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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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続 釉(薬)について4(透明、マット、乳濁2)

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釉はガラス質と述べましたが、それには三様の状態を呈します。

即ち、透明釉とマット(艶消し)釉、乳濁(白濁)釉です。後者を失透明釉と呼ぶ事もあります。

1) 釉として使用できるのは、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)成分の割合によって決まります

 ① 光沢が有り、良く熔ける透明釉。

 ② 釉を調合する場合や、釉のレシピが表示されている場合、注意する事はその単位です。

   体積比、重量比、モル比のいずれかで表示されています。この単位を間違えると、当然混合

   割合が異なってしまいます。(以上までが前回の話です。)

 ③ アルミナ成分が多くなる(シリカ成分が少なくなる)と艶消し(マット釉)になります。

  ⅰ) 前回 Al2O3:SiO2 = 1:7~8(モル)ぐらいで良い透明釉になるとお話しまし

   たが、Al2O3:SiO2 = 1:6(モル)以下に成ると、次第にマット状になります。

   値が小さい程、マット状態は強くなります。この関係を表す図に(Al2O3ーSiO2状態図)が

   あります。ある程度釉に詳しい書物で見る事ができます。

   この状態図から、アルカリ成分の絶対値は0.3モル以上、シリカ成分が絶対値2モル以上で、

   直線又は緩い曲線で、透明釉、マット釉、乳濁釉と3区分されています。図からはみだした

   範囲では。良いに釉に成らないと思われます。

   尚、アルミナはシリカの1/10まで入れる事は可能です。  

  ⅱ) 艶消し(マット)に成るとは、釉中に微結晶が多数存在した状態です。

    結晶が大きな物は結晶釉と成りますが、微結晶が釉中に浮遊している場合、光が乱反射され

    釉中に入り込めず、表面より乱反射し艶消しとなります。

    尚、マットと乳濁釉は、いずれも結晶の生成によって起こる現象ですが、マット釉が窯の

    冷却途中で析出するのに対し、乳濁釉は最初からガラスに溶け込まない原料(失透剤)が

    結晶化した物です。これを分相といいます。詳細は後日述べます。

    艶消し釉は一般に表面が不透明な物ですが、その他透明な物も存在し、微結晶が見える物が

    あます。

  ⅲ) 釉の中のアルミナ成分の役割とは?

   a) 釉の熔融温度を上げる作用があります。

    温度が上がり過ぎる場合には、アルカリ成分を多くしたり、硼酸などを添加します。

   b) 釉の粘度を増し、釉の流れを抑える働きがあります。

   アルミナ成分を多量(0.4モル以上)に入れると、粘度が急激に増し、釉中の気泡を除き難く

   なります。

   c) 釉を安定化させる働きがあります。

   アルミナは素地に融着したり、釉の固さや風化、化学的侵食に対し抵抗性を増し、釉を安定

   化させます。更に、焼成温度が変化しても、釉の物理的性質を大きく損なわない事です。

  ⅳ) アルミナ成分は、各種長石からも得られますが、カオリンから得る事が多いです。

   カオリンの利点は、施釉した際素地に密着し易い事。粒子が細かく泥漿(でいしょう)し易

   い事です。

 ④ シリカ(珪酸)成分が多くなると乳濁釉になります。

   Al2O3:SiO2 = 1:10(モル)以上になると、次第に白く濁った釉になります。

  ⅰ) シリカは地球上で最も多く存在する物質です。

   主に岩石や粘土類の主成分と成っています。その他藁(わら)灰や籾殻灰等の禾本科の植物や

   木の灰等にも多く含まれています。これらには約80%のシリカが含まれています。

   地方によっては「ギヤマン」と呼ばれ珪石にも多くのシリカが含まれます。

   尚、単独では、石英、水晶、珪砂などとして産出しますが、酸化鉄やアルミナ等の不純物を

   含みます。

  ⅱ) シリカの役割は、主にガラス質を構成する成分です。

以下次回に続きます。

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