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騙しのテクニック7 二度焼き 1

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4) 二度焼(二度窯、再焼成)に付いて。

  真贋には、全くの贋作と見られる物以外に、半真半贋とも言える作品も存在します。

  即ち、本物を素材にして、まるで本物の様に見せ掛ける技法です。

  半真半贋には、二度焼きの技法と、後絵の技法があります。

 ? 二度焼きとは。

   商品価値の低い作品を再度高温で焼成する事で、欠点(都合の悪い所)を補修し、商品価値を

   高める為に行います。

   素材と成るのは、発掘品が多いです。二度焼きは全て良い方向になる訳ではありません。

   再焼成中に、窯の中で爆発したり、素地中の気泡や水分が膨張し、表面を凸凹させる危険性を

   含んでいます。 しかし、二度焼きは、近年特に多く行われていると言われています。

 ? 二度焼きの目的。

  ?) 古陶は前回お話した様に、経年変化により表面が風化し「ガサガサ」とカセた状態に

   成ます。特に長い間地中に埋没していた、発掘品に出る現象です。

   又、釉面が白濁し下絵が不鮮明になったり、褪色(たいしょく)し見栄えも悪くなるのが

   普通です。これらの焼き物は、当然商品価値も低くなります。

   この様な場合、もう一度窯に入れて焼成する事で、釉を熔かし光沢を増す事ができます。

  ?) 釉を再度熔かす事で、透明感を増し、染付けなどの下絵も鮮やかに蘇らせる事も可能に

   成ります。

  ?) 二度焼きする事で、傷やニュウ(ひび)を目立たなくさせます。

   但し、再焼成する事で、傷やニユウが拡大する恐れも多いです。

  ?) 新たな贋作より、本物に近い為、本物に見せる事が可能に成ります。

   即ち、胎土や土見部は本物ですし、造形や釉も真作その物ですので、真作に見せる事が可能に

   なります。

  ?) 二度焼きは簡単に出来、手間も掛りません。

   必要な温度まで加熱するだけですので、小型の窯で焼成でき、手間も掛りません。

   但し、基本的には素材と同じ温度で、再焼成する必要があります。但し素材が焼き不足の

   場合には、素材以上の温度で焼く必要があります。

  ?) 材料は安価で容易に入手可能との事です。

 ? 二度焼きの効果。

   必ずしも、下記の効果で出る訳ではありませんが、次の事が起こります。

  ?) 完全に以前の艶(つや)を取り戻します。

  ?) 若干釉の色が変化する。古陶の焼かれた窯の雰囲気と、再焼成された雰囲気は全く同じ

     では有りません。それ故、釉の色が焼く前と焼いた後では、若干異なる場合が多いです。

  ?) 再焼成で、釉が熔けニュウ(ひび)に流れ込み、ニュウの断面が丸味を帯びます。

    同様に「欠け」た部分の断面も、釉により丸みがでます。

  ?) 「カセ」ていた表面が熔け、手触りが滑らかになる。

  ?) 貫入が無くなる。又は、貫入の表情が変化する。

  ?) 白化粧土が薄くなる場合があります。

     刷毛目や粉引きなどの白化粧土が、胎土に吸い込まれる様になり、白い色がくすみ

     白化粧土が薄くかかった状態になる場合があります。

  ?) 一般には、汚れは取れる事が多いですが、逆に、汚れが全体に広がる場合があります。

    即ち、塵(ちり)やほこり、手垢(てあか)等の有機物は、高熱で消失し綺麗に無くなり

    ますが、泥(又は土)などが貫入に入り込んでいる場合、燃えずに残り釉に混ざり込んで

    釉を汚す事もあります。

  ・ 以上まとめると、釉面は光沢が出て、より良好になります。釉の色が若干変化します。

   「欠け」やニュウは、窯キズ風になり、断面は丸くなります。更に土銹(どしゅう)や汚れは

   消失します。

 ? 二度焼きを見分ける。

以下次回に続きます。

  

    

  

騙しのテクニック8 二度焼き 2

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4) 二度焼き(二度窯、再焼成)に付いて。

 ? 二度焼きを見分ける。

  二度焼きされた作品かどうかは、見極めが難しいと言われています。

  基本的には、新しく作られた陶磁器と同様になりますので、古さは無くなり、欠点も少なく

  なります。そこで、二度焼きした作品には、人工的に古色を付ける場合があります。

  次の状態の作品は、二度焼きの疑いがあります。(あくまでも疑いです。)

  ?) 「ホツ」(ちいさな欠け)が、釉で埋められている。

    再焼成する事で、釉は液化する事になり、小さな「ホツ」も周囲の釉が流れ込む事になり

    ます。

  ?) 「欠け」の角部が釉で丸味を帯びている。

     「欠け」の断面に施釉すれば、断面にも釉が掛かりますので、その様な事はしません。

     すれば直ぐに二度焼きが「バレ」て仕舞うからです。

  ?) 細い「ニュウ」(ひび)が釉の下に見える。
   
    「ニュウ」の隙間にも釉は流れ落ちてきます。その為、釉の下に「ニュウ」が入る事に

     なります。最初の焼成後に「ニュウ」が出来たのならば釉の下にはありません。

  ?) 虫食い(釉のみが剥がれている状態)の縁に丸味が認められる。

  ?) 釉の表面に気泡状の「ブツブツ」が、噴き出している。

    風化によって出来たと思われる、釉下の空洞に空気が入り込み、再焼成の際膨張して、

    釉を持ち上げた結果です。

  ?) 煙状の染み(しみ)が釉の裏や表面に現れている。

    貫入などの汚れが、消失する事なく残る場合、その汚れは釉の中に薄く拡散します。

    その為、染みが発生します。

  ?) 磁器の再焼成では、釉の表面が不安定になり、所々は艶(つや)が出、他の部分では

   「ザラツキ」が出る場合があります。

5) 後絵後の二度焼き。

  無地の陶磁器に、鉄絵や染付け、赤絵(色絵)を施す場合や、絵のある陶磁器に更に絵を追加

  する方法があります。絵付け後に焼成する事で、商品価値を高める騙しの方法です。

 ? 無地の陶器に鉄絵を施し、再焼成する。

  ?) 筆を使い、鬼板や弁柄で器に絵を描いていきます。一度焼成された作品の上に絵を付ける

   には、絵の具が載る様に、前準備(処理)が必要になります。但し、釉に風化によ「カセ」が

   有る場合には、処理する必要が無い場合も多いです。

  ?) 絵柄は自由に選べますが、当時描かれていた物や、時代に関係ない草花文様が多い様です

  ?) 再焼成(二度焼き)する事で以下の状態に成ります。

   a) 釉は自然な艶(つや)が出て、風化による「カセ」も消えてしまいます。

   b) 鉄絵の部分は、下絵付けした場合と同様に、釉の中に取り込まれ、不自然さは感じられ

     ないとの事です。

   c) 「ホツ」や「欠け」の状態は、上記の場合と同じです。

 ? 鉄絵の作品に鉄絵を追加して、再焼成。

  ?) オリジナルの絵と追加した絵の筆使いに差があれば、違和感を感じますし、鉄絵の濃度も

    比較検討の対象になります。又、全体の絵の構想が追加した絵の為に、統一感が損なわれ

    ている場合には、当然後絵と見なされ易いです。

  ?) 一般に、再焼成ではオリジナルの下絵も、よりはっきりと出現します。それ故、鉄絵の

    みの追加は、意外と難しい技術です。

  ?) オリジナルの絵と追加の鉄絵は伴に、釉の下にある様に見えますので、違和感はあり

    ません。釉も艶を取り戻します。

 ? 無地の陶器に後染付け。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック9 二度焼き 3

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5) 後絵後の二度焼き。

 ? 無地の古陶磁に後染付けする。

  釉面に染付け用の絵の具(コバルト、呉須)で、絵を描き高温で再焼成すると、以下の様に

  成ります。

  ?) 釉が熔けますので、釉の上に描いた絵が、若干流れると考えられますが、ほとんど流れる

    事は無い場合もある様です。但し、釉の流れ易さや、再焼成温度によっては、若干流れ、

    絵が滲む場合もあります。

  ?) 筆で描いた絵は、釉の下に描いた通りに定着し、釉も絵の上を完全に覆います。

  ?) 釉は艶(つや)や透明感が増します。

  ?) 「カセ」や「貫入」に着いた汚れが可燃性の場合は、綺麗に無くなりますが、非可燃性の

    汚れは釉に取り込まれ、釉を汚す事に成ります。

  ?) 陶器の「ニュウ」は再焼成で、広がり太くなる事が多いですが、磁器の場合には陶器程

    の変化はありません。

   ?) こびり付いた土銹(どしょう)は無くなる場合が多いです。

 ? 後色絵、後赤絵、後金彩に付いて。

  ?) 無地や古染付けの陶磁器、又は上絵や金彩が薄くなったり、絵が剥落してしまった物を、

   商品価値を高める為に、後絵で赤絵(色絵)を施し、色絵窯(錦窯)を使い800℃程度の温度で

   再度焼成する方法です。尚、後で述べる様に、窯に入れずに後絵を施す方法もあります。

  ?) 後絵の技法その物は、通常の上絵付けと同様ですので、困難でありません。

   但し、焼き物が焼かれた当時と同じ色調の絵の具が手に入る事と、描かれている絵の具と同じ

   絵の具が調合できる事、更には、同じ描き方(描き振り)が出来るかが難問に成ります。

   a) 白磁皿に柿右衛門様式の後絵施した偽の作品が、多く出回っている様です。

    図柄も柿右衛門様式で描かれていますが、色調や描写方法もオリジナルとは異なる様で、

    目の肥えた人には、後絵と解かるそうです。

   b) 染付けのみの磁器に、部分的に色絵で後絵を施した作品も多く存在しています。

    これらの作品では、染付けのみで絵が完成している為、後絵が邪魔になっている場合が多く

    構図的にも、不自然さが出るとの事です。(後絵が蛇足になっている)

