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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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続 粘土について7(素地の欠点と改良1)

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作品を作る際、素地が原因で色々トラブルを起こす事は稀ではありません。

但し、市販されている粘土類は、なるべくトラブルが起きない様に、各種の原料を混入させて調整さ

れているのが一般的です。それ故大きなトラブルに成らない事が多いのですが、市販品ではなく、

ご自分で粘土類を調合し、自分なりの素地を作る人も稀では有りません。その様な場合、どの様に

すれば素地が改良されるかを心得ていれば、トラブルに対処する事が可能になります。

1) 素地が捩(ねじれ)たり反る場合。

 成形完了後の乾燥時に起こり易いです。特に平たい皿などの板物が多いです。作品が小さい場合に

 は、少ないですが、大型(表面積が増える)の作品では、起こり易いトラブルです。

 勿論、土練の不十分、土締めが弱い、乾燥の不均衡など、作り方等が原因の場合もありますが、

 素地そのものに原因がある場合が意外と多いです。

 ① 主な要因は乾燥収縮が大き過ぎる事です。

  その粘土の乾燥収縮率は一定の値を取りますが、当然大きな作品ほど収縮の量は大きくなります。

  それ故、大きな作品はトラブルが多くなります。

 ② 可塑性の大き過ぎる土を使うと、収縮率も更に大きくなり、歪(ひずみ)の原因に成ります。

  可塑性の大きな土とは、肌理(粒子)の細かい土であり、水分を多く含む土です。

  可塑性は作り易さにも関係しますので、これを犠牲にするのももったいないですが、適度に調整

  し素地を改良し、作品の歪みを出来るだけ起こさない様にします。

 ③ 可塑性を少なくする方法は、非可塑性の原料(除粘剤と言う)を加える事です。

  除粘剤には以下の物があります。珪石、長石、シャモット(焼粉)などです。

  特にシャモットは成形の際、素地の水分を吸収し、粘土粒子と良く付着しますので、成形強度や

  乾燥強度を強くします。珪石よりも効果が大きいです。

  更に、焼成時に素地と比較的低温で結合し、衝撃に強い素地になります。粘着力が強過ぎる鋳込

  みの場合には、同一組成の焼成素地の粉砕物を混入させると良いでしょう。

2) 乾燥時に切れが発生する場合。

  これも乾燥収縮が大き過ぎる事に由来します。素地土の可塑性が大き過ぎる場合も小さ過ぎる

  場合にも起こる現象です。素地中の水分が不均一の場合には、乾燥速度が部分的に異なる為、

  歪が発しします。素地に粘着力が少ない場合、成形時に部分的に大きな力が掛り易く、切れ勝に

  なります。尚、底割れの原因の多くは、土締めが弱い、底の肉厚の不均衡、内底の水分を残して

  いる事が多いです。
  
  更に、土を「寝かす」と微生物の力により、粘土同士の結合力が増し、成形力が増し、亀裂の

  少ない作品にする事が出来ます。

3) 焼成収縮が大き過ぎ、焼成による変形を起こし易い素地。

  素地に熔剤となる原料が多過ぎる場合に起こり易いです。例えば石灰が多い素地は1040℃

  (SK-03)から急激に収縮し、長石質の素地は1120℃(sk-2)から収縮が急に起こります。

  磁器素地では、1250~1410℃(sk-8~sk-14)で急激に収縮します。この様な素地には石英、

  シャモット、カオリン等を粗(荒)目に粉砕して混入させます。こうする事で粒子をやや粗目にし

  熱収縮を抑えます。

4) 焼成時の変形。

 主な原因は、素地の焼き締まる温度(焼固)と軟化温度が接近している事です。この温度範囲が

 100℃以下の場合です。更に鉄酸化物を多く含む素地では、1050℃以上で還元焼成すると変形し

 易くなります。又、焼成時間を長くとり過ぎたり、温度上昇が極端に遅い場合にも、変形を起こし

 易いです。対策として、焼成温度を若干低くする事です。又素地を改良するには、微細な珪砂、

 カオリン、耐火粘土を10~20%程度混入させます。但し1100℃以下で焼成する素地では、改良は

 困難です。

以下次回に続きます。
 

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