

   a) 接着面の広さが広い程、機械的強度が強くなります。広さとは長さと厚みです。

     即ち細かい模様の程、接着面は小さくなります。例えば「矢羽文」や「鶉(うずら)文」

     などの練り込み模様では、細かい文様になります。

     又、接着面が直線より曲線の方が、より多くの糊代(のりしろ)が取れますので、しっか

     り接着できます。

   b) 接着面には「ドベ又は水」を使って接着します。

     一般に「ドベ」を使う時には、接着面に細かい刻みを着けますが、練り込み等では刻みを

     付ける事が出来ません。即ち刻みを付けると、異なる色の境に小さな傷が出来、表面まで

     浮かび上がる為、シャープな境目がでません。尚「ドベ」は素地の色又は色土の色のどち

     らかに統一して使います。見た目以上に「ドベ」が幅広に見える場合もあります。

   c) 接合面の強さは、両側からからの押し圧の強さに掛ります。

     市松模様の際、色土のブロックを交互に積み上げてから、板状にスライスします。

     接合面に刷毛で水を引いってから、ブロックを重ね合わせます。

     接合面をより強固に密着させる為には、ブロックの状態で板などで叩き締めたり、万力

     等でしっかり締めます。

   d) 接着した状態で、数日寝かせると、より強固に接着できます。

     その際、全体が乾燥しない様に、ビニール等で包む事です。

  ) 接合面が剥がれる方向に土を伸ばさない様にして、形造りします。

    板状の土を型に押し当てて作品を作る場合でも、型の外側を使うより、内側を使った方が、

    より安全です。即ち、型の外側を使う事は土が伸び易くなります。逆に内側を使う事は、

    土を圧縮しながら形を造る事になりますので、剥がれる危険は少ないです。

4) 化粧土を素地に塗るのも、土と土との接着と見なす事も出来ます。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 160 粘土と粘土の接着法5?

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4) 化粧土を素地に塗るのも、土と土との接着と見なす事も出来ます。

  化粧土(スリップ又はエンゴーベ)は、明らかに素地とは性質の異なる土です。

  即ち、色の悪い土(主に赤土)に白いお化粧を施す事や、肌荒などをカバーし綺麗に見せる事が

  主目的でしたので、滑らかで純白の上品な土である事が条件でした。しかし、近年は白一色

  でなく、逆に黒い色など各種の化粧土を作る事もでき、市販もされています。これらは単に

  素地の悪い処を隠すと言うよりも、むしろ装飾の一部として、積極的に使用されています。

  ① 化粧土と素地は必ずしも相性が良い訳ではありません。

   良く起こる問題は、素地との密着性の悪さで、「剥がれ」の問題を起こります。

   又、素地と化粧土の水分の含有量の違いにより、「粉引き」の際に、素地を崩壊する事も

   あります。

  ② 化粧土を使った装飾技法は、多く存在しています。

   例えば、刷毛目、櫛目、三島、掻き落とし、イッチン(スポイト掛け)、指描き、粉引き、

   飛鉋(とびカンナ)等は鉄分の多い素地と化粧土の色の対比による装飾方法で、古典的技法か

   も知れません。現代では素地との対比の他に、各種の化粧土を使い、化粧土同士による文様

   など、より積極的に装飾技法として取り入れられています。

  ③ 白化粧土の成分。(主に生乾き用です。)

   ) カオリンを単味で使う。(高温用)

   ) カオリンに長石を10~20%を加える。(長石は熔融剤として働きます)

   ) 長石に藁(わら)灰を20%を加える。

   ) 蝋石(ろうせき)に蛙目粘土を20~30%を加える。等があります。

  ④ 半(生)乾燥用の化粧土と、素焼き後の化粧土の成分。

    化粧掛けの諸々の問題を無くす為、素焼き後に使う事もありますが、その成分に違いが

    あります。以下は化粧掛け後SK-3~SK-8(1250℃)程度で焼成する場合の調合例です。

   ) 一般に、半乾燥時の状態で使う事が多いです。

     上記③の他、以下の例もありまし。

     カオリン:55~65%、長石:5~30%、石英:0~30%、可塑性粘土:10%、炭酸ソーダ:1%

   ) 素焼き後に施す化粧土。

     カオリン:15~25%、長石:15~55%、石英:15~50%、可塑性粘土:10%、炭酸ソーダ:1%     

  ⑤ 色化粧土の顔料。 白化粧土に以下の顔料を添加する。

    青色: 酸化コバルト  2%(明るい色)~10%(暗い色)