   c) 本体が作られた時代と、絵柄が一致しない物もある。

    白磁の壷や大徳利などに、元禄美人を描がいてある物があるそうですが、壷や徳利の作ら

    れた時代(様式から判断する)と元禄美人がが流行した時代に「ズレ」があり不自然です。

  ?) 窯に入れない方法。

   a) 「焼継ぎ」の方法。

    幕末から昭和初期まで盛んに行われていた方法で、現在ではほとんど見る事がなくなった

    方法です。「ニュウや割れ」などの傷を、低い温度で熔着する方法で、最も強力な接着

    方法と言われています。主に、大切な食器類の補修に使われ、茶陶器の直しには使われて

    いないとの事です。この方法で、後色絵を焼き付けます。

    後色絵の上に、白玉粉(鉛ガラスの粉、楽焼用の釉に使用)を置き、ガスバーナー等で

    加熱し焼き付けます。新たなガラス部分が盛り上がったり、上絵に泡が生じ易く、色調も

    異なる為、真作とは大きく異なります。

   b) 硬質ワックスを用いた後上絵付け。

    色絵の中で、本物の緑、黄、紫、藍色は、ガラス質で盛り上がった感じになっています。

    熔した硬質ワックスに絵の具を混ぜ、垂らす様にして作品に落として行きます。筆塗り

    同様の曲線も描く事が出来、色調や透明感や盛り上がり感も自然に見えます。

    更に、薄く塗る事で赤や黒などの色や、汚れや黒ずみ等の古色を付ける事も可能です。

    硬度も強く、爪で押しても凹む事はありません。

    ・ タイ、インドネシア、中国南部などの東南アジアを中心に、安南赤絵、呉須赤絵、

     明朝赤絵などの作品に多く見られるものです。

   c) 塗料を用いて色絵を描く。

     最も簡便な方法ですが、その場限りの誤魔化した物です。

     強い接着力は無く、布で強く拭いたり、爪で擦ると剥がれます。

     使われる色は、赤、黒、金など盛り上がりの無い平たい線が多いです。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック10 二度焼き 4

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前にもお話した様に、再焼成で後赤絵以外では、全面的に釉を熔かし直しますので、上手に焼けば、

風化や古色は全て無くなります。但し、胎土、造形、釉、文様はそのまま本物ですので、見慣れない

人では、二度焼きを見破る事は困難と言われています。

二度焼きされる作品は、温度が上昇せずに焼き損じた発掘品や、焼成中に大きな割れや傷付いた

作品群、物原(ゴミ捨て場)からの発掘品などであり完品はありません。そのままでは、ほとんど

価値がありませんので、二度焼きや補修によって、商品価値を高める事が出来ます。

6) 二度焼きのまとめ。

  二度焼きの特徴には以下のものがあります。

 ? 「カセ」や「染み」が無く、釉に光沢があり、真新しい感じになります。

   又、表面に「摩れ」や「擦り傷」も全く見られません。

   但し、この状態では新作と見られますので、人工的な古色が着けられています。

   それ故、人工的な古色付けを見破る必要もあります。

 ? 釉に「ニュウ(ひび)」が無く、その下の胎土に細い「ニュウ」が見える。

   但し、「窯傷」と呼ばれる、焼成前や素焼中に発生した傷の場合にも、同様な現象が起こり

   ます。両方の「ニュウ」を比べると、前者の場合が直線的なのに対し、後者はやや蛇行して

   いる場合があります。又、窯傷の場合には、軟らかい内に出来た為、底割れや欠けた部分が

   「スパット」綺麗に成っていない場合が多いですので、傷の状態で判断できる事も多いです。

 ? 「欠け」や「ホツ」の周囲の全体が、熔けた釉で丸味を帯び、鋭利な角部分が出ていません。

 ? 釉が黒ずみ、汚れた感じがします。これは、元の作品が不燃性の物質が残っていたからです。

   更に、複数個の大小の泡状の突起が、表出する場合があります。

 ? 後絵では、現代人が好む兎(うさぎ)、水鳥、魚、桜、家、人物、舟などの文様が多いです。

 ? 後絵の絵付けが「ぎこちなく」熟練した職人が描いた感じがなく、当時の絵付けと微妙に

   雰囲気が異なります。

 ? 自然にこびりついた土銹(どしゅう)が無い。特に貫入に入り込んだ土銹や釉の表面に半透明

   状の薄い幕の土銹も無く、綺麗な状態の物は、二度焼きと思って間違い無い様です。

 ? 二度焼きの場合、新たに釉を補充する場合と、補充しない方法があります。

   補充すると、オリジナルの釉と同じ成分にする必要がありますので、一般には補充しない事が

   多いです。補充しない場合、二度焼きの際、釉が若干素地(特に陶器の場合)に吸収される為

   透明釉がやや褐色になる場合があります。又、陶器の場合は「ニュウ」がより大きく広がり

   まので、「ニュウ」が埋まる事はありません。「ニュウ」を隠す為には、釉を追加しています。

 ? 上絵付けの作品の再燃焼(二度焼き)は、磁器の作品がほとんどです。それ故、貫入も少なく

   比較的古色や汚れは付き難いですので、昔の絵の具を使い、絵柄も当時の模様を使った場合、

   上絵を追加しても、ほとんど見破る事は困難との事です。

   注: 当ブログでは、「二度焼き」を再焼成の意味で使っています。本来この言葉は、上絵付

    けの際の錦窯で焼成する事を指す言葉との事ですので、当ブログの上絵の「二度焼き」

    は「三度焼き」が正式な言葉となります。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック11 擦(スリ)切 

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一見完品に見える物が、実は大きな傷物である事があります。

擦り切りとは、割れ等の大きな傷がある焼き物の悪い部分を切り取り、補修を施し全く別の完品に

仕上げる騙し(贋作)の技法です。口縁の小さな欠けであれば、その部分を補修する方が得策です。

擦り切を行う元の作品は、この手間隙を掛けても良い程の価値のある作品でなければ成りません。

欠陥を除去する事で、より商品価値を上げる事ができます。

但し、大切な物を作り直して再び使うと言うのであれば、必ずしも問題に成る訳ではあります。

尚、擦り切の技法を施した物は、本来の形ではありませんが、胎土、釉や文様、焼きは本物ですので

完全な贋作とは言えない面もあります。

1) 無釉の作品に多い傾向です。

 ? 切り取った部分は当然釉が掛かっていません。それ故、施釉陶器では切り取った事は一目瞭然

  ですので、切り取り部には何かの処置を施し、カムフラージする必要があります。

   カムフラージュとは: 漆を塗ったり、共色の付いた接着剤を塗るなどの方法もあります。 

  ・ 磁器の場合は、切り取った部分を丁寧に仕上げると、施釉された様に見えます。

 ? 土器や焼締め陶器であれば、無釉ですので擦り切った部分も目立つ事は有りません。

 ? 擦り切の技法を施した物は、施釉陶磁器の作品にも多く存在します。

2) 擦り切の方法。

 ? 口縁や頸(くび)の部分が破損して欠けた場合、欠けた部分の最下段で切り取るのが一般的

   です。多くの場合は水平に切り取りますが、形に応じて切り方を変化する場合があります。

 ? 土器などの軟陶であれば、糸鋸(いとのこ)で容易に切り取り、紙やすりで切り口を磨き

   上げれば完成に成ります。

 ? 高温で焼成した作品は、胎土が焼締まっている為、任意の場所を容易には切り離す事は、

   結構難しいです。「ダイヤモンドやすり」や「グラインダー」等を使うとより容易ですが、

   やり方によっては、必要以上に割れ部を広げる危険性もあります。

3) 擦り切の例

 ? 把手の付いた水差し(水注)の注ぎ口や把手部分が大きく破損した場合、徳利に仕上げる。

  ?) 注ぎ口を本体根元部分より切り離します。把手は上下二箇所で本体に取り付けられて

    いますがこの二箇所を切り離します。

  ?) 注ぎ口は本体に孔があきますので、埋める必要があり、把手部分は孔が有りませんので

     切り口を綺麗に仕上げれば良いです。

     注: 「孔」は貫通したあなで、「穴」は行き止まりの有るあなを意味します。

  ?) 施釉陶磁器であれば、補修後、釉を掛けて二度焼きします。

 ? 大きな鉢の上部(口縁部)を擦切し、手頃の抹茶々碗に仕上げる。

  好みの位置で擦切し、切口部は共色で施釉したり、覆輪を掛けたりします。

  ・ 著名な茶碗に「十文字井戸」(三井文庫蔵)があります。これは古田織部が大き過ぎる

    大井戸茶碗を縦横十文字に挽き切、寸詰めしたものです。

 ? 徳利の銅から上を切り取り、下部を塩笥(しおげ)形茶碗や、鉄鉢形茶碗にする場合があり

   ます。

  ・ 国の重要文化財の三島芋頭(いもがしら)の水指も、大徳利の下半分と見なされています。

 ? 瓢箪形の瓶のくびれ部で擦り切、下部を壷とした作品もあります。

   李朝の口縁部に釉の無い物が多く有るそうですが、その中の幾つかは擦り切と思われています

 ? 茶碗の高台部を擦り切、別の高台を接着した物も見つかっています。

   その他、壊れた耳を擦り切、耳無しの壷に仕上げる。片口の上部を擦り切、茶碗に仕上げる。

4) 擦り切を見破る。

 ? 口縁部の釉の状態や、曲面に不自然さは無いか。

 ? 凹み部の上下の繋がりに違和感は無いか。

 ? 見込み部の発色と外側の発色に大きな違いが無いか。

   見込み部に釉の掛け外しがあれば、袋物(壷、徳利類)の擦り切の可能性があります。

 以下次回に続きます。

騙しのテクニック12 古さを知る1(科学的方法1)

