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Channel: わ! かった陶芸 (明窓窯)
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質問6 無釉での重ね焼きについて。

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inag様より、以下の質問を、お受けましたので、この場に掲載し、私なりにお答えします。



最近ようやく小さい電気窯(内側Φ240×200)を購入しましたが、本焼きで形がどう変化(垂れる)

するのか、粘土の特性を勉強したいので、とりあえず多く焼きたいです。

そこでご質問ですが、無釉で素焼き無しの本焼きをする場合は、重ねて焼くことは可能でしょうか?

土は黒泥土・サイズは湯呑かコーヒーカップサイズです。(ネットで調べる限り、素焼き無し・無釉で

重ねて焼けることは備前等でも普通にやっているようですが・・・)

1200度を超えると、さすがに重ねた箇所が変形するようにも思えてしまいます。

 

◎ 明窓窯より

 1) 基本的には、無釉の作品を重ねて焼く事は可能ですが、幾つか心得ておく注意点があります。

    尚、無釉の場合、素焼きをしないのが普通ですし、結果的に素焼きの有無は、ほとんど問題に

    成りません。但し、狭い窯に重ねて入れる作業で破損させない為には、素焼きした方が安全

    です。

 2) 本焼きで重ね焼きする場合、特別の場合を除き、作品の縁で上の作品を支える事は避ける

   べきです。ご指摘の様に、高い温度になると、土は軟らかくなり、上からの力で縁が変形する

   恐れがあるからです。尚、特別な場合として、垂直に近い形の作品の縁上に、同口径の作品を

   逆さに載せたり、逆に、作品の底(又は高台)同士を重ねて焼く方法があります。但し、上に乗る

   作品は軽い方を載せる事です。

 3) 皿類であれば、高台を高めにして、縁が接触しない様に重ねるか、「ヨリ土(又は道具土)」

   で数個の「ツメ」を立て、高台を浮かせます。縁同士の距離は5〜10mm程度必要です。

   この方法であれば、施釉した状態でも本焼できます。(昔はこの方法で焼成しています。但し

   目跡(めあと)が残ります。)

 4) コーヒーカップの内側に、径が小さい湯呑茶碗を重ねる事は可能です。その際水平に置く

    様にしで、相手に寄り掛らな様にします。この場合は、直に重ねても問題有りません。

 5) コーヒーカップの様な取っ手のある作品同士は、重ね焼きはしない方が良いでしょう。

    取っ手があると、上の作品は斜めに重ねる事になり、結果的に縁で支える事になるからです。

 6) 燃料を使う窯では、対流による熱が移動して、隙間にも入り込み、一様に熱せられます。

    電気窯の熱は、放射(輻射)熱と言われ、熱源より直線的に伝わるのが特徴です。

    重ね焼した場合、陰の部分が発生してしまいますので、重ね具合によって、焼斑(むら)が

    起こる恐れがあります。即ち、場所場所によって温度差が生ずる可能性が大きいです。

以上がご質問にたいする答えですが、蛇足ながら、気になる点についてお話します。

質問者は電気窯により1200℃以上で、焼き締めの食器を作ろうとしています。

更に備前焼についても述べていますので、無釉の問題点を述べておきます。

 1) 土を黒泥土との事で、この土についての詳しい事が不明ですが、1200℃以上で確実に焼き

    締まる土である事です。1200℃の温度は陶器の焼成温度としては、決して高い温度では

    なく、むしろ低い方に属します。それ故、十分焼き締まらない場合には、以下の問題が

    発生します。

  ? 水漏れを起こす。

    湯呑やカップ類など、水分を含むものを入れると、水漏れを起こします。

    「ボタボタ」と漏らなくても、底面が濡れる事があります。(テーブルが円形に濡れる)

    又、焼が甘いと、機械的な強度も弱くなります。(即ち、破損し易い)

  ? 器が汚れる。

    吸水性を完全に抑えないと、器内の汁がじわじわ入り込み、食品の滓(カス)が、こびり付く

    様になります。更には、乾燥不十分により、黴(カビ)が発生する恐れがあります。

    洗剤を使う場合にも、十分水洗いをしないと、洗剤が残るかも知れません。

    但し、上記?、?の問題も、食器用の撥水剤を利用すれば、ある程度解決できます。

  ? 口当、手触りが悪い。

    唇が縁に触れますが、ガラス質でない為、「ザラツイタ」感じがします。

  ? 備前焼の土は、収縮率が20%もあると言われています。更に、1250℃程度の高温で、

    数十〜数百時間焼成しますので、しっかり焼き締める事が出来、水漏れを起こしません。

    又、重ね焼の場合、クッション材として、藁(わら)を使う場合も有りますが、電気窯では電熱線を

    痛めますので、使う事が出来ません。

 尚、不明な点や、新たな疑問が発生した場合には、再度お問い合わせ下さい。

以上、参考にして頂ければ幸いです。      


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