    緑色: 酸化クロム   5%(明るい色)~20%(暗い色)

    褐色: 二酸化マンガン 5%(明るい色)~20%(暗い色)

    黄色: 酸化ウラン   5%(明るい色)~10%(暗い色)

    灰色: 酸化ニッケル  2%(明るい色)~10%(暗い色)

    赤色、ピンク: 酸化鉄 2%(明るい色)~10%(暗い色)

   顔料は微粉末の状態で、添加します。

  ・ 市販の化粧土。

    陶芸材料店では、「白絵土」として市販されています。主に生掛け用です。

    素焼き後に使用する化粧土も市販されています。  

  ⑥ 化粧土が素地から剥離する原因は色々ありますが、多くは密着性と収縮率の問題になります。

    化粧土は色土の一種ですが、練り込み文様に使う色土とは、水分の含有量に大きな開きが

    あります。化粧土は土と言うより、水分が多い「泥」状態の物です。

   ) 水分量が多い事は、乾燥で大きく収縮する事を意味します。例え、収縮しても、素地

    表面の形状に追従できれば、「剥がれやひび」は入りません。

   ) 化粧土を塗る面積が広い程、「剥がれやひび」が発生し易いです。

    イッチン(スポイト掛け)の様に、線状に化粧土を塗る場合には、比較的安全です。

   ) 化粧土が濃く厚く掛ける程、「剥がれ」等の問題が発生し易いです。

    多くの場合、刷毛目の方法が取られますが、これは薄く塗る方法です。

    粉引きは、濃い目の化粧土の中に作品を漬けますので、問題が起こり易いです。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 161 粘土と粘土の接着法6?

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5) 化粧土を安全に掛けるには?

 ① 化粧掛けを行うタイミングが重要です。

   化粧土が剥がれるのは、素地の水分量が大きく影響します。水分量は乾燥度具合の事です。

  ) 素地が乾燥し過ぎる場合、化粧土は剥がれ易くなり、縮れを起こします。

  ) 素地の乾燥が不十分な(水分量が多い)時、化粧土に含まれる水分が素地に吸収され

    ない為、素地に密着できずに、剥がれ落ちます。

  ) 粉引き(こひき)では、化粧土の水分が多量に素地に吸い込まれ、素地を膨張させて

    その結果、素地を破壊する事もあります。

  ) 化粧掛けのグットタイミングは、作品が手に持てる程度に乾燥した状態の時です。

    一般には、底削りの終わった直後になります。作品の表面に水分も無く、光沢も無い状態の

    時です。

 ②  化粧掛けに強い作品の形状と、弱い形状の物があります。

  ) 口径が胴体や腰の径と同じ位の作品は、粉引き作業でも、壊れる事は少ない様です。

    即ち、口径が外側に膨らむ量が他の場所と同程度ですので、形を保持できますので、壊れ

    難くなります。

  ) 口径が腰又は底径よりも広い皿等は、化粧土の水分が素地に吸収され、柔らかくなります

    ので、口縁を保持できなくなり、亀裂が入り易いです。この様な場合の処置として、

   a) やや強めに乾燥させます。即ち、天日干します。但し、白くなるまで乾かすのは厳禁です。

     乾き過ぎると、水分の吸収量が多くなり、更に表面から溶け始めます。

   b) 一度に掛けずに、二段階に分けて化粧土を掛ける。

    皿の様に壊れ易い場合、内側に掛けて一晩置いて乾かしてから、反対側に化粧土を掛けると

    危険性は少なくなります。

  ) 土の締り(密度が濃くなる事)の弱い土は、化粧掛けで壊れる確率が大きいです。

    手捻りや轆轤で作った作品では、しっかり土が締まっていない時は、失敗する確率が大きい

    です。特に肉厚の場合、一見丈夫そうに見えますが、中心近くまで締まり切らない場合が

    多いですので、しっかり土を締める事です。尚、土を締める方法として、掌(てのひら)で

    叩く(面積が狭い場合)、拳(こぶし)で叩く(大皿や壷の底)、叩き棒、板で叩く(タタラ)