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古陶磁器を扱う場合、当然、何時ごろ何処で作られたかが問題になります。

鑑定家は、器形や文様の様式、土の種類更には、制作方法の違いや焼きの違いなど、ご自分の経験

から割り出して、判断しているのが普通です。(これらに付いては、順次お話しする予定です。)

しかし、考古学など学術的に研究する場合、客観的なデータとして、科学的方法が取られています。

特に近年、測定器を用いてある程度の制作年代が特定出来る様になり、従来の経験による技法と

あいまって、より古さを正確に(但し誤差はあります)知る事が出来る様になりました。

以下、科学的方法についてお話します。

1) C−14法(放射性炭素法)

   Cは炭素(カーボン)の原子記号です。数字は原子量(重さ)を表します。

 ? 原理

  ?) 空気中には炭酸ガスが含まれます。(炭酸ガスは炭素と酸素の結合物です。=CO2)

   炭素にはC-12と、極僅かのC-14(放射性炭素)が一定量存在しています。

   植物は光合成により炭素を吸収し、動物は餌や呼吸と共に体内に取り入れいます。

  ?) 生物(有機物)が死ぬ事で、この吸収は停止しますが、C-14は原子崩壊を起こし徐々に

    減少して行きます。C-14の半減期(半分になる期間)は5730年で、規則的に減少します。

    尚、C-12は減少しません。

  ?) C-14とC-12の量の比率から、その生命体が何時死んだのかが解かります。

    生命体には、植物や動物の骨、植物や動物から作られた繊維、衣類、麦や米などの炭化物

    (こげ、燃え残り)、植物から採取した物漆、貝殻などが含まれます。

 ?  C−14法の応用。

   陶磁器は有機物ではありません(無機物です)ので、炭素を含みません。それ故直接測定する

   事は出来ません。但し、土器などの場合には、使用時の「こげ」や「吹きこぼれ」など有機物

   が付着してうる場合には、直接測定可能です。

   実際には、以下の間接的な方法で測定しています。

  ?) 古陶磁器と共に出土した有機物から推定する。

   a) 発掘品は、ゴミ捨て場(物原、貝塚など)から見つかる事も多いです。そこには、獣や魚

    の骨、木製の日用品の木片、貝殻なども見つかります。同じ地層から出土したこれらから、

    年代が測定されます。

   b) 縄文や弥生式住居跡から、当時使用していた土器などが出土する事は、稀ではありません

     木の実や穀物などの貯蔵用の壷などには、その名残がある場合あります。煮炊き用に

     使われた土器にも有機物の残渣(ざんさ)がある場合、これらも利用できます。

  ?) 古陶磁器に添えてある箱、布類から推定する。

    大切に保管されている陶磁器は、布に包まれ、箱に入っているのが普通です。

    箱には書付の紙がある場合もあり、紐もあります。これら植物由来の炭素から年代が推定

    されます。

2) AMS法(加速器質量分析)

  近年、微量の炭素の試料で測定される方法が用いられています。

  従来のC-14法では2〜3gの試料が必要でしたが、その千分の一以下の1mg程度で測定可能の

  方法です。しかも一時間と短時間で測定できるのが強みです。

  但し、試料が微量である為、他の影響を受け易いとの事です。又、炭素の無い場合には利用

  出来ません。

  近年、この測定法を用いた結果、弥生時代の始めが定説より、500年さかのぼる(古い)

  事が判明しました。

3) 熱ルミネッセンス法(TL法)

 以下次回に続きます。
  

騙しのテクニック13 古さを知る2(科学的方法2)

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3) 熱ルミネッセンス法(TL法)

 C-14法が放射性炭素を測定するのに対し、TL法は無機物の鉱物を試料にする測定方法です。

 陶磁器は当然、石英や長石などを多量に含みますので、直接年代が測定できます。

 ? 原理。

  ?) 石英や長石、蛍石など自然界にある鉱物は、天然に存在する放射線(天然ラジウム、

   ウラン、宇宙線など)の影響で、電子エネルギーを蓄えています。

  ?) 自然の鉱物は加熱すると蛍光を発します。特に蛍石は顕著です。

   これを「熱ルミネッセンス(加熱発光)」と言います。

  ?) 但し500℃以上に加熱すると、蓄えらえたエネルギーは発散され、発光が止まります。

    しかし、加熱温度が下がると、自然界の影響で再びエネルギーが蓄積始めます。

    即ち、500℃以上で蓄積がリセットされる訳です。

 ? 焼き物への利用。

  ?) 焼き物は必ず500℃以上で焼かれています。それ故、リセット後のエネルギーの蓄積

   度合いによって、数百年〜数千年前に焼かれた事が判明します。

   リセット後のヘネルギー量は、500℃以上で再加熱し、出てきた光の強度を測定して行い

   ます。実際には、蓄積された放射線量を光の強度から計算し、現地での推定年間放射線量で

   割る事により、加熱されてからの時間が解かります。

   但し、その焼き物が屋外又は、屋内にあったかによって、自然から受ける放射線の量が変化

   しますので、その保管場所や発掘状態によって、数十年の誤差が生じるといわれています。

    注: 福島の原子力発電所の事故で、屋内と屋外では被爆量に差がある事は、自明な事です

      同様の事が言える訳です。

  ?) この測定方法では、現代の作品から古い時代の作品まで判別できます。

    又、前回お話した「C-14法」の測定方法と併用できれば、より正確な時代が特定されます。

  ?) この測定方法の成功例として、長石成分を測定した結果、新潟県六日町の須恵器の出土

    品が、大阪府堺市の陶邑古窯群で焼成された事が判明し、その伝播ルートも特定できた

    そうです。

  ?) 熱ルミネッセンス法を逆手に取った贋作。

    この方法は絶対的なものではありません。贋作に予め人工的に?線を照射し、検査を誤魔

    化した事例も報告されています。

4)  光ルミネッセンス(OSL)法

   鉱物結晶に光を照射した時に、波長の異なる光が放出されることを利用して年代を測定する

   方法です。焼き物や堆積物に普通に含有される石英や長石結晶から、放出される光を測定し

   ます。 実際の年代測定の手法は、上記TL法と同じですが、試料の採取時にできるだけ日光

   などの光を受けないようにする必要があります。

   この方法では、鉱物結晶が光を受けなくなってからの年数がわかるので、地中にあった発掘品や、

   土壌をはじめ、各種堆積物の直接的な年代測が可能です。

5) 上記以外の機器を用いた方法。

  古陶磁では何処で作られた物であるかが、判明する事で贋作を見破る事が可能になります。

  昔は土の有る処に窯を築き、当地の土を使っていますので、名前と土が一致して当然です。

  しかし、しばしば名前と産地が一致しない場合、「材料の元素分析法」を用いると陶磁器の

  生産地を知る事ができます。「材料の元素分析法」には以下の方法があります。

 ?  蛍光X線分析法(XPF法)

  ?) 原理。

    試料にX線を当てると、原子中の電子が飛び出します。その空いた部分に外側の電子が入り

    ます。その時その元素特有のエネルギーのX線が放出されます。

    注: 原子核を中心に電子が複数の軌道を周回しています。軌道には定まった数の電子が

      存在し、抜けた穴にはその外側の軌道上にある電子が、入り込みます。

  ?) 陶磁器の場合、胎土や釉の構成元素を分析する事ができます。

    特に胎土の分析から、何処の土(産地)かが判ります。

  ?) この方法が注目される様になったのは、加藤唐九郎氏が関係したとする「永仁の壷」

    事件によります。

     注: 「永仁の壷事件」とは、1959年重要文化財に指定された、鎌倉時代の古陶が、

      「蛍光X線分析法」によって現代の材料(特に灰釉)である事が判明し、1961年重文の

      指定が取り消された事件です。

 ? 中性子放射化分析法(NAA法)。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック14 古さを知る3(科学的方法3)

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5) C-14法、TL法、以外の機器を用いた方法。(前回の続きです。)