    等の他、(電動)轆轤では土を両手の指で薄く伸ばす際や、口縁を押さえたり、皮で拭い

    たりして締めます。

 ③ 素地との密着度を強くする。

  ) 素地の一部を化粧土に添加する。

    素地と化粧土の性質が大きく異なる場合には、「剥がれ」などが発生し易いです。

    化粧土に素地と同じ土を少量混ぜる事で、少しでも性質が似る様にするのも一つの方法です。

    但し、混ぜる事で、化粧土の色が変化する場合もあります。

  ) 密着度を上げる一般的な方法は、化粧土にCMC(科学のり)などの接着剤を添加する事

    です。加える量は少量です。

  ) 市販の「白絵土」のみでは、収縮率が大きいので、剥離する場合には、粘着性を持たせる

    為、蛙目粘土を2~3割添加します。

 ④ 化粧土は厚めに掛けた方が綺麗です。

  良く行う刷毛目は、刷毛の通った跡の筋状の文様と、その筋を透して素地の色が見える事です。

  その為、薄めの化粧土を使うか、刷毛を早く動かし塗る量を少なくします。

  但し、掻き落とし飛鉋(カンナ)の場合は、化粧土の厚みよりも、化粧土が作品全体にむらなく

  塗る事を心掛ける様にします。

以上にて「土と土の接着」の話を終わります。

素朴な疑問 162 焼き物の景色とは1?

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焼き物の世界で、作品の鑑賞(又は観賞)の際、「景色」と言う言葉を聴いた事があると思います。