 ? 中性子放射化分析法(NAA法)。

  焼き物の胎土を構成する元素の分析から、その産地を特定する事が出来る方法です。

  微量成分の分析法として優れている為、良く利用されている方法です。

  昔は、各地の窯場で生産される焼き物は、その土地の土(磁土)を使いました。各地の土は、

  同じような成分であっても、微量な成分構成に差があります。その違いを検出する方法です。

  ?) 原理。

   a) 安定している元素の原子核に、加速器や原子炉で作られた中性子を衝突させます。

    中性子を原子核に吸収させて、不安定な原子核にする事を「放射化」と言います。

   b) この不安定な原子核は、崩壊(放射性壊変)をして、再び安定な核に変わります。

   c) 放射性核種が壊変し、原子核数が半分になるのに要する時間は常に一定であり、

     これを半減期と呼びます。

     注: 放射性核種とは、自然に放射線を放出して崩壊し、他の原子核に変わる原子核の

      事です。自然界に存在する天然放射性核種(ウラン等)と、人工放射性核種とがあり

      ます。

     半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に

     固有になっています。

    d) それ故、半減期と放射線のエネルギーを測定する事により、核種(元素の種類)が

     判り、更に放射線の強度を測定する事により、核種の量(原子核の個数)を決める事

     ができます。

  ?) 放射化分析法における利点。

   a) 試料の形状に制約がなく,少量の試料で多元素を同時に分析する事が可能です。

     特に焼き物に於いては、胎土の構成元素の比率や、微量元素の測定が可能になります。

     胎土の微量元素の量を詳細に比較できる事で、胎土の産地が特定できます。

   b) 化学操作を行わないので、不純物の混入の恐れが少ないです。

   c) 試料を破壊せずに分析でき、試料の化学組成の高感度分析を行うことができます。

  ?) 放射化分析法の利用例。

    「古九谷」が加賀の九谷で作られた物か、肥前の有田で作られた物かの論争が長く続いて

    いましたが、この分析方法から「有田産」と判明しました。

 ? 紫外線照射法(BL法)。

  塗料を使った共色直しの贋作は多発しており、数年たっても変色しない塗料も登場してきて

  います。それを見抜くのも容易ではないとの事です。紫外線照射法は暗い場所で、ブラック

  ライト(近紫外線)を当てると言う、簡単な方法で見破る事が出来ます。

  ?) 原理。

   一般に塗料には、蛍光物質が含まれています。暗所で紫外線を当てると、塗料を塗った部分は

   白っぽく発光します。

  ?) 紫外線は「近紫外線」と呼ばれる、可視光線と紫外線の中間の波長ですので、人の眼には

    無害との事です。

  ?) ブラックライト(BL)の光自体は、人間の目にほとんど見えません。

    BLを当てた物体はその中の蛍光体だけが発光するため、非破壊検査に使われるます。

  ?) 但し、最近では、蛍光体の入っていない塗料もありますので、これには使えません。

  ?) このライトは容易に入手が出来ます。電球型と蛍光灯タイプがあり、千数百円〜一万円

    程度の価格です。

6) 古陶磁に測定機器を使う事に付いて。

 ? 上記の検査で使う機器は、個人で持てる物と、持てない物があります。

   規模の大きい物や、自分では検査できず、専門家に依頼する事が多いです。

   各大学や研究機関が保有する特殊の機械です。それ故、誰でも簡単に検査に掛ける事は出来

   ません。

 ? 重要な部分は人間が担当しています。

  試料の採取と選定、機器の操作、データの収集と解析など人手に頼っています。

  最終的な決定は、人間が行う事に成ります。

 ? 現在の機器には、風化の具合や古色の様子を読み取る事さえ出来る、機器も登場しているとの

  事です。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック15 名を騙る1(産地1)

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名を騙る(なをかたる)とは、本人が自覚していながら、人を騙す(だます)行為です。

それが、営利でも非営利でも関係ありません。時には栄誉を得る為に行う事もあります。

1) 名を騙る種類には、古さ(時代)を誤魔化す。産地を誤魔化す。用途を誤魔化す。形や色を

  変えて誤魔化す。その他、作者名を誤魔化す(騙る)などがあり、いずれも、本来の呼び名とは

  異なる呼び方をするのが、特徴です。例えその作品が、本物の○○焼きであっても、××焼きの

  名前で呼ばれ、公表(又は販売)すれば、それは誤魔化し物(偽者)になります。

  尚、古さに付いては、おおむね前回までにお話しましたので、ここではそれ以外の誤魔化しに

  付いてお話します。

2) 産地を誤魔化す。

  産地には、我が国だけで無く、中国、朝鮮、安南(ベトナム)などの東南アジアの作品も含まれ

  ます。

  現在では、科学的機器を使えば、ほぼ100%の割合で、産地を特定できるとの事ですが、

  機器を使わず、人が鑑定(判断)する場合には、土の種類や釉、形状、様式などから、ある

  程度の産地の予想は付く様ですが、確実では有りません。

  更に、各地には模倣物も多く、上記条件のみでは、判別不能の場合もあります。

 ? 胎土の違い。

  陶器と磁器の判別は簡単ですので、間違う事は無い(少ない)と思われます。

  我が国で磁器が焼かれたのは、肥前有田焼(伊万里焼)が最初ですので、それ以前(1605年)の

  磁器は、中国(景徳鎮製)や朝鮮(李朝)製と見て間違い有りません。

  ?) 土(粘土、磁土)は、作品の高台回りを観察する事で、産地を特定できると言われて

   います。一般に高台脇や畳付きと呼ばれている部分は、無釉ですので、観察が容易です。

  ?) 土が違えば、轆轤挽きのし易さに差が出、成形方法も異なる事も多いです。

    更に、同じ釉を掛けても発色が異なります。

  ?) 我が国中世の六古窯と呼ばれる窯で使われていた、標準的土は以下の様になります。

    いずれも、無釉薬の焼き締め陶の場合です。

   a) 信楽焼。 室町時代までは、土に艶がありませんでしたが、それ以後では白い長石が

     無数に含まれ、華やかな緋色が出るのが特徴です。

   b) 常滑焼。 淡い褐色から褐色で艶は少なく、粒子が砂っぽくやや粗いです。

   c) 渥美焼。 小石混じりの灰褐色で、常滑より粒子が細かいです。

   d) 備前焼。 最も肌理の細かい、暗褐色の「ねっとりした土」で、自然釉による窯変や

     明るい緋色が出易い土です。

   e) 越前焼。 常滑と酷似しますが、やや艶があります。

   f) 丹波焼。 備前に次いで肌理の細かい土で、艶のある明るい褐色に成ります。

 ? 土の産地と焼き物の産地。

   昔は土を大量に他所に移動する事は、ほとんど有りませんでしたので、土の産地が焼き物の

   産地と一致していました。尚、現在では、土は自由に取り寄せる事が可能ですので、新作物は

   土を見て判断する事は出来ません。

  ?) 例外的に昔にも、他所に土を移動させて制作した事がありました。

    「京唐津」と呼ばれる焼き物は、唐津から取り寄せた土を使った焼き物です。

    「日計り手(ひばかりて)」は、朝鮮半島から運び込まれた土で焼いた、薩摩焼です。

  ?) 特に個性に乏しい土(一般的な土)は、産地を特定する事は困難です。 

    同じ様な土は多く存在します。

    例えば、備前の土は、南蛮の一部の土に酷似しているそうです。また、岸岳唐津の土と

    朝鮮の会寧(かいねい)土も同様に似通っています。

  ?) 磁器の土は、粘土と異なり、色や組成成分がほぼ同じです。それ故、土を見ただけで、

    産地を判別するのは、困難です。

  ?) 同じ産地の粘土でも、採取した場所により見た目にも違いがあります。

    土には微量な鉄分などの金属や砂、その他アルカリ成分(石灰分、ソーダ成分など)を

    含み、その量はわずかに離れた採取場所でも異なります。

    更に、同じ土でも、坏土までの間の篩(ふるい)掛けや水簸(すいひ)の有無によっても、

    肌理(きめ)の細かさや手触り、焼いた際の色に違いが生じます。

  それ故、慣れない人には、土で産地を判断するのは、簡単ではありません。

以下次回に続きます。   

騙しのテクニック16 名を騙る2(産地2)

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2) 産地を誤魔化す。(前回の続きです。)

 ? 胎土の違い。

 ? 現在の市販された土(粘土、磁土)は、幾つかの土でブレンドされています。

   陶芸作家の人も、自分で使う粘土は、作品に応じて、数種類の土を調合しています。

   従来単身で使われていた土も、現在では枯渇している場合が多く、産出されていたとしても、

   ほんの僅かな量で、地元で消費する量も賄いきれない処が大部分です。

  ?) 現在市販されている土は、合成された土がほとんどです。

    見てくれや焼き上がり状態では、(古い)本物と見分けが付かない程度に調合されています

    それ故、現代の土で作り、古色付けした場合、土のみで産地を見分けると、本物と誤魔化

    される事に成ります。

  ?) ブレンド品が多い理由。

   a) 上記の様に産出量が減少している為や需要に応じる為に、ブレンド品が作られています。

     備前の土は、合成備前の土として市販されています。又、志野の「もぐさ土」などは、

     ほとんど産出する事がなく、代替品も中々見つかりません。

   b) 安定した品質を保持する為。

     同じ土地の土でも、ほんの数百m離れ場所から採取した土で、品質にバラツキがあります

   c) 土の個性を殺す為。

    ・ 土はその土特有の個性を持っています。その個性が魅力であっても、一般人には邪魔に

     なり、制作し難い場合が多いです。

    ・ 例えば、轆轤挽きでは旨くいかない土もあります。

     即ち、土の伸びが悪い土、腰の無い土(薄作りが困難)などです。更に、焼き締まりの

     弱い土(焼成後はもろい)、逆に強過ぎる土(収縮率が大きいく、釉との相性が悪い)。

    ・ その他、焼き締まる温度が、他の土と異なる場合(一緒の窯で焼けない)などがあり、

    どうしても、土の個性が邪魔になります。

  ? 現在でも昔と同じ土が使われています。

    信楽の土は、今でも沢山有ると言われています。(それ故、他の土地の土より、安く購入

    出来る訳です。)即ち、現在では、同じ土を使う事で、その作品の産地が判明する訳では

    ありません。他所で作られた場合、○○焼きでは無く、○○風の焼き物という事になります

    尚、信楽では土で時代区分が出来ませんので、その形や様式から判断します。

  ? 産地を特定するには、土以外に成形方法や、模様などの様式の違い、釉の違い、焼成する

   窯の違いが上げられます。

   ?) 成形方法の違い。

     成形方法には、大きく分けて、轆轤成形と手捻り成形があります。時代や産地によって

     その産地特有の成形方法も存在しますので、産地特定の一つになります。

    a) 轆轤成形でも紐を積み上げてから成形する方法や、土の塊から直接轆轤挽きする方法が

     あります。

     例えば、信楽焼を例にとれば、土紐を積み上げる方法が、須恵器の登場と共に、轆轤挽き

     で制作される様になります。(渡来人の影響と言われています。)しかし、鎌倉時代に

     成ると、轆轤挽きの技術は、全く姿を消し、昔の方法に逆戻りしています。

     それ故、左右対称の作品は少ないです。    

    b) 信楽焼は鎌倉から室町時代初期に掛け、最も信楽らしい作品が多く作られています。

      この時代の作品は、轆轤を使っていない為、土が薄く伸ばす技術は無く、単に土を

      積み重ねた肉厚のものが特徴です。但し口縁部は若干肉が薄くなっています。

以下次回に続きます。
  

コメントの投稿方法。

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当ブログを見て頂き有難う御座います。

当ブログの内容に付いて、随時質問をお受けしていますが、直接電話にての問い合わせが、増えて

います。

記事のコメント欄に記載して頂ければ、お答えも可能かと思えますが、いきなりの電話での質問や

問い合わせでは、正確な趣旨が当方に伝わりません。当方に於いても、的を射た答えが出来かねます

そこで、コメント欄を利用して頂きたいのですが、年配者の方には、コメントの投稿の仕方が解から

ない方もいる様ですので、念の為、方法を記載します。

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   更に、質問が不適当の場合も、投稿されたコメントを取り消します。
   
以上。

騙しのテクニック17 名を騙る3(産地3)

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2) 産地を誤魔化す。(前回の続きです。)

 ? 産地を特定するには、土以外に成形方法や、模様などの様式の違い、釉の違い、焼成する

   窯の違いが上げられます。

  ?) 成形方法の違い。(前回参照)

  ?) 様式の違い。

   焼き物は日常的に使われる物が大多数です。それ故、その生活に適した形(器形)を

   作り出すのが普通です。その形がその産地特有な場合もありますが、食器類は産地に関わらず

   普遍的形の場合もあります。

   a) 様式は、その時代と産地の特徴(個性)を現す言葉です。

     同じ様な形、同じ様な装飾、同じ様な釉や図柄や絵付けの作品を、一括して「○○様式」

     と呼びます。産地の地名を付けた名前や、個人名による様式があります。

     前者には、縄文土器の、勝坂(かつさか)式、亀ヶ岡式な等や、後者には柿右衛門様式、

     (野々村)仁清様式などがあります。

     中国では磁器の景徳鎮様式とも言えるものがあります。

     雑器(日常品)は似たり寄ったりですので、○○様式と呼ぶ事は少ないですが、上手(じょうて)

     と呼ばれる美術品クラスの作品には、○○様式と命名する事も多く存在します。

   b) 贋作で一番多いのは、その当時(時代)に流行した様式(形)の作品です。

     例えば、信楽焼であれば、種壷である蹲る(うずくまる)と呼ばれる小型な壷は、贋作の

     多い作品です。

   d) 贋作を見分けるのに、絵付けがされていれば、絵を見れば解かると言われています。

     しかし、焼き締め陶器の場合、絵がありませんので、他で判断する事になります。

     袋物と呼ばれる壷類は、口造りと底作り、耳が付いていれば、耳の形状、取り付け場所、

     付け根などで、贋作を見破る事が出来き、贋作は不自然であり、作為的になると言われて

     います。

   e) 口造りは時代や産地を鑑定する上で、貴重な手掛かりになります。

     当然、その焼き物の使用目的によって口造りは変化します。

     縁を肉厚で丸みを帯びた玉縁(たまぶち)は壷類に多いです。その他、端反り、

     姥口(うばくち)、立口、蛤(はまぐり)口、樋口(といぐち)、 鼈口(すっぽんくち)

     筆洗形など多くの形があります。真上から見た形には、真円形、小判形、沓形、四角、

     三角、桃形、州浜、多福形などがあります。

   f)  意図的に贋作を制作する場合は、この様式を取り入れているはずです。

     それ故、様式は必ずしも、真贋を決める決め手には成りません。

     但し、ある様式と他の様式が同居している場合には、贋作の危険性も大きくなります。     


以下次回に続きます。     

騙しのテクニック18 名を騙る4(銘、サイン1)

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作者が自分の作品自体に銘(サイン)を入れる事を、作銘(さくめい)と言います。

名を騙る(かたる)方法に、この銘を消したり、別の銘に書き換える方法があります。

我が国で作品に銘を最初に入れた人は、京焼きの「野々村仁清」と言われています。

それ以前は、銘を入れる事はほとんど無く、制作した年号を入れる程度でした。又、神社仏閣に

奉納する際に、年号や寄進者の名前を入れる事もありますが、これは勿論、作者銘ではありません。

1)年号を入れる。

  中国明朝の磁器の底裏に、「宣徳」「嘉靖」「正徳」「万暦」「乾隆」銘などの年号が記された

  大皿などが多くあります。

  我が国でも、伊万里焼きなどの底裏に、「大明年製」「大明成化年製」「延宝」「元禄」などの

  銘が有ります。、「大明年製」は、我が国の年号には無く中国明の年号です。これらは、中国の

  磁器の様式を模した物です。主に染付け(呉須)による筆で記されています。

  「大明成化年製」は、江戸時代を通じて、最もよく用いられた銘です。

  文字が大きく書かれている物程、時代が下がる場合が多いとの事です。

  中には、実際には無い年号が記載されている場合がある様で、必ずしも制作年を特定するもの

  でありません。

2) 窯元を表す銘(窯印)を入れる。

  ? 個人名ではなく、制作した窯を表すもので、数軒の窯元が大窯などの共同窯で焼成する場合

   各々を区別する為に、作品自体に直接「へら」等で、着けられた簡単な印です。

   これらは偽造しても、さほど利益に成りませんので、偽造する事は少ないです。

  ? 伊万里焼きや九谷焼にも各種の窯印が存在しています。

   「福」印は、柿右衛門窯などから広がり、再興九谷焼などでも使われています。

   18世紀には「大明年製」同様に広く用いられました。

   草書体の福の字を四角い桝(ます)で囲んであるものを「二重角福」、その他に「一重角福」

   や、「福」の「田」の部分を渦巻で描いた物を、「渦福」と呼びます。  

3) 個人銘を入れる。

 近年、作品に銘を入れるのが一般的になっています。

 (例外に民藝の作品があります。後で説明します。)

 ? 個人名を書き込む方法には、以下の方法があります。

  ?) 書き銘: 素地の軟らかい内に、竹へらなどで名前を書き込む方法で、陰刻になります。

    「乾山」銘はこのタイプが多いです。但し、その場その場で署名しますので、崩し文字や

    字の大きさ等、筆跡にバラツキがあります。

  ?) 刻銘: やや乾燥後に名を刻み込むもので、「書き銘」より字体がやや硬い感じになり

    ます。

  ?) 印銘: 印材には、陶土、木製、石材などがあります。大きさや文字、記号など自由に

    作る事ができます。制作直後に捺印します。

   a) 一人が数種類の印を持つ事も珍しくありません。作品に応じて同時に使用する場合や、

    順次作り換える場合があり、どの印を使ったかによって、その人の活躍した時代の作かが、

    判明する場合もあります。

   b) 楽焼の本家の楽家では、丸に「楽」の印を使いますが、代々その人専用の印を使って

     います。(一部に角印あり。)勿論それ以外の印も使っています。

   c) 仁阿弥道八には、多数の印銘の他に、刻銘、書き銘などありバラエティーに富んでいます

  ? 野々村仁清の印は、京の陶工は誰でも持っていたと言われています。それ故その数は膨大な

    ものになります。即ち、仁清の作品を手本にし、摸倣(もほう)する事が修行になり、

    印を押す事で、摸倣が完了する事になります。それ故、贋作目的ではない為、自由に使える

    雰囲気があったようです。

  ? 尾形乾山、青木木米等は個人作家として独立していましたので、自分の作である事を証明

    する為に、必ず銘を入れています。

  ? 民藝派の作品は、原則銘は入れません。

    名も無い陶工が、用の為に作った作品である事を重視した結果です。

    著名な作家(濱田庄司など)は代わりに、「箱書」を添えるそうです。

    尚、「箱(書き)」に関しては、後日お話します。

4) 銘を消す、偽銘を施す。

  銘の筆跡や印銘は、作者本人を特定する重要な証拠になります。

以下次回に続きます。
  

騙しのテクニック19 名を騙る5(銘、サイン2)