又、ご自分で作った作品が出来上がった際に、良い景色が有ると嬉しい物で、一段と作品の見栄えも

良くなります。焼き物で言う「景色(けしき)」は日常で使う景色とは、若干異なります。

日常的には、風光明媚な観光地などで、広々として遠くまで見渡せる展望の開けた場所や、島々が

点在し、砂浜や奇岩が連なった場所、川や滝、広い草原や断崖絶壁な場所などは、安全な場所から

眺める事が出来れば、「景色が良い所だ」と言います。

焼き物の世界では、作品の表面に現れた、通常とは異なる模様や色、形などの変化を言います。

但し、風景が万人に認められるのに反し、焼き物の「景色」は必ずしも、万人向けではありません。

人によっては、完全な失敗作とみなす場合もあります。焼き物には焼き損じたり、ひびや割れ、

ひっつき等が起こる事は、稀ではありません。素焼きをしない昔では特に多い傾向にあります。

それらの中から「景色」の美を見出したのは、我が国の茶人と言われています。

日本独特の「美」と言われ「景色」は、外国では通用しない「美的感覚」とも言われています。

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

1) 「景色」を鑑賞(観賞)の対象とみなした始まり。

  焼き物の本家である中国では、人工的に作られ、精緻(せいち)で完璧な物が賞賛されています

  それ故、歪(いびつ)な物や、偶然窯の中で発生した「窯変」と呼ばれる通常とは異なる色や

  色斑(いろむら)に価値を置く事はありませんでした。

 ① 最初に「焼き損じた」色や形の「不揃いや歪み」の「美」を見出したのは、室町時代の茶道の

  開祖と言われる村田珠光(じゅこう)と言われています。

  彼が好んだと言われる「珠光天目」(灰被=はいかつぎ天目)茶碗は、均一に黒く焼き上がらず

  斑(むら)になり、色もくすみ一見すると、焼き損じた失敗作に見える作品との事です。

  しかし、釉の色の変化や茶が映える渋い色合いは、茶人にとっては、趣深く見飽きない茶碗と

  成っています。この作品は偶然に出来上がった物で、むしろ失敗作とみなしても良い程の物で、

  何らかのアクシデントによって焼き上がったと考えられています。

  この村田珠光による「景色」の鑑賞方法が、特に茶人の間で持てはやされ、やがて、焼き物

  全体の鑑賞方法と伝わる事に成ります。後世に成ると偶然性の珍重される「景色」が、意図的に

  (人工的)に行われる様になります。

2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ① 作品の成形過程で起こる「景色」。

  尚 成形過程とは、単に成形時のみでなく、施釉時、窯詰め時の過程を含みます。

  又、意図的に着けた痕(あと)なども含みます。

  ) 指跡: 制作途中の土が軟らかい時に、不用意に作品を持つ時に、指の跡が付きます。

    又、施釉の際、作品の腰又は高台付近を、鷲掴みで持ち釉の中に漬ける事で指跡がつきます

    多くの場合、指跡を消しますが、あえて残し「景色」とする場合があります。

  ) 目跡(めあと): 古い時代には、効率良く多量に窯詰めする為に、作品を重ね焼きを

    行う事が普通に行われていました。その為、大振りの作品の内側の底に、小さな土の塊を

    数個置き、その中に小振りの作品を載せて焼成しました。即ち、作品同士のくっつきを防止

    する働きです。この塊は、窯出し後に取り除く事に成りますが、目を立てた部分は跡と

    成って残ります。当然ですが、小振りの器の高台部分にも残る事になります。

    一般的には、目跡は「傷」ですので、歓迎される物ではありませんが、これを「景色」と

    して見立てたのも、茶人の「美意識」の表れです。

  ) 石ハゼ: 作品の表面に小石が飛び出た状態。

    素地に小石等の異物が混入した状態で、轆轤挽きした結果の産物です。

    轆轤挽き直後では、表面上に露出していない場合でも、焼成により素地が収縮し表面に

    露出する場合もあります。小石の周囲に小さな「ひび」が入っている事が多いです。

    これも、異物混入ですので、本来は失敗作ですが、「景色」として鑑賞(観賞)の対象に

    成っています。近年では、むしろ積極的に小石(ハゼ石として市販されています。)を

    混入させて、壷などを作る事も多いです。但し、食器などに多量に混入させると、使用勝手

    が悪くなりますので注意が必要です。(小石が手に当たって痛いなど)

   ) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?

以下次回に続きます。
 

素朴な疑問 163 焼き物の景色とは2?

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2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ① 作品の成形過程で起こる「景色」。(前回の続きです。)

  ) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?

   主に筒状(袋物)の作品の胴体部分に、竹箆を用いて垂直や斜め線をやや長めに入れる行為

   です。力加減によっては、適度に凹ませ、作品の形と歪み(ゆがみ)の程度が調整できます。

   多くは、側面を切り取るよりも水を付けた竹箆で、内側に力を加えて押し込み撫でる様にして

   跡を付けます。力を入れて一気に行うと、勢いのある線や面になります。

   綺麗に出来ている作品をあえて歪ませ、傷を付ける行為をするのは、陶工の遊び心や悪戯心

   (いたずらごころ)かもしれません。最初は売り物としない作品に、手に持つ箆を押し当て

   傷を付けた処、表情が変わり良く見えたかも知れません。又、たまたまその物を見た人がその

   良さに気が付いたのかも知れません。いずれにしても、この行為が一種の装飾とみなされ、

   「景色」として取り入れられたのではないでしょうか。

   一見無謀の様に見える行為ですが、見方によっては、形全体に動きが出て、軽やかさのある

   作品に生まれ替わります。

  ) 縮緬皺(ちりめんじわ): 砂混じりの素地に場合、削り作業で土が細かく「ささくれ」

   状態になる現象です。あえて綺麗にせず、施釉もせずに、一種の「景色」として鑑賞(観賞)