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4) 銘を消す、偽銘を施す。

  作品にある、銘(サイン)の筆跡や印銘は、作者本人を特定する重要な証拠になります。

  ただし、その筆跡や印銘が本物である事が条件です。偽の筆跡や偽の印銘であれば、当然その

  作品も偽者(贋作)と成ります。

 ? 消された銘。

  ?) 現代作家の作品はほとんど銘が入っています。一方古陶磁には、銘が無いのが普通です。

   現代作家の作品の銘を消し、古い陶磁器に見せかけ、数十倍〜数千倍の価値にするのが目的

   です。勿論著名な作家の作品であればその必要も無く、銘の入った物の方が、高価で売買で

   きます。それ故、対象に成るのは、中堅でさほど有名でない作家で、それなりの作品で

   古陶磁を彷彿させる作品でなければなりません。勿論、作品全体に古色付けを施す必要が

   あります。尚、作家には贋作を作る意図が無いのは確かです。

  ?) 銘を消す方法。

   a) 削り取る方法。

   ・ 信楽焼や備前焼など施釉の無い、いわゆる焼き締め陶器の場合、上手く削り取り、周囲を

     擦り均(すりならす)事で、銘を消す事ができます。磁器に比べ陶器は削り易いです。

   ・ 施釉陶器であっても、施釉していない場所に銘があれば、条件は一緒です。

     銘の上に施釉すれば、釉の種類によっては、銘が消えて仕舞う場合があり、又は銘が

     薄く成る場合があります。その為、施釉しない場所に銘を入れる場合も多いです。

   ・ 透明釉などの釉を施釉した場合、呉須(コバルト)で描いた銘や、印銘の上に施釉すれば

     銘は、ハッキリ現れます。この場合、上の釉を取り除く必要があります。描いた銘なら、

     削り取る事ができます。上手に取り除いた跡は、解からない様に、古色を付けます。

   b) 銘を埋める方法。

     深く彫り込まれた陰刻(凹み)銘では、削り取れない場合があります。その様な時は、

     本体と同じ色に着色した、パテやセメント状の接着剤で、埋める事に成ります。

     埋め込んだ周辺は良く擦り、不自然さを無くします。上手く処理された跡は、中々見破る

     事は困難との事です。

    ・ この様にした備前焼の作品が、桃山時代の水指や、徳利、花活けと化け、法外な値で

     取引された事もあった様です。

  ?  偽銘が付けられる。

   ?) 最初から贋作として作られた作品には、本物に似せた銘が付けられます。

      焼成前に、銘が付けられますので、付ける事自体には不自然さはありません。

   ?) 既製の作品に、著名人の銘を書き込む事で、価値を上げる方法です。

     この作品に銘が有れば、削り取りセメント状の接着剤で埋めます。

    a) 著名な作家の作品と似た既製の作品を見つけた場合、後からその作家の銘を書き加え

     ます。但し、硬く焼かれた作品に銘を彫り込みますので、どうしても描いた線には、

     柔らか味が欠けます。

    b) 更に、軟らかい土に銘を彫り込むと、線の周囲が若干盛り上がりますが、硬い焼き

     上げり面では、この現象はありません。注意すれば、後から彫り込まれた事が、容易に

     見分けられると言います。

    c) 但し、削り取られセメント状の接着剤で補修された上に、新たな銘を書き込めば、

     軟らかい線にする事も可能です。

    d) 無釉の場合は、比較的容易な作業ですが、施釉の作品では掘り込んだ部分に、釉が

     掛かった様に見せる為、何らかの処理を施し、見破られない様にしています。

     但し、石の様に硬くなった部分に細工しますので、彫る工具に工夫が必要です。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック20 名を騙る6(箱、箱書き1)

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大切に保管されている、古陶磁器は木箱などに収められています。

本来の目的は、古陶磁器の保護ですが、時には作者を特定する有力な手段となります。

又、その伝来の由来等を記した物(箱書き、書付)が有れば、その歴史的価値を裏付ける事になり

ます。特に著名人が所有していた事を示す書付や、鑑定書などが有れば、経済的価値も倍増されます

この様な目的を持つ箱や箱書き類は、贋作を作る人や、贋作に仕上げる人達に取って、見逃す

事の出来ない、絶好のアイテムになります。

1) 箱の種類と材質。

 ? 共箱: 制作当初より、その陶磁器に付けられていた箱です。

   作者自ら用意した箱で、作者の署名(サイン)が墨で書かれたり、印が押されています。

 ? 保管箱、仮箱: 単なる保管する為の箱です。作品の持ち主が新たに作らせた箱です。

 ? あて箱: 近年になって、作品に見合う箱を選んで使用している箱です。

 ? あわせ箱: 他から転用した箱で、収納に適した大きさの箱です。

   中の陶磁器より古い場合もあります。

 ? 外箱に付いて。箱が古くて痛んできた場合、更にその外側に箱を設け、古い箱ごと収納します

   即ち、二重箱にします。国宝の大井戸茶碗の「銘 喜左衛門」には、金蒔絵文字のある塗りの

   内箱、白木の中箱、更に外箱があり、最後に総箱の四重の箱に入っています。

 ? 箱の材質。

  ?) 唐津や志野、備前などの和物(国焼き)では、杉、檜(ひのき)、桐などの白木が多く

    使われています。木製以外に、薄くした木を曲げて容器にした曲物(まげもの)や、

    竹細工、籐細工の籠(かご)があります。

   ・ 桐箱は江戸時代の中期以降に使われ出したと言われています。その前は杉の箱が

     多く使われていました。

  ?) 朝鮮や中国製の唐物、島物(中国南部、東南アジア)の陶磁器では、木地に塗り物を使う

    事が多いです。具体的には、黒漆(うるし)で、金粉文字、春慶塗(しゅんけいぬり)など

    です。但し木地に黒檀、紫檀、花梨(かりん)などの高級木材は使用されていません。

2) 箱の種類と大きさ(寸法)、年代を鑑定する。

 ? 箱のサイズが作品の大きさに合っているか?

  共箱の場合、作品の高さや径がの大きさが、箱と一致しているか。又、高台が当たる底板の径の

  跡が作品の径が一致しているか。などを見て判断します。

 ? 箱の作られた年代は、以下の方法で確認します。

  ?) 使われている木材の種類。板の肉厚。

  ?) 板の組み合わせ方(箱の構造)。

    江戸時代の箱は、薄い板で作られた、印籠蓋の物。杉材で側面板の下部中央に紐を通す

    丸穴がある物。桐材で二方桟(さん)の物が多いです。

3) 騙しの手口。

  ? 古い箱を仕入れて使う。

   古い箱は高値で販売され、その為の市場もあるとの事です。即ち、あて箱やあわせ箱の需要は

   多いのです。

  ? 古い箱を解体し、その古材を使い新たな箱を作る。

    時代により箱の構造(作り方)に変化がありますので、それに合わせる必要があります。

  ? 大き過ぎる箱を切り詰め、大きさを調整する。

   ?、?の場合、板の切断面(木口)に新古の差が現れますので、古色付けを施します。

  ? 本物の箱には贋作が入っている事が多い。

   本物の作品を、その製作者又は鑑定人(権威者)に見せ、用意した箱に箱書きをしてもらう

   事は、良くある事の様です。即ち、一つの作品に、本物の箱が複数個ある事になります。

     (注: 箱書きに付いては、後でお話します。)

   それ故、箱は本物でも、中身が偽者(贋作)が多数存在しる事に成ります。

4) 箱と贋作が結び付き易い為、現在では、古美術、骨董業界では、箱を重視する風潮は少なく

   なっています。箱に惑わされず、作品の良し悪しで判断する傾向が強いです。

   箱はあくまで保存用の容器として、見る風潮が強くなった様です。

 以下次回に続きます。  

騙しのテクニック21 名を騙る7(箱、箱書き2)

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5) 焼き物に付随する物を「仕度(したく)」と言います。

  仕度には、箱、仕覆(しふく)、御物袋(ごもつふくろ)、風呂敷などがあります。

 ? 仕覆は、茶入や茶碗、小壷などの焼き物を包む布製の袋で、開け閉じする為の紐が付いて

   います。布が古裂(こぎれ)であれば、時代を推定する事も可能です。

   (あくまでも布の作られた時代で、焼き物の作られた時代ではありません。)

   仕覆は布を縫って作られていますので、何回も開け閉めすると、長い年月には、縫い目が

   ほつれてきます。この様な状態であれば、仕覆は古い物と思われます。

 ? 風呂敷は、箱全体を包む為に使用する布です。この布からも風呂敷の古さ(年代)を特定する

   事も可能です。但し、箱、仕覆、風呂敷が同時代に作られた保障はありません。

6) 箱書は、収められた焼き物が本物である事を証明するもので、上蓋の内側に墨書される事が

   多く、更に落款(らっかん)、花押(かおう)、印、銘などがあります。

  注: 落款とは、筆者が署名し、「雅号」の印を押す事です。

    花押とは、一種のサインで、実名の漢字の偏や旁(つくり)を組み合わせて、模様化した

    ものです。箱書きには次の四種類に分類されます。

 ? 作者による箱書(共箱の場合)。

   製作者が「自分の作品」である事を証明する為に箱に書いたものです。

   近年の、ほとんどの著名な作家の作品に付けられますが、江戸時代には京焼きの作家や光悦

   などに限られていました。 騙しの手口として、筆跡を真似た偽の箱書きがあります。

 ? 製作者の親戚、縁者による箱書き。

   作者の家族、親戚、友人、弟子達によるものです。

 ? 茶の湯の宗匠などによる箱書。

   茶道の家元、高名な茶人、数寄者、愛好家達による箱書です。

   家元が好んで使う、無名の作家の器などや、世に出ていない器の美を発見した茶人、数寄者

   などの人々が、保管の為、箱を作り箱書きを墨書する事もあります。  

 ? 古美術研究家又は、専門家による箱書。

 いずれの場合にも、直に作品に入ったサインに比べ、箱書は後から添えられた物ですので、

 収納された物が、必ず本物である事を証明するものではありません。   

7) 書付(折紙、極書き)について。

  箱の中に、陶磁器と一緒に入っている物に、書付があります。箱の蓋の裏側に貼り付けられた

  物や、別紙に書かれ物が、封筒などに入れられている場合があります。

  書付により、その焼き物の伝承や伝来も判明し証明されれば、その真贋は、経済効果を左右する

  要素になります。

 ? 極(きわめ)書きとは、書画骨董の鑑定書です。又、折り紙も鑑定書、保証書を意味します。

    (注: 「極め付け」、「折り紙付き」の元になった言葉です。)