   します。主に抹茶々碗の高台内に見られます。

 ② 作品の焼成過程で起こる「景色」。

  中世の窖窯(あながま)では、薪を使って無釉の焼締陶器が多く焼かれていました。

  直接強い炎に晒され、燃料の薪の灰が降り注ぎ、変化に富んだ「景色」のある作品が多量に

  作られる事になります。尚、現在でも窖窯で焼成され、人気の作品が作り続けられています。

  ) 窯疵(かまきず)、山割れ : 高温に晒され作品の一部に、亀裂や割れが発生する

   場合があります。 一般にこの様な作品は、失敗作ですので、廃棄処分となります。

   しかし、自然釉であるビードロ釉の美しさ、降り物(薪の灰が降り注いだ物)の見事さ、

   味のある「焦げ(こげ)」など、見所(景色)満載の作品は、廃棄処分する事無く、むしろ

   珍重され、大切にされています。

   特に著名な作品は、伊賀耳付水指 銘「破袋」(16世紀、五島美術館蔵、重文)があります。

  ) ひっつき: 施釉陶器でも無釉の陶器であっても、高温に晒された作品は、素地又は釉は

   軟らかくなります。窯の中で不安定に置かれた作品が、何らかの理由で隣同士の作品や、

   窯道具等と接触した場合「くっついた状態で」窯出しが行われます。

   この場合、両方とも廃棄処分にしますが、一方を助ける事があり、他方は壊す事になります。

   但し、残った作品にも、「くっついた」跡が完全に取り除く事が出来ず残ります。

   多くの場合「くっついた」部分は凸状に膨らみ、「景色」と見る事ができます。

   「くっついた」部分をどの様に処理するかも、制作者の腕の見せ所となります。

  ) 火ぶくれ(せんべい): 煎餅(せんべい)の様に、表面の一部が膨らむ現象です。

    原因は、耐火温度の低い素地(赤土など)が必要以上に高温になった場合。更に、素地に

    有機物や小さな気泡等が入っている時は、ガスが発生し表面の一部が膨らみます。 

    特に、見所「景色」がある場合のみ助ける事に成りますが、作品のどの部分が膨らむかに

    よって、使い物に成らなくなる可能性もあり、廃棄処分になる物が多いです。  

  ) 火表と火裏 : 炎が直接当たる処が火表になり、その反対側が火裏になります。

    火表は高温に成りますので、釉が流れ易くなったり、降り掛かった灰が良く熔けます。

    火裏では、若干温度が低くなりますので、釉や灰の熔け方が弱くなります。その結果一つの

    作品でも、裏表で表情の変化が見られる事になります。この違いが「景色」として見所の

    一つになります。その他、火表側が還元に火裏が酸化焼成になり易い窯の雰囲気であれば、

    釉の色も裏表では違いが出易いですので、この場合にも「景色」が出来る事になります。    

  ) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。

    現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 164 焼き物の景色とは3?

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2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ② 作品の焼成過程で起こる「景色」。(前回の続きです)

  ) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。

    現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。

    以下の窯変は主に無釉の陶器である、備前焼に現れる窯変です。

   a) 牡丹餅: 作品を重ね焼きし、効率的に窯を利用する事で得られた結果の「景色」です。

     大きな器などの作品の上に、直に作品を重ね焼きした物で、重なった部分に炎や灰が

     掛からない結果出来た「景色」です。上に置いた器の跡が素地のまま、丸い牡丹餅

    (ぼたもち)風になりなります。

   b) 黄胡麻、青胡麻、カセ胡麻(ごま): 燃料である松の灰が高温で熔け、自然釉となった

     物を胡麻と言います。窯の構造や年代によって発色に違いがあります。江戸時代以降は

     黄胡麻、それ以前は青胡麻が多い様です。現在では、人為的に松灰を振り掛ける事で、

     出現させる事が可能に成っています。

   ・ カセ胡麻: 飛んだ小粒の灰が完全に熔けず、粒粒の状態のまま残った状態です

   c) サンギリ: 窯の中で灰で埋もれた場所で起こる現象です。

     即ち還元焼成の為、肌が赤くならず、暗灰色を呈します。

   ・ 榎肌(えのきはだ): サンギリよりも更に温度が低く、積もった灰が黒色や灰色の粒粒

     で、あたかも榎の樹肌の如く様相を呈した物です。

   d) 火襷(ひだすき): 白又は薄茶色の素地に、濃い赤色の線が生じた物です。

     本来は、重ね焼きした際、作品同士がくっつくのを防ぐ目的で、作品に藁(わら)を

     巻いて窯詰めした結果です。藁の跡が赤色に残ります。

  ) 信楽焼きの窯変

   a) 釉垂れ: 松灰による自然釉が熔けて流れ出し状態で、透明度の高い緑色になった物を

     特にビードロと呼んでいます。最も綺麗な窯変とも言われています。

   b) 釉溜り(くすりだまり): 釉が熔けて流れながらも、下まで落ちる事なく、途中で

    滴(しずく)の様に留まった状態の物です。

   c) 灰被り(はいかぶり): 窯の温度が低い為、完全に熔けていない松灰が降り掛かった

    状態です。灰は多くの場合白色になります。

   d) 抜け: 高温の炎が直接当たった部分は赤色になります。しかし直接炎が当たらない場合

    や、他の作品の陰に成った部分は白色になります。同じ作品でありながら、隣同士で赤と白

    の模様になった窯変を「抜け」と言います。     

  ) その他の窯変。

   a) 国宝の曜変天目茶碗(稲葉など4点)も窯変と言えるかも知れません。 

    曜変は元々窯変と書かれた物との事ですので、窯変の一種です。

   b) 楽焼きにも窯変の作品が多いです。

    ・ 国宝 楽茶碗 銘「不二山」光悦作 江戸時代

    ・ 重文 楽茶碗 銘「雨曇(あもぐも)」 光悦作 江戸時代

    ・ 楽茶碗 銘「是色(ぜしき)」 道入作

    これらは釉の色が場所により異なり、「景色」と成っています。 

    上記以外に多数存在します。

  ) その他の「景色」。

   a) 梅華皮(かいらぎ): 釉が縮れて粒状になった物です。

    特に高台付近(高台脇)の釉が縮れ、細かい露がびっしり付いた状態です。

   b) 御本(ごほん): 作品の表面の所々に、白ぽいい肌に赤い(又はピンク)斑点が現れる

    現象です。斑点は略円形で5~30mm 程度の物が多いです。器の内外にでます。

    更にその出現も色々なパターンが存在します。土の成分と焼き方によって異なると思われ

    ます。素地に薄い白化粧を施したり、透明系の釉を掛け、還元気味の焼成で出現すると

    言われていますが、不確実性が高いです。

    器の内側に大きな御本が一つある物、細かい粒子状の御本が密集している物、淡い色の御本、

    濃淡のある御本、その他表情は諸々です。

 ③ 使用中に起こる「景色」。

以下次回に続きます。


素朴な疑問 165 焼き物の景色とは4?