   その作者を特定し、証明する物です。鑑定家や研究者、専門家が書きます。

   単に、制作者の特定だけでなく、昔の持ち主や伝来なども、鑑定する場合もあります。

   筆跡を調べる事で、その記事の真贋が判断できるそうです。

 ? 添え状、古文書、言い伝え。

  ?) 古文書や言い伝えは、その焼き物が手に入った由来などが書かれています。

    例えば、殿様より拝領の器であったり、逆に神社の宝物が天皇や著名な大名、貴族など

    からの寄進による等の言い伝えや、古文書になっている場合があります。

  ?) 伝承、伝来、古文書などは、事実と異なる事が多いものです。

    それ故、その作品の正当性を証明する物とは、必ずしもいえません。

以下次回に続きます。

  

質問 10 1000℃で焼成の焼き物

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ササっ子様より、以下の質問をお受けましたので、お答えします。

白土を使っています。柔らかい感じにしたくて、1000度くらいで焼きたいのですが、弱すぎますか?

また、市販の釉薬も1000度くらいで溶かしたいのですが、なにか良い方法はないでしょうか?


1) 1000℃ 程度の焼き物として思いつくのは、「楽焼」です。

   その他に、ペルシャ陶器、我が国の奈良三彩などの軟陶陶器があげられます。

 ? 一般に「楽焼」は800〜850℃程度で焼成しますので、それより若干高い温度です。

 ? ご存知の様に、「楽焼」は強度的には弱く、素焼きの植木鉢より若干強度がある程度の、
   強さしかありません。

   ササっ子様がどの様な用途を考えているのかは、不明ですが、日常的に使う食器や、花器と

   して使用するには、弱過ぎます。但し、肉厚を若干厚めにし、重さを無視すれば、強度を

   強くする事が可能です。

 ? ペルシャ陶器も奈良三彩(正倉院蔵)も、稀ですが、千数百年たった現在まで完品が存在

   している事は、使い方によっては、十分強度が有ったともいえます。

   但し、これらの陶器が何度で焼成されていたのかは、当方にはわかりません。

  ・ 尚、唐三彩釉は市販されています。推奨温度は750〜800℃ですが、使い方によっては、

    950℃程度まで可能との事です。

◎ 私の結論として、1000℃焼成の陶器の強度的の強弱は、使用目的によって弱い、又は十分とも

  いえます。

2) 釉薬の件。

 ? 一般に陶器の釉として市販されている焼成温度が、1180〜1250℃が多いです。

   この釉を調合して、1000℃の釉として使用する事は、無理ではないかと思われます。

 ? 楽焼の釉を使う。無鉛の楽焼用の釉は市販されています。

  楽焼用の釉薬は、最高でも900℃程度までで使う事が理想です。1000℃では高温の為、釉が流れ

  落ちる危険性があります。勿論、調合して熔け難い釉にする事は、不可能ではないでしょうが、

  かなりのテスト焼きが必要に成ります。

 ? 市販のガラス粉色釉(1000℃用)を使う。

  当方で調べた処、上記の釉が存在している事が解かりましたので、参考にして下さい。

  以下の文は、メーカーに問い合わせた結果です。

  明窓窯 様   平成26年7月7日 丸二陶料株式会社


 いつもお世話になっております。

 この度は、メールにてお問い合わせを下さり、誠にありがとうございます。

 ガラス粉末色釉(1000℃)は、現在も取扱いしております。

 価格は下記の通りとなります。(全て税別価格です)



 K-1 透明光沢ガラス釉     1kg 4,800円

 K-2 ライトグリーンガラス釉  1kg 7,000円

 K-3 ペルシャブルーガラス釉  1kg 7,000円

 K-4 ライラックガラス釉    1kg 7,000円

 K-5 コバルトブルーガラス釉  1kg 7,000円

 K-6 ブラウンガラス釉     1kg 7,000円

 K-7 サンレッドガラス釉    1kg 7,000円

 K-8 オレンジガラス釉     1kg 7,000円

 K-9 イエローガラス釉     1kg 7,000円

 K-10 パールホワイトガラス釉 1kg 7,000円


 出荷の際は、こちらに、送料・代引き手数料・消費税が加算されます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。


------------------------------------------

 丸二陶料株式会社 配送センター

 〒5291802 滋賀県甲賀市信楽町 黄瀬2880

 TEL:0748-83-0201 FAX:0748-83-1005

 MAIL: honsya@02-maruni.co.jp

------------------------------------------

 尚、カタログ上では、以下の使用方法になっています。

   (カタログは上記メールアドレスから、請求できます。)

 ・ ガラス釉薬100%にCMC(化学糊)3%粉末で良く混ぜた後、水40〜50%を添加する。

 ・ 適温は、1000〜1050℃で焼成する。


 更に、手持ちの他のメーカーカタログからは、同じ様な釉は見つかりませんし、ネット検索でも

 見当たりませんが、同じ様な釉薬が他のメーカーから出ている可能性もありますので、ご自分で

 検索して下さい。

不明な点がありましたら、再質問してください。 以上です。

騙しのテクニック22 約束(事)

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主に、茶陶の世界で使われている言葉に、「約束」又は「約束事」と言うものがあります。

「約束」の意味は、「その種類の作品なら、持っているべき条件(特徴)」と言えます。

それ故、現在では茶陶のみでなく、広く作品群や茶道全般(作法など)についても使われる様に

なりました。

1) 作品の「約束」は、鑑定の有力な拠り所とされ、「目利き」と呼ばれた人は、この知識が

   必要になっています。

 ? 「約束」は胎土の種類や制作方法、削りのタイミング、焼成の仕方などの諸条件が揃った

   場合に、偶然出現した現象です。それ故、当初から意図的に約束を設けた訳ではありません。

   「約束」はある程度類似の作品が出来た後に作られた物で、それ以後はその「約束」に従う

    事が多くなりました。

 ? 本物が「約束」を守っているとは限りません。ある意味、偶然そうなっただけの物かも知れ

   ません。それ故、「約束」を守っていないからと言って、偽者と決め付ける事は出来ません。

 ? 逆に、偽者(贋作)は必ず「約束」を守っているとも言えます。

   最初から、「約束」を意識して作るからです。

2) 「約束」の例。(近年言われている「約束」です。)

 ? 井戸茶碗: 釉は枇杷色(びわいろ)、魚子(ななこ)貫入、高台内外は梅華皮(かいらぎ)

   胴部の三段轆轤目。

  ?) 梅華皮は、釉が平面的に掛からず、粒々状になった状態です。素地を削る際、滑らかに

    削らず、素地を荒らした状態に削ります。

  ?) 魚子貫入とは、細かい「ヒビ」がたくさん集まっている状態の貫入です。

    茶の湯では、貫入による景色を「茶碗が育った」と愛でます。貫入の種類や大きさ、貫入の

    入り具合や模様が、見所になり大切にされています。

 ? 熊川(こもがい)茶碗: 端反り碗形(わんなり)、見込みに鏡があります。

 ? 伊賀: ビードロ釉、焦げ、火色。

   焼締陶の伊賀焼では、薪の松灰が作品に振り掛り、ビードロ(緑色)状の自然釉となります。

 ? 信楽壷、蹲る(うずくまる): 畳み付きに下駄印(出下駄、入下駄)、霰(あられ)。

  ?) 下駄印は、轆轤上に二本の凸又は、凹みの溝を取り付け、土を轆轤上に据えた時、移動

   しない様にした物で、その痕が底面に残った物です。それ故、轆轤上にしっかり固定できれば

   必ずしも、必要な物ではなく、下駄印の痕も残りません。

  ?) 霰とは、「ハゼ石」と呼ばれる長珪石が、白い半融状態で表面に吹き出て来た物です。

 ? 唐津: 高台内に縮緬皺(ちりめんしわ)、三日月高台(片薄)

  ?) 縮緬皺は、砂化のある粒子がやや粗い土を使い、生乾きの状態で、「切れ味の悪い」

     鉋(かんな)や松箆(へら)を使い、削り作業を行うと削り面が荒れ毛羽立ちます。

  ?) 片薄は、高台の外側を削り終えたら、作品を轆轤の中心より、ややずらしてから、高台

    内側を削る事で、成形する事が出来ます。

 ? 古染付け: 虫食い。口縁や稜部の釉剥げの事です。

  ?) 我が国では珍重される「虫食い」も、本場中国では、不良品として扱われます。

    即ち、素地と釉の収縮率が一致しない為に起こる現象ですので、「粗悪品」と見られて

    います。  

 ? 祥瑞(しょんずい): ゴマ土(高台畳付き部の胎土の黒点)。

 ? 定窯白磁: 涙痕(流下する釉)。

 ? 南宋官窯、哥(か)窯青磁: 紫口鉄足(口縁部が紫褐色で、高台露胎部分が黒褐色)