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2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ③ 使用中に起こる「景色」。(前回の続きです)

   完成した作品を使っていると、事件や事故、経年変化などにより、色々な現象が起こります。

   これを逆手にとって「景色」として認める事もあります。

  ) 萩の七化け。

    萩焼きは毛利家の藩窯として、桃山時代に開窯しました。主に茶陶を作っています。

    茶碗、水指、花入などの他、茶の湯の懐石料理の食器として、各種の「向付」や「酒器」が

    多く作られています。萩焼の焼き物は、使用するに従い、味わい深い表情を表す様になります

   a) 貫入(かんにゅう)による「景色」。

    ・ 萩焼きの代表的な土は、防府市大道(だいどう)産の大道土が使われています。

     小砂混じりの白い粘土で「ざんぐり」した柔らかい土です。その為やや焼き締まりが弱く

     柔らかい焼き上がりと成っています。

    ・ 釉は長石に土灰や藁(わら)灰を混ぜた物が基本に成っています。その為、透明又は

     白っぽい釉肌になります。

    ・ 素地に塗る化粧土や釉の掛け具合によって、白萩や強い赤味のある赤萩手になります。

    ・ 焼成時に素地と釉の収縮率の違いで、貫入(小さなひび)が入り易いです。

     この「ひび」に茶渋などの汚れが付くと、より貫入は浮き出てき、趣ある「景色」となります。

     特に湯飲み茶碗などに多く見られます。

   b) 雨漏りによる「景色」。

    萩焼は素地の焼き締まりが弱い為、内側に入れたお茶や酒などが長い年月を経て徐々に

    表面に滲み出る事もあります。悪く言えば「汚れ」が付く事になります。全体に滲み出る

    訳ではなく、部分的に現れますので、作品によって染み出す模様も変化します。

    特に、抹茶々碗や向付などに多いです。勿論、汚れですので、嫌う人もいます。

  ) 割れや「ひび」の入った作品を補修する事で、「景色」が出来る場合があります。

    使用中に割れや大きな「ひび」の入った焼き物は、廃棄処分になります。但し、著名な

    焼き物や、二度と手に入らないと思われる焼き物は、補修(修理)して生き返らせる事が

    あります。この補修の仕方によっては、むしろ補修前よりも良くなる場合があります。

    焼き物が割れた場合、漆(うるし)を用いて接着します。漆のみで接着が済む場合も多い

    ですが、更に他の材料で補強する物も多いです。

   a) 重文 銘「馬蝗絆(ばこうはん)」茶碗、中国(南宋時代) 東京博物館蔵。

    砧(きぬた)青磁の極上の名品です。高台周りに「ひび」があり、接着後更に鉄製の鎹

   (かすがい)で数箇所留めてあります。この鎹が大きなバッタ(馬蝗)に見える事からこの

    銘があります。この「留め金具」が大切な「景色」と成っています。

    尚、この作品には次の様な逸話が残っています。

    平安時代の平重盛が、中国の宋の育王山に黄金を寄進した返礼に、住持仏照禅師からこの

    茶碗が送られてきます。後世、足利義政公の所持になりますが、「ひび割れ」を起こした

    ので、中国に送り返し、同様の物と交換を依頼しますが、「もはや、この様な名器は得る

    事ができず、鎹を打って送り返された」との事です。

    尚鎹とは「コの字」型になった釘で、木材同士を繋げる働きをします。

   b) 金継ぎ(きんつぎ)