3) 騙しの方法。

 ? 本物には「約束」を満たした作品は少ない。

  ?) 唐津の「約束」である縮緬皺や片薄の本物の作品は、巷で言う程多くは有りません。

    むしろ無い方が多いです。しかし、贋作には必ず両方あります。

 ? 同じ現象は、別の焼き物にも出現しています。

  ?)梅華皮のある作品は、堅手(かたて)茶碗、萩茶碗、瀬戸唐津茶碗にも見られる現象です。 

  ?)下駄印は、常滑焼や丹波焼の製品にもあります。

 ? 作品に「約束」を入れる(付ける)手口。

  ?) 古染付の写しや贋作には、「虫食い」が付けられています。

   意図的に「虫食い」状態を作り出すには、釉が剥がれ易い様な異物を釉の下(素地の表面)に

   入れて置く事で可能になります。即ち、施釉する前に表面の埃(ほこり)やゴミを取り除く

   事は普通に行われています。これは、焼成で釉が弾かれるのを防ぐ行為です。

   これを逆手にとり、あえて任意の場所に塵(ちり)や埃を付ける事により、「虫食い」を

   作る事ができます。但し専門家が見れば、偽者の「虫食い」と判別できるとの事です。

  ?) 祥瑞(しょんずい)のゴマ土にしても、砂粒状の異物を付けて、施釉後に焼成すれば、

    ゴマ(胡麻)土を付ける事も可能です。

 以下次回に続きます。  

騙しのテクニック23 よく有る贋作1

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古今東西、あらゆる美術品には偽者(贋作)が存在しています。

美術品と呼ぶ事さえ出来ない、日常的に使用される焼き物も、例外では有りません。

骨董類では、「本物3割、残り7割が偽物」とも言われている程の世界です。

その偽者も、多く存在する種類と、めったに見ない種類に分れます。

更に、我が国の物を我が国で作った贋作と、海外の物を海外で作られた贋作、更には、海外の物を

我が国で作った贋作など、多種多様です。これらに付いて順次お話します。

1) 我が国の贋作(偽者)事情。

  我が国の磁器以外の「土物」と呼ばれる偽者の陶器(贋作)は、ほとんど我が国で作られます。

  それは、素材となる粘土が、我が国と外国では差があり、例え海外で作られた焼き物があれば、

  直ぐに「バレル」からです。但し、海外でも似た様な粘土が無い訳ではありません。

 ? 縄文、弥生式土器の贋作。

  ?) この頃の贋作は比較的少ないです。但し、火炎土器などや埴輪、土偶の、レプリカ

   (模倣、写し)は、多く存在しています。

  ?) そもそも陶片が真作であっても、その出所が問題になります。

    即ち、盗品か盗掘と言う事になります。どこかの考古学的な資料館などからの盗品や、

    古代縄文などの遺跡の盗掘品とも考えられます。勿論、偶然露出した土器を見つける事も

    否定できませんが、世に出せる程に整た作品はめったにありません。

  ?) 壊れていない(即ち完品)埴輪や円筒形埴輪は、ほとんど存在しません。

   土器類や、土偶にしても、状況は同じです。

   それ故、例え真作や偽者で有ったとしても、補修(修理)が施されているはずです。

   この修理痕を見れば、贋作かどうか判断可能との事です。

  ?) これらの焼き物は、長い間土に埋もれていた物であり、焼き締りの「ゆるい焼き物」

    ですので、土の粒子や汚れた水などが、吸い込まれて、土臭さが残ります。

    これらは、水で洗っても簡単には取れません。新品に古色付けしても、特有の土臭さは無く

    水で洗えば取れてしまうとの事です。

  ?) その時代の要請により、作り出された本物には、力強さがると言われています。

    現代人には、その作風を真似ても、時代の要請には答えられていないと言われています。

    (但し、この意見は精神論で、説得力は無い様に思われます。)

  ?) よく見掛ける贋作。

    縄文土器の碗や水注(みずつぎ)など、小物が多いです。特に煤(すす)を塗って古色

    付けた物も多いです。

 ?  土師器(はじき)、黒色土器、須恵器の贋作。  

    いずれも、弥生式土器の後に登場した、無釉の焼き物です。

    無釉の焼き物には、贋作が少ないです。但し、須恵器の中には、自然釉(灰釉)が掛かった

    物も有ります。贋作では灰を掛ける事で、人工的に自然釉らしさを付ける事もあります。

  ?) 自然釉は経年変化で、「カセ」がでます。(勿論、保存状態によって左右されます。)

  ?) 贋作はフッ化水素などの薬品処理で、人為的に「カセ(艶消し)」を作り出しています。

  ?) 須恵器と誤認され易い焼き物。

    朝鮮の新羅(しらぎ)土器は、見分けるのが困難との事です。その他に南蛮の焼き締め陶器

    百済(くだら)土器、高麗時代の無釉の焼き締め陶器が、誤認され易いです。

  ?) 本物の須恵器の量は、偽者より多く流通しています。須恵器の人気が少ない事も、

    原因の一つです。

  ?) よく見掛ける贋作には次の物があります。

    猿投(さなげ)長頸瓶、薬壷などです。長頸の場合その根元に注目する事です。

    別の物が接がれている可能性があるからです。

以下次回に続きます。

騙しのテクニック24 よく有る贋作2(信楽焼)

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2) 我が国中世の焼き物の贋作。

  中世の焼き物と言えば、常滑、信楽、伊賀、備前、丹波、渥美、越前、珠洲市焼きが著名で、

  いずれも、無釉の焼き締陶器です。大型な甕(かめ)や壷類が制作されていますが、大型の

  贋作は意外と少ないそうです。

  この中でも、一番人気があり、贋作の多いのが信楽焼きと言われています。

 ? 信楽焼の贋作に付いて。 

  ?) 信楽焼で使われている土は、中世より更に昔の時代から同じ物が使われています。

    信楽では、昔と同じ土が、今でも大量に産出されているそうです。

    それ故、贋作で有っても、中世信楽と同じですので、土から時代区分は出来ません。

  ?) 信楽では制作方法が、時代毎に変化していますので、その違いで時代区分する事が

     可能との事です。又器形も有力な手掛かりです。

   a) 轆轤での水挽き制法(〜平安末期頃)

     須恵器の技術を持つ、百済系の帰化人達によって、轆轤技術が伝わったと言われています

     この延長上にある信楽焼は、上手な轆轤挽きで制作されているのが、特徴です。

     端正な造りで、重量も軽く口造りがシャープです。

   b) 紐造りの方法(鎌倉〜室町時代)

     轆轤挽きの技術は途絶え、より原始的な土紐を積み上げる方法が取られる様になります。

     (理由ははっきりしていません。)

    鎌倉末〜室町初期に最も信楽らしい傑作が作られいます。

   ・ 鎌倉期では、寸胴の形のものが多く、重量は重く大型の作品はほとんどありません。

   ・ 室町期になると、紐造りではあるが、轆轤挽きを併用し土を延ばす事で薄く軽くなります

     形も肩の張った物から、次第に胴の張った壷なども出現し、大型の作品も作られる様に

     なります。

   ・ 紐造りを基本にしていますので、左右対称の作品は少なく、「ゆがんでいる」のが普通

     です。轆轤との併用の為、器の内側には紐を積んだ跡が残っている場合が多いです。

   c) 桃山時代になると、茶碗、水指、掛花生、建水などの茶陶が作られる様に成ります。

     特に、室町時代に作られた、種壷でる蹲る(うずくまる)は、花生として、茶の湯に

     取り込まれます。 更に、信楽特有の豪放で、形のしっかりした大壷が作られます。

  ?) 信楽焼は一貫して、窖窯(あながま)で焼成しています。

     人為的な装飾は一部桧垣文を除いて、一切ありません。即ち、窯任せの焼き次第になり

     ます。 贋作は人為的に各種の装飾を行いますので、どうしても発覚し易いです。

   a) 信楽焼の景色と呼ばれる物に、下記のものがあります。

     自然釉、灰被り、火(緋)色、石はぜ、蜻蛉(とんぼ)の目、焦げ、ひっつき、火ぶくれ

     それに肩に窯印です。勿論、これら全てを持つものは、本物でも限られた数しかありま

     せん。火(緋)色、灰被り、焦げは、窯変によって偶然出来た物です。

     火(緋)色は、土の成分に影響され、明るい火色は鉄分の少ない土で作った時に現れます

  ?) 信楽焼では、鎌倉から室町時代に作られた、蹲る(うずくまる)の贋作が最も多いです。

     特に、小型の壷は真似易い為とおもわれます。

   ・ 口縁が二重になっている二重口が特徴ですが、贋作は作り方が「ぎこちない」との事です

   ・ 平安、鎌倉、室町時代の作品は、経年変化で「カセ」が出ている物が多く、艶が無い

     状態になります。贋作には、人工的な「カセ」を付けた物がありますが、内側に

     「カセ」が見られない物は、贋作と見なしても良いようです。

     地肌に光沢のある物も要注意です。焼き過ぎた場合に起こる現象です。

   ・ 贋作では、自然釉や灰被りを出す為、灰釉や流し掛けしたり、灰を人為的に吹きつけて

     いる場合が多いです。

  ?) 室町以降では、大壷の贋作もあります。肩に桧垣文が付けられています。

     雄大な姿を写し取る(模倣する)事は難しく、力強さを表した贋作はほとんど無いとの

     事です。

以下次回に続きます。
    
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