    漆で補修した部分に金粉を振掛け、「割れやひび」の跡を隠すと共に、金で補修した筋又は

    帯状の金線が「景色」となり、補修前より良く見える場合があります。

    尚、金粉は高価ですので、真鍮(しんちゅう)の粉等を使う事もあります。

    こんな笑い話もあります。金継を補修しょうとして、取り除いた処、作品に「割れやひび」が

    なかったとの事です。わざと金継ぎを行う事で、新たな「景色」を作り出す事で価値ある

    物にする目的かも知れません。

   ・ 著名な金継ぎの作品。 重文 楽茶碗 銘「雪峰(せっぽう)」光悦作 畠山美術館蔵。

  )その他   

   a) 火間(ひま)のある「景色」

    火間とは、化粧土を柄杓で流し掛けした際、意図的に掛け残す方法で、主に楔(くさび)型

    こ残します。これが「景色」になります。 上手の粉引(こひき)では、一つの約束事に

    成っています。

   ・ 著名な火間のある茶碗: 粉引茶碗 銘「三好(みよし)」朝鮮 

   b) わざと口縁を欠き、「景色」を作る。古色付けによる「景色」

    意図的に「景色」を作り出す、一つの方法です。完全な形のものより、不完全な形の方が

    趣ある作品になる事もあります。焼成した物を歪ませる事は出来ませんが、部分的に破壊

    する事は可能です。又、古い時代のものに見せ、掘り出し物の様な感じにする事もあります。

    又、人為的に古色を付け「景色」を作り出している作品もあります。いずれも、偽者で偽作

    ですので、騙されない様に注意する事です。

以上で「景色」の話を終わります。  

素朴な疑問 166 大きな作品はなぜ難しいか1?

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当然の事ですが、焼き物(陶芸)の作品は、大きいから価値がある訳では有りません。

使い勝手の良い物は、その用途によって適度の大きさがあります。大きな物は展示用などの他、

大勢人が集まった会場や食事、葬儀の花瓶など、特別な場所や特別の時に使われる場合が多いです

それ故大きな作品は使う機会も少なく、作る事も少なくなり勝ちです。しかし、大きな作品を作る

事は、今まで行ってきたやり方では通用しない場合も多いです。

技術力をアップさせたいと思っていたならば、是非大きな作品に挑戦してください。

小物ならば、どうにか処理できる事でも、大物になると狂いが出たり、割れが発生したりする他、

焼成でも失敗する事が多く、小手先では対応できなくなる事があります。

但し、焼く窯があるのが前提で、自分で大きな窯が無い場合には、どなたかに依頼する事になります。

又、窯に収まる範囲の大きさしか作る事が出来ませんから、注意が必要です。

1) 大きな作品は、横方向もそれなりの困難がありますが、縦(高さ)方向に背の高い作品の方が

  より難しくなります。即ち上に乗る重量が大きくなる為、それに耐える強さが必要に成るから

  です。又、作品の狂いも発生し易くなります。

  尚、展示用の大壷などでは、高さが50cm以下が多いです。 大皿なども直径60cm以下が

  多く見受けられます。それ故、ここではこの大きさを一つの目安として考えたいと思います。

2) 大きな作品はどの様に作るか?

 ① 手捻りで作る場合、特に形に拘りなく、大きな作品を作る事が出来ます。

  a) 多くの場合、土を継ぎ足す事で大きな作品に仕上げます。但し、重量の大きい作品は、

   上部の重みに耐える様にする必要があり、その為、肉薄に作る事は難しく肉厚に成り易いです

   又、全体を軽くする為に、強度に関係しない場所はなるべく肉抜きを行います。

   肉抜きの方法は、透彫を施したり、壁の厚みを薄くします。場合によっては筋状の補強(リブ)

   を施し、その周囲を肉抜きします。但し、窯の中や、焼き上がった後でも、安定して置ける

   事が条件になります。高さや台座(底径)のみでなく、左右のバランスを保つ事も大切です。

  b) 部分的に作ってから、各部分を組み立てて大きな作品にする事もあります。

   全体の構想がしっかりし、図面化されていれば、各部品をバラバラに作っても、全体の構想を

   損なう事は少ないです。短期間に仕上げるには向いている方法です。

  c) 下(又は上)部から順番に作り上げる方法もあります。一般的な方法です。

   下部をある程度乾燥させ、その上に土を載せても崩れないと判断できれば、その上に土を

    載せて形を作ります。土の強度を持たせる為、叩き棒で表面を叩き土を締めます。

  d) 全体を作り上げてから、分割して窯に入れる方法があります。

    陶壁と呼ばれる作品は、全体を作り終えた後、各部分を切断する方法が取れられます。

    一塊の状態の方が、全体の形を把握し易い為です。但し、素地が乾燥し過ぎると切断し難く

    なり、もろくなり、壊れ易くなりますので、注意が必要です。

 ② (電動)轆轤で作る場合、ある程度形は限定されます。

  a) 代表的なのが、大皿、大鉢、壷、甕(かめ)、花瓶類で円形を基本とした作品になります。

   轆轤で作る場合、一塊の土から一気に作品に仕上げる方法と、土を後から継ぎ足す方法と、

   土を分割し別々に作り、繋ぎ合わせる方法などがあります。当然一気に挽き上げる方法では、

   大きさに限度があります。

  b) 轆轤作業では、使用する粘土の量により、作品の大きさは大きくなりますが、ある一定量以上

   になると、作品を高く大きく出来なくなります。その高さはその人の技量によります。

 ③ 手捻りと轆轤を組み合わせて作品を作る方法。

  a) 一般に、大きな作品を作る時に使われる方法です。但し、最終的には、轆轤作業ですので、

   作られる作品は上記②と同じ事になる場合が多いです。

  b) 土の種類によっては、轆轤で十分土を伸ばす事が困難な物もあります。その際、紐作りの

   方法で土を巻き上げてから、轆轤挽きして成形します。

以下次回に続きます。

素朴な疑問 167 大きな作品はなぜ難しいか2?

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3) 焼き物は縮む。

 焼き物の特徴の一つに、乾燥時や焼成時に縮むという事が上げられます。

 縮む事で、素地の化学的性質が変わり、密度も増し機械的強度が強くなるのですが、この性質が

 ある為に、作品が歪んだり、「割れやひび」等のトラブルが発生します。

 ① 縮む割合は土の種類にもよりますが、市販されている素地では、概ね(おおむね)12~13%

  程度です。縮む方向は縦、横、奥行きの3方向で、ほぼ同じ割合に成ります。実際には背の高い

  作品は上下に圧縮されますので、高さ方向に若干大きく縮む傾向にあります。

 ② 注意する事は割合ですので、小さな作品ではほとんど無視しても良い程ですので、余り関係

  ありませんが、大きな作品に成るに従い、縮む量は格段に大きくなります。

  例えば、高さ30cmの壷などを作る際には、制作時には約35cm程度の高さの作品を作らな

  ければ成らりません。 即ち、乾燥と焼成で、35cmX0.13= 4.55cm縮む事に

  なります。実際には底に糸を入れて切り離した際、1mm程度の土が採り残されます。

  更に、底削りがありますので、高さ方向に1~2mmのロスが生じます。それ故、4.7~4.8mm

  程度低くなりますので、ほぼ35cmに作る必要があります。

 ③ 大皿など平たい場合。直径60cmの作品を完成させる為には、上記と同様に、直径68cm

  以上の大きさに造る必要があります。

4) 素地(粘土など)が可塑性を有するのは、ある程度水分を含んでいる間だけです。

 ① 素地は乾燥度が上がるに連れて、機械的強度は増しますので、大きな作品を作る時には、

  硬めの素地を使います。完全に乾燥している素地に比べ、圧倒的に強度は低いです。それ故、

  一塊の素地に可塑性を持たせながら、作品を完成させるには、自ずから大きさに限界があります

 ② 壷など背の高い作品を作る方法には、轆轤挽きであっても、数種類の方法があります。

  一番一般的には、土を筒状態に高く薄く伸ばしてから、形造りに入ります。いかに土を上に

  薄く伸ばせるかによって、作品の大きさが異なります。

  ) 1kgの粘土で、片腕が入る程度の内径の筒を轆轤で引き上げる際、最初の関門は20cm

    と言われています。練習を積むに従い15、17、18、19cmと次第に高くなりますが、20cm

    の壁を超えるのは容易ではありません。熟練した人であれば、更に21~25cm程度まで

    伸ばせると言われています。当然伸び易い土を使った場合です。

  ) 手や腕が入らない程度に細い筒であれば、1kgの土で約30cm程度まで伸ばす事が

    できます。

  ) 粘土の量を増やすに従い、筒の高さも増しますが、土の量が二倍に成っても、高さは

    二倍どころか1.3~1.5倍の高さに成れば上々です。増えた土は底周辺の壁の肉厚と成って

    しまいます。同様に三倍の土を使っても、伸び代はどんどん少なくなっていきます。

5) 形造り(直径を広げる)に入ると、高さはどんどん低くなります。

 ① 折角高く上に伸ばした土も、直径を大きくするに従い、背の高さは見る見る低くなって行き

  ます。但し、壁の肉厚はほとんど変化しません。(必ずしも薄くなる訳ではありません)

 ② 低くなる割合は、作品の形状によって大きく異なります。

  即ち、口縁のみを広げ、擂鉢(すりばち)状にするよりも、胴や底近辺の径を広げる時には、

  ことに高さは低くなります。ある程度技術を積んだ方には、どの位低くなるかは、大よその

  見当が付きます。

6) 持ち堪える事の出来る形状にする。

以下次回に続きます。
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